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当ページでは、人材開発支援助成金のうち「人材育成支援コース」の対象、要件、注意点を解説します
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
人材育成支援コースとは
人材育成支援コースは、職務に関連する知識・技能を習得させるため、あらかじめ策定した計画に沿って訓練を実施した場合、訓練経費・訓練期間中の賃金の一部等を国が助成してくれる制度です。
「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」の3つに分類され、それぞれ対象や要件が異なります。
1.人材育成訓練
人材育成訓練は、職務に関連する専門的な知識および技能習得を目的とする職業訓練等を、事業主もしくは事業主団体が実施する場合の助成メニューです。
支給対象者
(1)被保険者が対象の場合
(2)有期契約労働者が対象の場合
訓練対象者
訓練対象者は、申請事業主または申請事業主団体等を構成する事業主の被保険者です。
基本要件
助成を受けるには、下記の要件を満たす必要があります。
- OFF-JTにより実施される訓練であること(事業内または事業外)
- 実訓練時間数が10時間以上であること
2.認定実習併用職業訓練
認定実習併用職業訓練は、OJTとOFF-JTを組み合わせた実習併用職業訓練を実施し、ジョブ・カードによる職業能力の評価を実施した場合の助成メニューです。
支給対象者
対象労働者
次の1から3までのいずれかに該当する15歳以上45歳未満の労働者で、申請事業主に雇用される被保険者です。
- 新たに雇入れられた者
- 大臣認定の申請前に雇用されていた短時間労働者で、引き続き、同一の事業主に通常の労働者(いわゆる正規雇用者)に転換した者
- 既に雇用する被保険者
厚生労働大臣の認定要件
実習併用職業訓練は、事前に、厚生労働大臣の認定を受けたものに限られます。
認定を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
- OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
- 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
- 総訓練時間数が1年あたりの時間数に換算して850時間以上であること
- 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
- 訓練終了後、ジョブ・カード様式3-3-1-1「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること
3.有期実習型訓練
有期実習型訓練とは、正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目指し、OFF-JTと適格な指導者の下で行うOJTとを組み合わせて実施する助成メニューです。
支給対象者
訓練対象者
訓練対象者は、次のいずれにも該当する有期契約労働者等で、申請事業主に雇用されている人です。
- ジョブ・カード作成アドバイザー等に、下記の「職業能力形成機会に恵まれなかった人」とされ、事業主が実施する有期実習型訓練への参加が必要と認められ、ジョブ・カードを作成した者
(a)原則、キャリアコンサルティングの実施日前の過去5年以内に、(通算)約3年以上の訓練実施分野における正規雇用経験がない者。
※分野を問わず、過去10年以内に同一企業で継続約6年以上の正社員経験がある者は除く
(b)aにおいて、訓練対象外とされた者のうち、過去5年以内に半年以上休業していた者、従事していた労働が単純作業で、体系立てられた座学の職業訓練の受講経験が全くない者、正規雇用でも訓練実施分野において、過去5年以内に短期間(1年未満)で離転職を繰り返したことにより、正規雇用の期間が通算3年以上となる者など、過去の職業経験の実態から有期実習型訓練への参加が必要と認められる者 - 正規雇用労働者等(正社員)雇用を約束され、雇い入れられた者
- 有期実習型訓練を実施する事業主の事業所において、訓練の終了日または支給申請日に雇用保険被保険者であること
- 事業主が実施する有期実習型訓練の趣旨、内容を理解している者であること
- 他の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練、実習併用職業訓練または有期実習型訓練を修了後6か月以内の者でないこと
- 同一の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練
基本要件
有期実習型訓練の基本要件は、次の通りです。
- OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
- 訓練実施期間が2か月以上であること
- 総訓練時間が6か月当たりの時間数に換算して425時間以上であること
- 総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
- 訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1 「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること
ジョブ・カードとは
ジョブ・カードは、従業員自身が自分のキャリアを見つめ直し、成長を手助けするツールをいいます。
(1)キャリア・プランシート、(2)職務経歴シート、(3)職業能力証明シートの3つで構成され、雇用型訓練の大臣認定、人材開発支援助成金で提出するのは、(3)職業能力証明シートのうち様式3-3-1-1「職業能力(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」です。
対象となる事業主団体等
下記のいずれかに該当する事業主団体等が対象訓練を実施した場合、経費助成金の対象となります。
1.事業主団体
1~16のいずれかと、17に該当する事業主団体が対象です。
- 事業協同組合
- 事業協同小組合
- 信用協同組合
- 協同組合連合会
- 企業組合
- 協業組合
- 商工組合
- 商工組合連合会
- 都道府県中小企業団体中央会
- 全国中小企業団体中央会
- 商店街振興組合
- 商店街振興組合連合会
- 商工会議所
- 商工会
- 一般社団法人・一般財団法人
- ⑯上記①~⑮以外の事業主団体であって、次のaおよびbに該当する団体
a 団体の目的、組織、運営、事業内容を明らかにする規約、規則等を有する団体であること
b 代表者が置かれているほか、事務局の組織が整備されていること - ⑰雇用保険適用事業所であること
2.共同事業主
1~6のすべてに該当する複数の事業主が対象です。
- 共同するすべての事業主の合意に基づく協定書等を締結していること
- 上記①の協定書等は、代表事業主名、共同事業主名、職業訓練等に要するすべての経費の負担に関する事項(助成金の支給申請を行い、労働局長からの支給を受けようとする代表事業主名を記載していること)、有効期間、協定年月日を掲げたものであること
- 職業能力開発推進者を選任している事業主であること
- 労働協約、就業規則または事業内職業能力開発計画において、雇用する被保険者に対して定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保に係る措置を定めている事業主であること
- (団体型訓練)訓練実施計画書(様式第1-2号)の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、当該計画を実施した事業所において、雇用する被保険者(雇用保険法第38条第1項に規定する短期雇用特例被保険者及び同法第43条第1項に規定する日雇労働被保険者を除く。)を解雇等事業主都合により離職させた事業主以外の事業主であること。なお、解雇等とは、労働者の責めに帰すべき理由による解雇、天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能となったことによる解雇以外の解雇に勧奨退職等を加えたものであって、被保険者の資格喪失確認の際に喪失原因が「3」と判断されるものであること。
- (団体型訓練)訓練実施計画書(様式第1-2号)の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、雇用保険法第23条第1項に規定する特定受給資格者(以下「特定受給資格者」といいます。)となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者として同法第13条に規定する受給資格の決定が行われたものの数を、当該事業所における支給申請書提出日における被保険者数で除した割合が6%を超えている(特定受給資格者として当該受給資格の決定が行われたものの数が3人以下である場合を除く。)事業主以外の者であること。
助成対象となる経費
助成対象となる経費は下記の通りです。
- 部外講師の謝金、旅費
- 施設・設備の借上げ費
- カリキュラム開発作成を外部委託した場合にかかった経費
- 労働者に受講させた事業主が社会保険労務士等に支払う手数料
- 外部の教育訓練施設等に支払う受講料、教科書代等
対象となる労働者
人材開発支援助成金の支給を受けるには、下記のすべての要件を満たす必要があります。
被保険者を対象とする訓練の場合
- 助成金を受けようとする事業所又は事業主団体等が実施する訓練等を受講させる事業主の事業所において、被保険者であること
- 訓練実施期間中において、被保険者であること
- 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」(様式第3号)に記載のある被保険者であること
- 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること(認定実習併用職業訓練については、OFF-JTは実訓練時間数の8割以上、OJTは総訓練時間数のうちOJTの時間数の8割以上であることが必要)
有期契約労働者等を対象とする訓練の場合
- 助成金を受けようとする事業所又は事業主団体等が実施する訓練等を有期契約労働者等に受講させる事業主の事業所において、従来から雇用されている有期契約労働者等または新たに雇い入れられた有期契約労働者等であること
- 訓練期間中において有期契約労働者等であり、訓練の終了日または支給申請日において、被保険者であること
- 正規雇用労働者等として雇用することを約して雇い入れられた労働者(人材育成訓練の修了後に人材育成訓練の評価結果に基づき、正規雇用労働者等への転換を検討することを予定して雇い入れられた労働者は除く)ではないこと
- 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」(様式第3号)に記載のある有期契約労働者等であること
- 事業主または事業主団体等が実施する人材育成訓練の趣旨及び内容を理解している者であること(育児休業中訓練である場合を除く)
- 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること(認定実習併用職業訓練及び有期実習型訓練については、OFF-JTは実訓練時間数の8割以上、OJTは総訓練時間数のうちOJTの時間数の8割以上であることが必要)
育児休業者に対する訓練の場合、休業期間中に訓練を開始する必要がある点に注意しましょう。
対象となる訓練等
OFF-JT
以下のいずれかにより実施されるOFF-JTが対象となります。
Ⅱ-6に該当しないことや、計画通りに実施されていることなどが必要です。
事業内訓練
- i.自社で企画・主催・運営する訓練計画により、次のいずれかの要件を満たす社外より
招へいする部外講師により行われる訓練等
・ 以下「b.事業外訓練」のⅰ、ⅲまたはⅳ(学校教育法第124条の専修学校、同法第134条の
各種学校に限る。)の施設に所属する指導員等
・ 当該職業訓練の内容に直接関係する職種に係る職業訓練指導員免許を有する者
・ 当該職業訓練の内容に直接関係する職種に係る1級の技能検定に合格した者
・ 当該職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指導員または
講師(当該分野の職務にかかる指導員・講師経験が3年以上の者)
・ 当該職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指導員または
講師(当該分野の職務にかかる実務経験(講師経験は含まない)が10年以上の者)
ⅱ.自社で企画・主催・運営する訓練計画により、次のいずれかの要件を満たす部内講師に
より行われる訓練等
・ 当該職業訓練の内容に直接関係する職業に係る職業訓練指導員免許を有する者
・ 当該職業訓練の内容に直接関係する職業に係る1級の技能検定に合格した者
・ 当該職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指導員または
講師(当該分野の職務にかかる実務経験(講師経験は含まない)が10年以上の者)
ⅲ.事業主が自ら運営する認定職業訓練
事業外訓練
社外の教育訓練機関に受講料を支払い受講させる訓練等(次に掲げる施設に委託して行うもの)
- i. 公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校、職業能力開発促進法第15条の7第1項
ただし書に規定する職業訓練を行う施設、認定職業訓練を行う施設
ⅱ.助成金の支給を受けようとする事業主以外の事業主・事業主団体の設置する施設
(eラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等を行う施設の場合には、当該施設が提供する訓練講座が
広く国民の職業に必要な意識及び技能の習得を図ることを目的としたものであることが必要であり、特定の事業主に
対して提供することを目的として設立される施設は除く。)
ⅲ.学校教育法による大学等
ⅳ.各種学校等(学校教育法第124条の専修学校、同法第134条の各種学校、これと同程度の水準の
教育訓練を行うことのできるもの)
ⅴ.その他職業に関する知識、技能、技術を習得させ、向上させることを目的とする教育訓練を行う
団体の設置する施設
OJT
認定実習併用職業訓練
大臣認定を受けた認定実習併用職業訓練の計画に沿って、適格な指導者(※)のもとで、計画的に行われるOJTが対象となります。
有期契約労働者等
正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目指す適格な指導者(※)のもとで、計画的に行われるOJTが対象となります。
「OJT実施状況報告書(様式第9-1号)」及び訓練日毎に作成する「OJTに係る訓練日誌(様式第9-2号)」の作成が必要です。また、受講者・指導者ともに、OJT実施日の出退勤時刻を確認できる書類の提出が必要です。
対象となる経費等
対象となる賃金
訓練期間中の所定労働時間内の賃金について、賃金助成の対象となります。
助成額・助成率
コースごとの助成額・助成率は次の表のとおりです。
経費助成限度額(1人あたり)
1人1職業訓練実施計画届あたりのOFF-JTにかかる経費助成の限度額は、実訓練時間数に応じて下表のとおりです。
賃金助成限度額(1人1訓練あたり)
1,200時間が限度時間となります。
ただし、専門実践教育訓練については1,600時間が限度時間となります。
支給に関する制限
●訓練等受講回数の制限
助成対象となる訓練等の受講回数は、1労働者につき1年度※1で、3回まで※です。
●1事業所・1事業主団体等の支給額の制限
1事業所または1事業主団体等が1年度※1に受給できる助成額は、1,000万円※2が限度額となり
ます
手続の流れ
1.訓練計画の提出
「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」などを作成し、訓練開始日の1か月前までに「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」と必要な書類を、各都道府県労働局へ提出します。
申請手続は、雇用保険における適用事業所を単位として行います。
▽都道府県労働局一覧
2.訓練の実施等
人材育成訓練の場合、部内・部外講師によって行われる事業内訓練等を実施、または、教育訓練施設等で実施される事業場外訓練等を受講します。
認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練の場合、企業内におけるOJT、教育訓練施設等で行われるOFF-JTを受講し、終了後、ジョブ・カード様式3-3-1-1により職業能力の評価を実施します。
3.支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から2か月以内に「支給申請書(様式第4号)」と必要書類を管轄等同局に提出します。
4.助成金の支給決定または不支給決定
支給審査が行われ、支給または不支給決定が下されます。
訓練計画届出時に必要な書類
訓練計画届出時には、1の共通書類と、各訓練メニューに対応する必要書類を提出する必要があります。
申請期間は、訓練開始日から1か月前まで。申請先は、事業所または事業主団体等の事務所を管轄する労働局です。
1.共通
2.各訓練の実施方法がeラーニング等である場合
3.対象労働者が育児休業中の場合
育児休業中に訓練の受講を開始することがわかる書類(育児休業申出書等)
4.各訓練メニューで必要な書類
訓練計画の変更時に必要な書類
訓練計画を変更する場合、「職業訓練実施計画変更届(様式第2-1号)」と、変更内容がわかる関係書類を提出する必要があります。
事前に届出が必要となる事由は、下記の通りです。
- 実訓練時間数、訓練の実施期間、受講者数(予定者含む)
- OFF-JTに係る訓練カリキュラム、実施方法、実施日時、実施場所、訓練講師
- OJTに係る記載項目の内容
- 人材育成訓練において、有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換等する場合、および、有期実習型訓練の場合、正規雇用労働者等への転換等の基準
提出期限は、当初計画していた訓練実施予定日、変更後の訓練実施日のいずれか早い方の前日までです。
変更届を提出せず、変更後の訓練を実施した場合、その部分については支給対象外となりますので、注意しましょう。
支給申請時に必要な書類
1.各訓練メニューに共通する書類
2.有期契約労働者等を正規雇用労働者等へ転換等した場合に必要な書類
有期契約労働者等を正規雇用労働者等または無期契約労働者へ転換したことがわかる書類を提出する必要があります。
代表的なのは、転換後の雇用契約書です。
3.各訓練メニューに必要な書類
4.一般教育訓練等の指定口座の訓練を実施した場合に必要な書類
専門実践教育訓練、特定一般教育訓練または一般教育訓練を実施した場合、受講証明書、受講修了証明書(様式第7号)、教育訓練施設等が発行する受講証明書または修了証明書のいずれかを提出します。
5.対象労働者が育児休業中の場合
育児休業中訓練の受講に関する申立書(様式第13号)を提出します。
6.各訓練の実施方法がeラーニング等である場合
7.賃金要件・資格等手当要件を満たした場合に必要な書類
申請様式のダウンロード
人材育成支援コースに関する申請に必要な様式は、下記リンクよりダウンロードできます。
人材育成支援コースの対象、要件、注意点 まとめ
当ページでは、人材開発支援助成金のうち「人材育成支援コース」の対象、要件、注意点を解説しました。