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相続開始後、相続人の1人や他人が勝手に使い込んでいるのでは?と疑いを抱いた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
当ページでは、遺産の使い込みが疑わしい場合の調査方法から、実際に使い込まれた場合の対処法、予防策を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
遺産の使い込み事例
使い込みの対象となる遺産には、次のものがあります。
1.預貯金
被相続人(死亡人)名義の預貯金を、最も近い相続人が使い込む事例です。
キャッシュカードと暗証番号を知っていて、死亡後の凍結手続を経ず、勝手に出勤するまたは自分名義の口座に送金してしまうことがあります。
2.不動産
被相続人名義の不動産について、本人の実印等を持ち出し、勝手に売却または登記手続をしてしまうことがあります。
3.賃料
被相続人が収益物件を持っている場合、この収益(賃料)を消費する事例です。
4.株式
被相続人名義の株式を売却し、売却益を自分名義の口座に送金または消費する事例です。
5.介護者による使い込み
被相続人が介護サービスを利用していた場合、介護者に一定額を預けている場合があります。
この預かり金を介護者が私的に消費する事例です。
遺産の使い込みの調査法
遺産の使い込みが疑われる場合、いきなり請求するのは賢明とは言えません。
誰が見ても使い込まれた事実が明らかなレベルの証拠を集めておきましょう。
1.自力で調査
相続関係人自ら調査する場合、金融機関または証券会社等に取引明細書の発行を依頼しましょう。
このとき、可能な限り遡った年月日を指定することで、疑わしい取引を洗い出すことができ、後に訴訟となった場合、記録の開示請求等で役立ちます。
2.専門家に相談・依頼
遺産の使い込み調査を依頼する場合、弁護士が適切です。
弁護士の場合、職権により「弁護士会紹介制度」という調査制度を利用する事ができ、一般の人が辿るプロセスより簡素かつ迅速な調査が可能です。
この踏査結果についても、より具体詳細まで分析することができ、適切な対処が期待できます。
3.裁判所を利用
遺産の使い込みにつき、疑わしい人を特定できた場合、裁判所に対し、訴訟を申立てる方法があります。
訴訟の進行に当たり、裁判所が必要と認めた範囲で各機関に確認が行われるため、自分や弁護士では知り得なかった情報が明らかになることもあります。
遺産の使い込みが明らかになった場合の対処法
遺産の使い込みが明らかになった場合、次の対処法を検討しましょう。
1.話し合い
使い込みが明らかになった場合、はじめに相手に話し合いを持ちかけましょう。
このとき、相手が言い逃れができないよう資料を提示し、いつまでに、いくら(何を)返還して欲しいのかを明確にし、合意に至れば公正証書に落とし込むのがオススメです。
相続人同士だと感情的になることが多く、話し合いが調わないこともあります。
弁護士等の第三者を入れる、または、交渉含め弁護士に依頼することで早期解決が期待できます。
2.遺産分割調停
遺産分割前に使い込まれた財産がある場合、法定相続人全員が同意すれば、処分された財産も存在するものとして遺産分割協議を行うことができます。
このとき、使い込んだのが相続人の1人だとすれば、その人の同意はいりません。
使い込んだ金額が当該相続人の相続分よりも低ければ、その分を考慮した分割を行えば済みますね。
3.訴訟
使い込んだ本人との話し合いが調わなかった場合、訴訟を起こす方法があります。
勝訴すれば、使い込んだ相続財産の返還または損害額の賠償命令が出ます。
遺産の使い込み訴訟
遺産を使い込まれば場合、「不当利得返還請求」または「損害賠償請求」によって返還または賠償を求めることになります。
両者の大きな違いは「時効」です。
1.不当利得返還請求
不当利得返還請求の場合、権利を行使できると知った時から5年または権利の発生時から10年間の時効が適用されます。
要するに、相続開始から5年、使い込まれたときから10年以内に請求する必要があります。
2.損害賠償請求
不法行為に基づく損害賠償請求を行う場合、損害及び加害者を知ってから3年で時効にかかります。
使い込みがわかったときから3年以内に請求する必要があります。
3.遺留分侵害額請求
返還または賠償請求意外の策として、遺留分侵害額請求があります。
遺留分損害額請求とは、相続人が最低限相続できる相続分を他者に侵害された場合、侵害された金額の賠償を求めるものです。
遺留分侵害額請求の場合、もらうはずだった利益を侵害されたと考える不当利得返還請求とは少し異なります。
自分の遺留分をしっかり確認しましょう。
遺産の使い込みを防ぐ方法
遺産の使い込み防止には、次の方法があります。
1.後見制度の活用
家族や親族が元気なうちに、任意後見契約を結びましょう。
任意後見契約では、病気や障害で判断能力が低下した場合の財産管理や意思決定を行うことを約束します。
2.家族信託の活用
後見制度と並ぶのが、家族信託です。
家族信託の場合、財産の所有者が自分の財産を信頼できる相手に託し、管理だけでなく運用してもらうことも可能です。
病気や障害を負うことがなくとも運用できるだけでなく、死後も有効な点が後見制度とは異なります。
遺産の使い込み まとめ
当ページでは、遺産の使い込みが解った場合の対処法と、使い込みを予防するための対策を解説しました。