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相続分譲渡の活用場面、放棄との違い、注意点を解説

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当ページでは、相続分譲渡をオススメする場合と、相続放棄との違い、活用時の注意点を解説します。

相続分譲渡とは

相続分譲渡とは、自分の相続分を共同相続人または第三者に譲渡することをいいます(民法第905条)

相続分譲渡を行われた場合、相手が共同相続人の場合には相続分の増加、第三者の場合は、相続人としての地位ごと承継するため、他の相続人と共に遺産分割協議等に参加する必要があります。
多方、譲渡を行った人は相続分を失うことになり、各手続に参加する必要はありません。

相続分譲渡と相続放棄の違い

相続放棄とは、家庭裁判所に申立てることにより、被相続人の全ての財産を相続しないことを認めてもらう手続を指します(民法第939条)

相続放棄の場合、はじめから相続人でなかったものとみなされ、完全に相続関係から離脱します。

いっぽう、相続分譲渡の場合は完全に離脱することはできず、下記の点で異なります。

相続分譲渡相続放棄
裁判所での手続不要必要
期限相続開始から遺産分割協議までの間相続開始を知った時から3か月以内
相続債務の負担負担する
他の相続人に譲ることはできるが、債権者に対抗できない
負担しない
特定の財産のみを対象にできるか可能不可能
出典:民法第938条、第915条

相続分譲渡のメリット

相続分の譲渡には、下記のメリットがあります。

  1. 相続手続・相続トラブルを回避できる
  2. 特定の人に譲渡できる
  3. 譲渡による対価を得られる

1.相続手続・相続トラブルを回避できる

相続開始後、各相続人は共同相続人と協力し、さまざまな手続を行う必要があります。

相続人の中に関わりたくない人がいる場合や、非協力的な相続人がいる場合には、相続トラブルに発展する可能性もあるため、相続分を譲渡することによりこれらのリスクを限りなく減らすことができます。

2.特定の人に譲渡できる

相続分の譲渡について、譲受人を選択することができます。

3.譲渡による対価を得られる

相続分の譲渡では、当事者間で有償無償を選ぶことができます。

一方、遺産分割協議を行う場合、協議が成立するまでの期間は遺産が凍結されてしまい、勝手に処分することができません。

相続分を譲渡する際の注意点

相続分を譲渡する際は、下記に注意しましょう。

  1. 債務を負担する必要がある
  2. 贈与として扱われる場合がある
  3. 他の相続人から一定の請求を受ける可能性がある
  4. 特別代理人の選任が必要な場合がある

1.債務を負担する必要がある

自分の相続分を全て譲渡した場合でも、債権者から請求された場合には逃れることができません。

相続放棄の場合、はじめから相続人でなかったとみなされ、相続人としての地位を失いますが、相続分譲渡の場合は、相続人の地位を失うことはありません。

ただし、譲受人には対抗できます。

2.贈与として扱われる場合がある

相続分を譲渡する場合、対価を得ずに譲渡すると贈与税がかかる可能性があります。

例えば、親から子に相続分を譲渡した場合、その場で問題になることはなくても、相続分を譲渡した親が死亡した際に「生前贈与」とみなされ、譲渡分に相当する金額を減額される等のトラブルに発展する可能性があります。

譲受人が相続人の場合、有償譲渡なら譲渡人の対価が相続税の課税対象になります。
第三者への譲渡の場合、無償譲渡だと譲受人は贈与税の対象となる一方で、有償譲渡の場合、譲渡人に相続税・所得税がかかる可能性がある点に注意しましょう。

3.他の相続人から請求を受ける可能性がある

法定相続人ではない第三者に相続分を譲渡した場合、共同相続人は第三者に対し、相続分の取戻請求をすることができます(民法第905条第1項)

他の相続人から取戻請求を受けた譲受人は、これに応じなければならず、結果的に譲渡することができない可能性があります。

相続分の取戻権には、譲渡を知った時から1か月という期限が設けられているため、この期限内に行使(請求)がなければ安心です(民法第905条第2項)

4.特別代理人の選任が必要な場合がある

相続人同士で相続分譲渡を行った場合、譲受人が未成年者や成年被後見人の場合には「利益相反」が問題となり、特別代理人を選任する必要があります。

この場合、譲渡人は相続放棄を選択するか、譲受人1人ずつに特別代理人をつけることになります。

相続分譲渡の活用がオススメな場合

下記に該当する場合、相続分譲渡を検討しましょう。

  1. 遺産を相続する意思がない場合
  2. 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
  3. 相続権を譲りたい相手がいる場合
  4. 相続権を現金化したい場合
  5. 遺産が現物資産のみで、現金がほしい場合
  6. 相続人を少人数に絞りたい場合
  7. 相続放棄の期限を過ぎた場合

相続分譲渡が不向きな場合

下記に該当する場合、相続分を譲渡するには特に注意が必要です。

  1. 遺産に債務が含まれる場合
  2. 贈与の対象となるおそれがある場合

相続放棄がオススメな場合

相続分の譲渡と相続放棄で迷った場合、下記に該当するなら相続放棄がオススメです。

  1. 遺産に高額な債務がある場合
  2. 譲渡したい相手がいない場合

1.遺産に高額な債務がある場合

遺産に高額債務が含まれる場合、相続放棄を選ぶことで、一切の返済義務を免れます。

ただし、被相続人の保証人や連帯保証人になっている場合には、相続放棄をしても返済義務は免れない点に注意が必要です。

2.譲渡したい相手が居ない場合

自分の相続分を譲渡したい相手がいない場合、他の相続人との関係を悪化させないためにも相続放棄が有効です。

特定の相続人への譲渡は、その後の相続関係を悪化させるリスクが高いだけでなく、無償で譲渡すれば課税対象となる可能性もあります。

相続放棄の場合、法律に沿って放棄後に残る相続人の中で順位が変動するため、トラブルに発展する可能性が低くなります。

相続分の譲渡に必要な手続き

相続分を譲渡する場合、下記の手続を行いましょう。

  1. 相続分譲渡証明書を作成
  2. 各相続人に「相続分譲渡通知書」を送付
  3. 遺産分割協議

1.相続分譲渡証明書を作成

相続分を譲渡する場合、法律に決まった手続はありませんが、後のトラブルを避けるためにも「相続分譲渡証明書」を作成しましょう。

1-1.証明書に記載する内容

相続分譲渡証明書には、下記を記載しましょう。

  1. タイトル(相続分譲渡証明書)
  2. 当事者の住所、氏名、生年月日
  3. 被相続人(死亡人)氏名、生年月日、死亡日
  4. 有償・無償の区別、有償の場合には金額等
  5. 譲渡年月日
  6. 両当事者の署名、押印(実印)

1-2.相続分譲渡証明書が必要な場合

下記の場合、相続分譲渡証明書の提出を求められます。

  1. 遺産を金融機関から承継する場合
  2. 相続財産である不動産の名義変更手続を行う場合
  3. 遺産分割調停または訴訟を申立てている場合

2.各相続人に「相続分譲渡通知書」を送付

相続分譲渡証明書の作成後、証明書とは別に「相続分譲渡通知書」を作成しましょう。

相続分譲渡通知書とは、相続分譲渡が行われたことを各相続人に知らせるための文書を指します。

2-1.相続分譲渡通知書の記載事項

相続分譲渡証明書は法定される文書ではなく、雛形等もないため、下記を記載しましょう。

  1. タイトル「相続分譲渡通知書」
  2. 通知相手の氏名、住所
  3. 相続分を譲渡した旨
  4. 譲渡年月日
  5. 譲渡人の住所、氏名
  6. 譲受人の住所、氏名

不要な混乱を防ぐため、相続分譲渡証明書の写しを添付すると安心です。

3.遺産分割協議

相続分譲渡後、相続分を譲受けた人が譲渡人の代わりに遺産分割協議に参加します。

相続分の一部のみを譲渡した場合、譲渡人と共に遺産分割協議に参加することになりますが、全部を譲渡した場合には不要です。

相続分譲渡の活用場面、放棄との違い、注意点まとめ

当ページでは、相続分譲渡の活用場面と、相続放棄との違い、注意点を解説しました。

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カテゴリー: 相続・相続税


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榊原沙奈
(さかきばら さな)
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