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当ページでは、遺産分割協議書の必要性と提出先、提出が不要な場合を解説します。
Contents
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、被相続人の遺産について、誰が、何を、どのくらい相続するのかをまとめた文書を指します。
特定の機関から提供されるものではなく、相続人同士の間で作成する必要がある点に注意しましょう。
遺産分割協議書の作成目的
遺産分割協議書は、下記の目的で作成します。
- 相続人同士の紛争防止
- 各機関における手続に使用
1. 相続人同士の紛争防止
被相続人が遺言書を作成している場合、この内容に沿った相続手続がなされます。
いっぽう、被相続人が遺言書を作成していない場合や、遺言書の内容と異なる分割を行う場合、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合には、相続人全員で話し合わなければなりません(民法 第907条第1項)
この内容を遺産分割協議書にすることで、合意内容を明確化し、当事者間の認識のズレを修正することができます。
後になって合意内容と異なる主張をされた場合には、客観的な証拠として示すこともできるので、迅速かつ公平な対応が可能となります。
2. 各機関における手続に使用
被相続人の遺産により、各機関で相続手続を行う必要があります。
この際、相続人全員を確認の上、誰が特定の遺産を承継(相続)するのかを示すために、遺産分割協議書を提出するのが一般的です。
2-1. 遺産分割協議書の提出先
作成した遺産分割協議書は、主に、下記の機関に提出します。
機関名 | 遺産の内容 |
---|---|
金融機関 | 預金(普通、定期) 貸金庫など |
法務局 | 不動産 土地に関する権利など |
税務署 | 各種税金 |
証券会社 | 各種有価証券 投資信託など |
陸運局(運輸支局) | 自動車など |
【機関別】提出書類
手続先の機関により、遺産分割協議書に下記の書類を添付して提出する必要があります。
1. 金融機関
金融機関では、被相続人の預貯金口座の解約・名義変更等を行うため、下記の書類を提出します。
- 相続手続依頼書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑登録証明書
- 特定の相続人が相続する場合、その人の実印
- 預金通帳・キャッシュカード、証書等
2.法務局
遺産の中に不動産が含まれる場合、土地・建物の所在地を管轄する法務局にて名義変更を行う必要があります。
この際、次の書類を提出します。
- 登記申請書
- 登記事項証明書(全部事項証明書)
- 遺産分割協議書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本
- 被相続人の住民票(除票・附票)
- 法定相続人全員の戸籍謄本と印鑑登録証明書
- 特定の相続人が相続する場合、相続人の住民票
- 収入印紙(不動産価格の0.4%)
令和6年(2024年)3月31日までの間、相続登記に期限はありませんでした。
しかし、同年4月1日より、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければならない運用がなされています。
正当な理由なく、この規定に違反した場合には、10万円以下の過料に署される可能性があります。
3.税務署
相続税が発生する場合、税務署にて申告・納付の手続をしなければなりません。
申告先は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署で、下記の書類を提出しておこないます。
- 相続税申告書
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本
- 法定相続人全員の戸籍謄本と住民票
- 法定相続人全員の印鑑登録証明書
- 相続財産が確認できる関係資料
相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月なので、はやめに相続財産と法定相続人を特定し、相続税の課税対象かどうかを調べましょう。
4.証券会社
遺産に株式等の有価証券が含まれる場合、取引先である証券会社において、これらを解約または承継する手続を行います。
この際、下記の書類を求められるのが一般的です。
- 相続手続依頼書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑登録証明書
- 相続人の証券口座開設依頼書(※同行に口座を持っている場合には不要)
5.陸運局(運輸支局)
遺産に自動車が含まれる場合、陸運局または運輸支局に下記の書類を提出します。
- 自動車検査証(車検証)
- 車庫証明書
- 遺産分割協議書(※)
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本
- 相続する人の実印と印鑑登録証明書
※自動車の査定価格が100万円以下の場合、遺産分割協議書よりも簡易な「遺産分割協議成立申立書」で手続ができます。
遺産分割協議書が不要な場合
遺産分割協議書は、必ず作成しなければならないものではありません。次のような場合、作成は不要です。
- 被相続人の遺言書がある
- 法定相続人が1人
- 相続放棄・限定承認をした
- 法律で定められた割合で相続する
1. 被相続人の遺言書がある場合
被相続人が遺言書を作成していた場合、遺産分割協議を行う必要はなく、当該遺言書に沿った手続をとることになります。
ただし、遺言書が無効となる場合や、記載されていない遺産が見つかった場合、遺言書とは異なる分割を行う場合には遺産分割協議を行う必要があります。
2. 相続人が1人の場合
相続人が1人の場合、遺産を分割する必要はありません。
このため、遺産分割協議も不要となります。
この場合でも、各機関にて相続手続を行う際は、被相続人と相続人の戸籍書類を提出する必要がある点には注意しましょう。
3. 相続放棄・限定承認をした場合
相続人が複数いる場合、一部の相続人が相続放棄を行い、結果的に1人だけが相続する場合には遺産分割協議は不要です。
また、相続人全員が共同して限定承認を行う場合にも、遺産分割協議書は不要です。
この場合、相続財産の債権者等から督促を受けることもあるため、相続放棄・限定承認の手続を行ったことを証する書面を大切に保管しましょう。
4. 法律で定められた割合で相続する場合
遺産について、法律で定められた割合で相続する場合、遺産分割協議書は不要です。
この場合も、各機関にて戸籍書類の提出を省略することはできない点に注意が必要です。
遺産全てを法定相続割合で分割する必要があるため、不動産や有価証券が含まれる場合には特に注意しましょう。
遺産分割協議書に関するよくある質問(FAQ)
1. 遺産分割協議書は、副本を提出しますか。
各機関に提出する遺産分割協議書は、原則、原本を求められます。
このため、正本を一部しか作成していなければ、1箇所に提出する間に他の機関での手続が取れなくなりますので、あらかじめ必要な部数を確認し、複数作成することをオススメします。
また、副本(控え)は各相続人で大切に保管しましょう。
2. 遺産分割協議書は遺産ごとに作成しますか。
遺産ごとに作成することは可能です。
一般的に、1冊の遺産分割協議書に全ての財産を記載して作成しますが、自分が相続する財産のみを記載したものも有効です。
ただし、この場合でも相続人全員の署名押印が必要な点に注意しましょう。
3. 遺産分割協議書のテンプレートはありますか。
国税庁や法務局のホームページのほか、法律事務所や金融機関等が公開しているものがあります。
相続人の数、親族関係、遺産の内容、分割方法等に分けて用意されている場合もありますが、雛形をそのまま使用することはほとんどできないと考え、自分達の事例に合わせて作成しましょう。
遺産分割協議書の提出先、提出が不要な場合まとめ
当ページでは、遺産分割協議書の提出先と不要な場合を解説しました。