本記事では、「受贈者」と「受遺者」の違いをわかりやすく解説します。
「受遺者」とは?
受遺者は、遺言によって財産を贈与された人のことです。
遺言で渡されるため受遺者といいます。
「受贈者」とは?
受贈者は、贈与によって財産を受け取った人のことです。
言葉の意味から、あげる側が一方的に渡すイメージをされるかもしれませんが、法律上は「契約行為」とされています。
そのため、贈与が成立するには次の3つの条件をクリアする必要があります。
- 無償…代金など支払わず、無償で財産を授受すること
- 片務…もらう側に義務はなく、渡す側のみが「渡す」義務を負う
- 諾成…申込と承諾の意思表示のみで成立
受遺者と受贈者との違いは?
具体的な違いは、次の通りです。
(1)形式
受遺の場合、あげる側が正式な遺言書を作成する必要があります。
そのうえで、「○○に財産を遺贈する」と記し、渡す財産を具体的に記載しておくことが求められます。
ちなみに、受遺者になれるのは法定相続人以外に限られます。
次に、受贈の場合です。
受贈は契約なので、渡す側が一方的に「あげる!」と主張するだけでは足りません。
相手が「もらう!」と合意してくれることまで求められます。
いっぽう、受遺の場合は受け取る側の自由なので、いらないと思えば放棄することも可能です。
ただし、包括遺贈を放棄したい場合、自分のために遺贈があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所で手続きをする必要があります。
(2)税金・登記
受贈と遺贈では、かかる税金や不動産登記の手続き面でも違いがあります。
受贈の場合にかかるのは「贈与税」、遺贈の場合は「相続税」です。
「なんだ、名前が違うだけじゃないか」とお思いの方もいるかもしれませんが、かけられる税率が異なりますので、注意が必要です。
また、贈与の中でも「死因贈与」の場合は、くれる人の「死亡」が贈与のきっかけとなることから、相続税がかかることになります。
もらう財産が不動産だった場合、受贈はあげる人・もらう人の2人で協力して登記の手続きを行います。
ただし、死因贈与の場合には、くれる人の相続人全員ともらう人が一致団結して行う必要があります。
一方、遺贈の場合は遺言執行者ともらう人が協力して手続きを行います。
遺言執行者が指名されていなければ、相続人全員、または代表相続人と行うことになります。
(3)年齢
贈与は「契約行為」なので、あげる側・もらう側のどちらかが未成年の場合には、単独で行うことができません。
ただし、親権者などの代理人がいれば、年齢を問わず贈与・受贈を行えます。
遺贈の場合、有効な遺言書を残せるのが15歳以上と定められていますので、15歳未満は行えません。
受遺者側が未成年の場合は、代理人がいれば問題ないため、実質上気にする必要はありません。
(4)受贈者が海外にいる場合
贈与税は、日本国内での贈与・受贈に対して課される税金です。
そのため、もらう側が海外にいる場合には判断が厳しくなります。
契約を結ぶ前に、税務署または税理士までご相談ください。
受贈されたらやるべきことは?
贈与を受けた場合、贈与税の申告が必要な場合があります。
一般的には、贈与税の基礎控除は1人につき、年間110万円までとされています。
これは、くれる側の人数に縛りはなく、総額です。
一体いくらから納税義務が発生するのか、いくら納付しなければならないのかを知りたい方は、税務署または税理までご相談ください。
まとめ
今回は、受贈者と受遺者の違いについて解説しました。
どちらがどちらだったか、当職でもこんがらがってしまうことのある両者ですが、皆さんが理解する助けになれば幸いです。
この記事を書いた人は
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。