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本記事では、相続税の計算方法、課税対象となる財産、注意したいポイントを解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
相続税とは
相続税は、被相続人(死亡人)の財産が相続税の基礎控除額を超える場合に課税されるものです。
課税対象となるのは「相続」「遺贈」「死因贈与」で財産をもらった場合で、被相続人との関係性や承継方法により、贈与税がかかる場合もあります。
相続税がかからない場合
相続税の申告・納税が必要なのは、相続財産の総額が下記の基礎控除額を超える場合です。
相続税の計算方法
相続税は、次の手順にて算出します。
- 相続財産の特定
- 1から基礎控除額を引く(課税遺産総額)
- 2を法定相続割合で分割
- 3に相続税率をかけ、相続人別の相続税額を算出
- 4を合計し、相続税の全体額を算出
- 5に各相続人の取得割合に応じて按分し、各自の負担額を算出
- 各相続人が利用できる控除を適用
- 相続税額の算出完了
1.相続財産の特定
相続財産(遺産)には、現金預金、不動産等のプラス、債務、葬儀費用等のマイナスの財産が含まれますが、これら全てに相続税がかかるわけではありません。
相続財産は、下記のように求めます。
- 相続財産:遺産総額-(非課税財産+債務+葬儀費用)
相続税の課税対象となる遺産
被相続人の財産は下記のように分類され、原則、課税対象となります。
種別 | 対象 |
---|---|
相続財産 | 不動産(土地・家屋)または不動産の上に存する権利 現金・預貯金 貸付金債権 社債・株式等・投資信託等 動産(自動車、貴金属、機械機器等) 特許権・著作権等の知的財産権 上記の他、営業上の権利、その他の財産 |
みなし 相続財産 | 定期金に関する権利 保証期間付定期金に関する権利 契約に基づかない定期金に関する権利 その他の利益の授受 等 |
特定の 贈与財産 | 相続時精算課税にかかる贈与財産の価額 相続開始前7年以内に贈与を受けている相続人がいる場合、その財産 |
相続税非課税となる財産
下記は、相続税の課税対象外となる財産です。
- 公益目的の事業用財産
- 特定寄付
- 祭祀財産
遺産にこれらの財産が含まれる場合、プラスの財産からこれらの価額を控除することができます。
控除できる債務
下記に該当するものは非課税財産と同様に、プラスの財産から控除できる債務です。
- 未納の公租公課
- 借入金
- 未払医療費
- クレジット債務
- 水道光熱費など
ただし、個人の公益事業用財産や墓所については控除することができません。
葬儀費用に含まれるもの
一般的な葬祭関連費用(下記を参照)は控除対象となりますが、全てが控除できるわけではありません。
- 埋葬、火葬、納骨、遺骸・遺骨その他
- 葬儀に際し、施与した金品のうち相当範囲まで
- 一般的に葬儀に必要とされる費用
- 死体の捜索、運搬にかかった費用
2.課税遺産総額の算出
相続税の課税対象となる遺産総額は、下記の計算にて算出します。
- 課税遺産総額:相続財産-基礎控除額
基礎控除額
相続税の基礎控除額は、無条件に3,000万円、法定相続人1人につき600万円の控除枠が設けられています。
相続人ではなく、法定相続人の数が対象となるため、相続放棄をした相続人がいる場合でも600万円加算されます。
被相続人に養子がいる場合、実子がいれば1人まで、いない場合は2人まで法定相続人として基礎控除額に算入することができます。
ただし、「特別養子縁組」の場合は何人でも法定相続人として算定対象となります。
3.各相続人の課税遺産額を算出
課税遺産総額を算出した後、各相続人の課税遺産額を算出します。
- 各相続人の相続税額:課税遺産総額×法定相続割合
法定相続割合
法定相続人には、法律に順位が定められています。
先順位の相続人がいる場合、後順位の法定相続人は相続することができませんが、配偶者は常に相続人となります。
被相続人との関係 | 配偶者 | 子 | 父母 | 兄弟姉妹 |
---|---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | |||
子がいる場合 | 1/2 | 1/2 | ||
父母がいる場合 | 2/3 | 1/3 | ||
兄弟姉妹がいる場合 | 3/4 | 1/4 |
4.各相続人の相続税額(仮)を算出
各相続人の課税遺産額を算出後、相続人ごとに相続税額を計算します。
- 各相続人の相続税額(仮):課税遺産総額×法定相続分×税率-控除額
ここで算出するのはあくまでも「仮」で、課税率は下記の通りです。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 速算控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | 0円 |
1000万円超、3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超、5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超、1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超、2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超、3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超、6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 50% |
5.全体の相続税額を算出
相続税計算においては、各相続人が法定相続分に沿って課税遺産総額を相続したと仮定し、合計額を算出します。
6.各相続人の実際の相続税額を算出
各相続人の実質負担額を下記の通り算出します。
- 各相続人の課税遺産額:全体の相続税額×(各相続人の課税額÷課税額合計)
7.適用できる税額控除をそれぞれ適用する
各相続人の負担額に対し、それぞれが活用できる控除額を反映します。
一般的な控除枠は下記の通りです。
- 暦年課税に係る贈与税額控除
- 配偶者控除
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
- 外国税額控除
- 相続時精算課税分の贈与税額控除
暦年課税に係る贈与税額控除
暦年贈与の税額控除は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に財産を贈与した場合、年間の贈与額が110万円以下だと非課税になる制度をいいます。
注意したいのは、暦年贈与を行った贈与者が死亡した場合、死亡から7年前までに行った贈与額が相続財産に含まれる点です。
配偶者控除
配偶者控除は、配偶者が相続する場合に受けられる控除です。
法定相続分(1/2)相当額、または、1億6000万円以下の場合には相続税がかかりませんが、下記の要件を満たす必要があります。
- 法律上の配偶者であること
- 申告期限(相続開始から10か月)までに遺産分割協議が確定していること
- 相続税の申告書を提出すること
あくまで対象は戸籍上の配偶者に限られますので、内縁関係者には認められません。
未成年者控除
民法改正により、成人年齢は18歳となりましたが、ここでいう「未成年」は20歳未満を指します。
未成年控除では、子または孫が20歳になるまでの期間に対し、1年につき10万円が控除されます。
1年未満の期間がある場合は1年に切り上げて算定します。
- 未成年者控除:10万円×(20歳-相続開始時の年齢)
控除額が本人の相続税額を超えれば、扶養義務者の相続税額より控除する事になります。
障害者控除
85歳に達するまで、1年につき10万円が控除されます(※特別障害者の場合、1年につき20万円)
控除額が本人の相続税額を超える場合、控除しきれない部分は扶養義務者の相続税額から控除することができます。
- 障害者控除:10万円(特別障害者は20万円)×(85歳-相続開始時の年齢)
相次相続控除
被相続人が相続開始前10年以内に開始した相続により財産を取得し、相続税を納税している場合、一定計算に基づいた控除額が適用されます。
外国税額控除
国外財産について、その所在国で日本の相続税相当の税額が課せられている場合、一定額まで控除されます。
相続時精算課税分の贈与税額控除
相続時精算課税の適用者に対し、課された贈与税がある場合は控除されます。
相続税の計算方法、課税対象、注意点 まとめ
当ページでは、相続税の計算方法、課税対象となる財産、注意点を解説しました。