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建設業を営む一人親方として、事業を拡大し安定させるには建設業許可の取得が欠かせません。なんてったって、法律で定められてしまっているので仕方がないのですが、許可の取得後も、単に「許可を持っている」というだけでは不十分なことをご存知ですか?
許可の取得後には、許可の更新手続きや定期の決算報告、許可の内容に変更が生じるとそれに伴う(変更)手続きなどが必要です。これらの手続きをしっかり管理し、適切なタイミングで対応しなけば、罰則対象となることも…。
この記事では、許可取得後に必要となる具体的な手続きとポイントを詳しく解説します。
Contents
1. 建設業許可の取得ができるかどうか
一人親方として独立している場合に満たすべき条件とは
建設業許可の取得は、法人でなくてもできますが、いくつかクリアすべき条件があります。簡易版ですが、下表に記載します。
1 | 事業の規模 | 小規模な場合でも、一定規模以上の取引や契約を行う場合には許可が必要です |
2 | 技術者等の選定 | 建設業法に基づき、「経営管理責任者」や「専任技術者」の設置が求められます |
取得に必要な実務経験や資格について
建設業許可を取得するには、業種ごとに異なるものの、実務経験や学歴、資格の保有が求められます。基本的な条件は、以下の通りです。
1 | 学歴 | 最終学歴や修了した学科により求められる実務経験年数が異なります |
2 | 資格 | 建築士や土木施工管理技士、大工技能士などの国家資格を取得している場合、その資格が実務経験に換算されることがあります |
3 | 実務経験 | ほとんどの場合、最終学歴+5年以上の実務経験が求められます 実務経験が足りない場合でも、特定資格を持っていると、その資格が代替となる場合もあります |
建設業の許可業種
建設業許可は、建設工事の種類ごと(業種別)に申請しなければなりません。以下に、業種を挙げます。
- 土木一式工事
- 建築一式工事
- 大工工事
- 左官工事
- とび・土工・コンクリート工事
- 石工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 管工事
- タイル・れんが・ブロック工事
- 鋼構造物工事
- 鉄筋工事
- 舗装工事
- しゅんせつ工事
- 板金工事
- ガラス工事
- 塗装工事
- 防水工事
- 内装仕上工事
- 機械器具設置工事
- 熱絶縁工事
- 電気通信工事
- 造園工事
- さく井工事
- 建具工事
- 水道施設工事
- 消防施設工事
- 清掃施設工事
- 解体工事
2. 建設業許可を取得した場合のメリット
建設業許可を取得すると、さまざまなメリットが生まれます。以下、簡単に解説します。
信頼性の向上(契約時や取引先との関係)
建設業許可を取得していると、取引先からの信頼が厚くなります。特に、以下の点で役立ちます。
- 契約書に記載できるため、安心感を提供できる
- 競合他社と差別化できる(優位に立てる)
公共工事や大規模な案件への参入可能
建設業許可を取得しなければ、公共工事や一定規模以上の工事を受注することができません。そのため、許可を取得することで次のメリットが考えられます。
- 公共工事の入札・請負
- 大規模案件の受注
業務の拡大やスタッフの雇用がしやすくなる
許可を取得することで、運営がしやすくなる可能性があります。
- 人事採用で優位になる
- 事業拡大の土台になる
- 融資審査に通りやすくなる
3. 取得しない場合のリスク
原則、許可を取得しなければならない場合が法律に定められているので、取得しなければ自然と「法的なリスク」を負うことになります。
―おそらく、「そんなこと知っとるわい!」と思われるでしょう。ですので、それ以外のデメリットをいくつか挙げてみます。
大きな案件の受注が難しくなる
建設業許可を取得しない場合、以下の理由で大きな案件の受注が難しくなります。
公共工事の受注制限
国や自治体や発注する公共事業には、建設業許可を持つ業者のみが入札に参加できるという制限があります。そのため、公共工事の受注を検討されている場合には算入できず、この点がデメリットとなり得ます。
大手企業との取引の制限
大企業や大規模な建設会社、ゼネコンとの取引を希望する場合、建設業許可を持っていないと受注できない場合があります。これらの企業は、取引先の信頼性を重視する傾向にあり、許可を持っていないことを理由に契約を断られるおそれがあります。
業界での競争力の低下
無許可のままですと、許可を取得手している同業他社に比べ、競争力の面で低く見られることがあります。許可業者との競争において、信頼性や安定性において不利な立場になることがあり、大きな案件を勝ち取るのが難しくなります。
信頼性の欠如から取引先に不安を与える可能性
無許可で営業を続けていると、取引先が不安を抱くおそれがあります。
信頼性の問題
許可業者は、法的に一定の基準をクリアした業者であると認められているため、取引先から信頼されやすくなります。一方、許可を持たない業者は、事業運営において安定性や信頼性に欠けると見なされ、取引先に不安を与えることがあるでしょう。特に大手や公的機関は、許可業者かどうかを重視する傾向が強いです。
顧客からの信頼喪失
一人親方として自営業を営む場合、許可を持たないことに対し、顧客に「業者として経験が浅いのでは…」と不安を抱かせるおそれがあります。一般の人に技術料はわかりづらいことから、思い込みによる認識のズレは仕方がない側面もあるのですが、許可を取得できる要件が揃っているのに取得していない状況でこのような事案に直面した場合には、悔しい思いをされるかもしれません。
罰則や規制対象となるリスク
許可を持たない場合、以下の制約や罰則が課せられることがあります。
営業の制限
建設業を営むうえで、原則、5,000万円以上の建設工事を請け負うには、建設業許可の取得が必須です。この点、必要な許可を取得しないまま営業を行うと、営業停止や、業務の一部を行うことができなくなるおそれがあります。
罰則の可能性
たとえば、契約を結ぶ際に虚偽の情報を伝えたり、許可がなければ請け負うことができない工事について無許可で工事を進めた場合、行政処分として営業停止や罰金が科せられることがあります。違反が発覚すると、業務に多大な支障をきたすおそれがあるため、事前に確認しましょう。
4. 今後取得を目指す場合のタイミング
ここでは、建設業許可申請のタイミングとして最適な時期や、申請に向けて準備すべきことについて解説します。
1. 許可申請に最適なタイミング
建設業許可を申請するタイミングとして、以下が考えられます。
業績が安定してきた
事業の収益が安定してきたら、許可の取得を検討しましょう。たとえば、売上や利益が一定以上で安定しており、支払いの遅延などがない状況であれば、申請後も安心した事業継続が期待できます。反対に、業績が不安定な状態で申請すると、許可を維持するのが難しい場合があります。
また、収益の安定に加え、帳簿や会計の管理が整っていることも大切です。経理が不十分だと、許可申請がスムーズに進まない場合があります。
業務を拡大したいと考えているタイミング
事業拡大を視野に入れている場合、建設業許可の取得がお勧めです。特に人事採用や業務範囲を広げる際には、許可を持っている方が運営時に安定感が生まれます。
競争に遅れる可能性がある
競合他社が許可を取得している場合、自分が無許可でいることが不安材料になる場合があります。この場合、無理をして取得する必要はないものの、一度検討されるといいでしょう。
2. どのような準備が必要か
建設業許可の申請前に、以下の準備を整えておくと安心です。
経験年数や実務経験の確認
許可申請には、申請する業種に対応する実務経験が求められます。ほとんどの業種では「5年以上の実務経験」が必要ですが、資格を持っていればその資格で経験年数の一部を補うことができます。
実務経験を証明には、過去の工事内容が確認できる契約書、施工管理実績、確定申告書の控えなどをが必要です。
経理状況の整備
経理面において、帳簿が正確に記録されているかが問われます。許可申請の際は、過去の決算書や納税証明書などが必要です。特に事業を営む上で税務面が問題となると、許可が取得できない場合もあるため、帳簿や税金関連の書類をしっかりと整理しましょう。
適切な技術者の確保
許可申請の際は、一定の技術者を確保する必要があります。たとえば、土木工事業や建築工事業の許可を申請する場合、一定数の技術者(施工管理技士や主任技術者)を事業所内で確保している必要があります。これにより、実際の業務運営においても信頼性が向上します。
許可申請に必要な書類の準備
建設業許可の申請には、原則、以下の書類が必要です。
- 建設業許可申請書
- 営業所一覧表
- 営業所技術者等一覧表
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 誓約書
- 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書
- 成年被後見人又は被保佐人とみなされる者に該当せず、また、破産者で復権を得ないものに該当しない旨の市町村の長の証明書
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明者
- 常勤役員等の略歴書
- 常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書
- 健康保険等の加入状況
- 営業所技術者等証明書
- 技術検定合格証明書等の資格証明書
- 実務経験証明書
- 指導監督的実務経験証明書
- 建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表
- 許可申請者の従者、生年月日等に関する長所
- 貸借対照表、損益計算書
- 営業の沿革
- 所属建設業団体
- 納税証明書
- 主要取引金融機関名
その他の準備
個人事業主として営業している場合、仮に許可取得後に個人事業主から法人成りした場合には、改めて新規許可を取得しなければならないため、法人化を検討されているなら申請前がお勧めです。
5. 取得後に必要な手続き
建設業許可を取得した後も、いくつか必要な手続きがあります。
1. 許可更新手続き
建設業許可には、有効期限が設定されています。許可の取得後も、期限が来るたびに更新手続きを行う必要があります。
許可の有効期限と更新タイミング
有効期限
建設業許可の有効期限は、原則、5年間です。そのため、5年ごとに更新手続きを行わなければなりません。期限を過ぎると許可が失効するため、更新手続きは余裕を持って行うことが大切です。更新を怠ると、罰則が科せられることもあるため注意しましょう。
更新に必要な書類
更新時には、原則、新規許可申請時と同様の書類を求められます。準備に時間がかかるものもありますので、余裕をもって準備しましょう。
更新手続きの注意点
決算報告の有無
建設業許可の更新手続きは、前回の申請から適切に手続きが行われていなければ受け付けてもらえません。特に過去の5年間に法的要件を欠いていないか、税務関連は適正に処理されているかなど確認してください。
2. 定期的な報告義務や変更届出
建設業許可を取得した後も、事業運営の状況に応じて、定期的な報告や届出を行う必要があります。
定期的な報告義務
決算報告
許可業者は、年に1回など定期的に決算報告書を提出する義務があります。これには、主に事業内容や財務状況に関する情報が含まれます。
技術者の状況報告
有資格者が離職した場合や新たに技術者を雇った場合、報告が必要な場合があります。
変更届出
許可取得後、事業内容に変更があった場合には、変更届出が必要です。以下は主な変更届出の例です。
事業内容の変更
新たな業種の工事を行う場合や、新しい建設業許可を取得するには、事業内容の変更届出を提出する必要があります。たとえば、土木工事業の許可を取得した後、建築工事業の許可も取得したい場合には、新たに変更届出を出すことが求められます。
事業主の変更
事業主が変わった場合や法人化した場合、変更届出または新規許可申請を行う必要があります。
事業所名の変更
事業所の名称が変わった場合や住所変更があった場合も、変更届出が求められます。特に事業所が複数ある場合、全ての事業所を報告する必要があります。
3. 事業の拡大に伴う許可内容の変更手続き
事業を拡大する場合、新たな工事の業種を始める場合には、追加で申請を行う必要があります。
業種の追加
建設業許可は、各業種ごとに取得する必要があります。もし既存の許可に新しい業種を加えたい場合には必要な手続きをとりましょう。
事業所の追加
事業の拡大に伴い、新たに事業所を開設した場合、その事業所についても手続きが必要です。
資本金や従業員数の変更
資本金や従業員数が増えた場合、それに伴い、調整が必要となることもあります。
おわりに
建設業許可の取得は、事業の信頼性や拡大を支えますが、それだけで終わりではありません。許可後も定期的な手続きが必要であり、怠ると事業の運営に支障をきたす可能性があります。適切なタイミングでの許可更新や報告義務の履行、そして事業拡大に伴う許可内容の変更をきちんと行うことが、長期的な成功への鍵です。しっかりと手続きを管理し、順調に事業を進めていきましょう。