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問7
Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.CがBに対し甲建物をAから買受けたとの虚偽の話をしたので、これを信じたBが甲建物の占有を任意にCに移転した場合、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。
2.Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだときは、Aは甲建物の間接占有が侵奪されたものとして、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することができる。
3.Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。
4.AとBのいずれもが死亡した場合、本件契約は当然に終了する。
正解:1
1:正しい
占有回収の訴えが認められるのは、占有が不法に奪われた場合に限ります(民法第200条)。
本件の場合、Cが虚偽を用いている場合でも、Bは自らの意思によりCに占有を移転していることから、占有の侵奪に該当せず、Aは占有回収の訴えを提起することが困難だと思われます。
したがって、本肢は正しいです。
2:誤り
占有回収の訴えの対象は、直接占有です(民法第200条)。
関節占有者Aが直接占有していない甲建物につき、当訴えを提起することは認められません。
この場合、Aは明渡し請求等の契約関係に基づいた手段を検討することになるでしょう。
したがって、本肢は誤りです。
3:誤り
占有の継承について、相続開始に伴い当然に生じます(民法第896条)。
ここでは、相続人が相続開始を知っているか否かは関係なく、Dは相続開始時点でBの占有を承継することになります。
したがって、本肢は誤りです。
4:誤り
賃貸借契約は、当事者双方の死亡により当然に終了するものではなく、それぞれの地位は相続され、契約そのものは存続することになります。
ただし、特約等で契約終了を定めていれば、例外的に終了することもあり得るのですが、本肢ではそうした特約の存在は確認できず、誤りだといえます。