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問題44
Ｙ市議会の議員であるＸは、2023 年7 月に開催されたＹ市議会の委員会において発言（以下「当該発言」という。）を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Ｙ市議会会議規則a 条に違反するとして、Ｙ市議会の懲罰委員会は、20 日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Ｙ市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定される
ところ、本会議の議決は、9 月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Ｘは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20 日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。9 月招集予定の次の会期までの間において、Ｘは、出席停止の懲罰を回避するための手段（仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。）を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1 か月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。
（参照条文）
地方自治法
134 条 ①普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
② 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。
135 条 ①懲罰は、左の通りとする。
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
② 以下略
Ｙ市議会会議規則
a 条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。
Contents
解答例：
Y市に対し、出席停止処分の差止訴訟を提起し、仮の差止めを申立てることが有効適切。（40文字）
問題文の状況
問題文の状況から整理していきます。
Xに対する懲罰の決定
2023年7月、XがY市議会にて行った発言が議会の品位を汚すものであり、会議規則に違反するとして懲罰を受けることになりました。
懲罰の内容は20日間の出席停止で、9月に招集される会期にて議決予定です。
Xの主張
Xはこの決定に対し、下記の2点を主張しています。
- 発言は正当なもので、議会の品位を汚すものではなく、会議規則にも違反しない
- 20日間の出席停止は長く、議院としての職務を果たせなくなる
また、出席停止の懲罰回避のために、仮の救済手段含む行政事件訴訟法上の手段を検討しています。
問われていること
この問題では、下記を問われています。
- Xは誰に対し
- どのような手段をとるのが有効適切か
1.Xは誰に対し
出席停止処分を科そうとしている行政庁は、Y市議会の懲罰委員会です。
処分庁が国または公共団体に所属する場合、差止訴訟は処分をしようとする行政庁の所属する国または地方公共団体を被告として提起する必要があります（行政事件訴訟法第11条）
したがって、XはY市を被告として訴えを提起することになります。
2.どのような手段をとるのが有効適切か
Xの目的は出席停止処分の回避ですが、許された時間は次の会議の議会までの1か月程度です。
したがって、出席停止処分の差止訴訟を提起し、仮の差止めの申立ても行う必要があります（行政事件訴訟法第37条の4、第37条の5第2項）
（補足）試験対策
記述問題を苦手とする人は、書き出しや文書構成で迷う傾向にあるため、ある程度のテンプレートを覚えると効率良く解答できるようになるかと思います。
更に、本件では、出席停止という行政処分に該当する懲罰の実施を回避するための方法と、時間的制約に対する救済措置を検討する必要があります（出題者は「仮の差止め」という具体的な救済手段に気づけるかを試す意図をもって、作成したのではないでしょうか）。
つまり、記述式問題への苦手意識を克服するには、問題文の正確な読取り、解答テンプレートの暗記、基礎知識の拡充が必要だといえます。
いきなり得意になることはないでしょうが、小さなステップを重ねることで、自分なりの解答スタイルを整えましょう。
