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当ページでは、公正証書を作成する方法とメリット、注意点を解説します。
公正証書とは
公正証書とは、公証人が法律に基づいて作成する公文書を指します。
(1)公証人とは
公証人とは、法律に基づいた公文書を作成し、その内容を公に証明する役割を担う法律専門職を指します。
通常、公証人は裁判官や弁護士等の経験をもつ法律家から任命されるため、法律知識が豊富で、公正な立場にて業務を遂行することが期待されます。
(2)公文書とは
公文書とは、国や地方自治体などの公的機関が業務上作成または受領し、保管する文書を指します。
作成主体が公的機関であることから高い信頼性を持ち、法的な証拠力があります。
(3)公文書と私文書の違い
個人や法人などが主体的に作成する文書を私文書と呼び、内容が正確であることが確認されると法的な効力が認められることがあります。
一方、公文書の場合、公的機関により作成されるため、私文書に比べて証拠力が高く、法的手続において強力な証拠として使用されるのが一般的です。
比較項目 | 公文書 | 私文書 |
---|---|---|
作成主体 | 公的機関 | 個人、法人などの私的主体 |
法的な効力 | 法的手続において強い効力を発揮 (民法第1000条、第1067条、公証人法第3条、第4条) | 署名押印がある場合は法的効力あり (民法第93条、第95条、第102条) |
証拠力 | 高い 内容の正確性・適法性が保証される (公証人法第1条、第3条、第5条) | 内容による (民法第1000条、第1067条) |
保存義務 | あり (公文書管理法第4条~第6条) | 内容による (民法第93条、商法第16条、法人税法第22条) |
閲覧の可否 | 原則、可 (情報公開法第3条) | 任意 (民法第90条、第88条) |
改ざんがあった場合の影響 | 3年以上の懲役(刑法第157条) 5年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第158条) | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第159条、第160条) |
公正証書の種類
公正証書は、目的や内容に応じ、下記に分類されます。
- 遺言公正証書
- 契約公正証書
- 金銭消費貸借契約公正証書
- 離婚公正証書
1.遺言公正証書
遺言公正証書とは、遺言者が相続人の指定や遺産の分割割合を公証人の前で口授し、公証人が作成する公正証書を指します(民法第1000条)
当該遺言は法的効力が高く、遺言者の死後において容易に実行できるため、相続トラブル防止にも役立ちます。
2.契約公正証書
契約公正証書とは、契約当事者が公証人の前において、契約内容を正式に確認し、公証人が内容を証明する公正証書を指します(民法第1067条)
特に、金銭貸借契約や不動産取引、親子間の合意に基づく契約で活用されます。
3.金銭消費貸借契約公正証書
金銭消費貸借契約公正証書とは、貸主と借主が公証人の前で契約内容を確認し、貸借関係を証明する文書として作成されます(民法第597条、第1067条)
4.離婚公正証書
離婚公正証書とは、夫婦が合意の上で離婚を決定し、財産分与や親権、養育費等に関する取り決めを公正証書として記録する文書を指します(民法第768条)
公正証書を作成するメリット
公正証書を作成することで、下記のメリットがあります。
- 証拠能力を強化できる
- 内容の変更・改ざんを防止できる
- 法的効力を確保できる
- トラブル防止、後のコストを抑えられる
1.証拠能力を強化できる
公正証書は、公証人が内容を確認し、認証した文書です。
公証人は中立的な立場で関与するため、当事者は証明責任を負わず、証拠として提出されると相手方が内容を反証することは極めて困難となります。
2.内容の変更・改ざんを防止できる
公正証書は公証人が管理し、作成後の原本は公証役場にて保管されます。
これにより、第三者が無断で閲覧し、変更することは極めて難しく、証拠として提出する際の安全性が確保されます。
仮に文書が改ざんされた場合でも、変更箇所について、公証人が保管する原本と異なることが証明できますし、改ざんを行った者は刑罰の対象となる可能性があります。
3.法的効力を確保できる
法的効力とは、ある行為や文書、契約などが法的に認められ、その内容や結果が法律の力で守られたり強制されることを指します。
公正証書は、法律に精通した公証人が関与する文書であり、その内容が法的に認められることから、法的効力は非常に強いといえます。
例えば、契約が履行されない場合、公正証書に基づく証拠を主張することで、契約内容の立証がスムーズです。
また、強制執行認諾文言を付けている場合、裁判を行わず直接強制執行を行うこともできます。
これにより、債務者が支払を拒否した場合でも迅速な法的措置をとることが可能となります。
4.トラブル防止、後のコストを抑えられる
公正証書は、当事者の意思を公証人が確認の上で作成するため、内容を明確かつ客観的に示すことができます。
これにより、契約内容に疑義が生じる余地がなく、契約や合意の履行がされない場合に生じるトラブルを防ぐことができます。
公正証書に記載される契約内容や合意事項は、そのまま法的効力を持つことから、裁判を起こす際の証拠を集める手間が省け、金銭的なコスト削減にも役立ちます。
契約内容が明確だと事後トラブル回避に繋がり、長期的な法的コストや精神衛生上もプラスにはたらくことがあります。
公正証書を作成する際の注意点
公正証書を作成する際は、下記に注意しましょう。
- 費用がかかる
- 作成に時間がかかる場合がある
- 内容に制限がある
- 証人の立会いが必要な場合がある
- 変更が難しい
1.費用がかかる
公正証書の作成には、公証人手数料がかかります。
公証人手数料は、作成する文書の種類や内容、記載金額に応じて変動します。
これに加え、証人が必要な場合には証人に支払う報酬や交通費が必要な場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
公正証書作成の際、どちらが費用を負担するかでトラブルになることもあるため、事前に話し合いましょう。
2.作成に時間がかかる場合がある
公正証書の作成には、事前の準備、必要書類の収集、公証人とのやり取り、その他予約の調整などとの要素が関わり、時間がかかる場合があります。
特に、契約内容が複雑な場合や、証人を要する場合には追加で時間がかかることもあります。
そのため、公正証書を作成する場合、余裕を持ったスケジュール管理が大切です。
3.内容に制限がある
公証人が作成できる文書には限界があります。下記は一例です。
法的な制限 | 1.違法な内容 2.無効な契約 3.内容が曖昧な契約 |
内容の制限 | 1.契約条件が具体的すぎる、又は詳細すぎる場合 2.あまりにも私的な取り決めや日常的な約束 |
例えば、複雑な専門用語を多用する契約や法的な解釈を要する契約内容の場合、公証人の確認・立証可能な範囲を超えるため、断られる可能性があります。
4.証人の立会いが必要な場合がある
公正証書を作成する際、文書の正当性と信頼性強化を目的に、証人の立会いが必要な場合があります。
特に、遺言公正証書や特定の契約書の場合、証人が不適格であったり、証人の数が不足すると公正証書自体の効力が失われる可能性があるため、証人の選定や人数には注意が必要です。
5.変更が難しい
公正証書に記載した内容について、後から変更する場合、いくつかの条件を満たす必要があります。
一般的に、変更を行う場合には新たな公正証書を作成するケースがほとんどで、新規作成時と同様の手間と費用がかかることを考慮しなければなりません。
当事者同士が合意しても、公証人を交えて変更内容の確認・書面の訂正を行わなければ法的な効力を持たない点に注意しましょう。
公正証書作成の流れ
公正証書作成の流れは、下記の通りです。
スタート
│
├─>【必要な文書の準備】
│ └→ どのような契約や内容で公正証書を作成するか決定
│
├─>【公証人に依頼】
│ └→ 公証人事務所に連絡し、事前に相談
│
├─>【事前打ち合わせ】
│ └→ 契約内容や遺言の詳細を整理・確認
│ └→ 必要書類(本人確認書類、契約内容など)を提出
│
├─>【公証人による確認】
│ └→ 公証人が法的要件を確認し、内容が適切か確認
│ └→ 内容に問題がないかを公証人が審査
│
├─>【証人の確認】
│ └→ 必要に応じて証人を立会い(遺言や特定の契約)
│
├─>【公正証書作成】
│ └→ 公証人が正式に公正証書を作成
│ └→ 内容を確認・署名捺印
│
├─>【文書の交付】
│ └→ 作成された公正証書を依頼者に交付
│
└─>【終了】
1.必要な文書の準備
公正証書を作成する目的に応じ、関連書類を整理しましょう。
2.公証人に依頼
事前に公証人に相談し、作成を希望する公正証書について話し合います。
3.事前打ち合わせ
公証人と打ち合わせを行い、文書の内容を確認の上、必要書類を提出します。
4.公証人による確認
公証人が法的な要件を確認し、文書の内容が法律に適合するかどうかのチェックを行います。
5.証人の確認(必要な場合)
遺言や特定の契約書を作成する場合、証人の立会いが必要です。
証人は、公証人の前で文書の内容を確認の上、署名します。
6.公正証書作成
作成した文書の内容を読み聞かせ、内容に問題がなければ公正証書を作成します。
7.文書の交付
完成した公正証書を依頼人に交付し、原本は公証役場にて保管されます。
必要書類
公正証書を作成するには、下記の書類が必要です。
個人の場合 | 法人の場合 | |
---|---|---|
当事者本人により公正証書を作成する場合 | 下記のいずれか1セット ・印鑑登録証明書と実印 ・運転免許証と認印 ・マイナンバーカードと認印 ・住民基本台帳カード(写真付き)と認印 ・パスポート、身体障害者手帳又は在留カードと認印 | 下記のいずれか1セット ・代表者の資格証明書と代表者印及びその印鑑登録証明書 ・法人の登記簿謄本と代表者印及びその印鑑登録証明書 |
代理人により公正証書を作成する場合 | ・本人から代理人への委任状 ・本人の印鑑登録証明書 ・代理人の確認資料 | ・法人の代表者から代理人への委任状 ・代表者の確認資料(下記のいずれか) ア代表者の資格証明書および代表社員の印鑑証明書 イ法人の登記簿謄本(登記事項証明書)および代表社員の印鑑証明書 ・代理人の確認資料 |
かかる費用
公正証書の作成にかかる費用は、原則、公正証書の目的価額に応じて変動します。
目的価額とは、その行為によって得られる一方の利益を金銭で評価したものを指します。
法律行為に係る公正証書作成時にかかる手数料は、下記の通りです(公証人手数料令第9条別表)
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
公正証書を作成する方法、メリットと注意点まとめ
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