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事業継続力強化計画の認定で受けられる優遇措置、作成方法、BCPとの違いを解説

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当ページでは、事業継続力強化計画の認定により受けられる優遇措置、作成方法、BCPとの違いを解説します。

事業継続力強化計画とは

事業継続力強化計画(以下、記事の一部にて「計画」といいます)とは、中小企業が自社の災害リスク等を認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、現在及び将来的に行う災害対策などを記載するものです(出典:中小企業等経営強化計画認定制度の概要より)

端的に言えば、自然災害等に対する中小企業の対策をまとめた計画を指し、国の認定を受けることで、企業は税制優遇措置等の恩恵を受けることができます。

事業継続力強化計画とBCPとの違い

BCP(事業継続計画)とは、災害等の緊急事態における企業・団体の事業継続計画を指します。

事業継続力強化計画とBCPは、下記の点で異なります。

  1. 重点項目
  2. 認定制度の有無

(1) 重点項目

事業継続力強化計画の場合、災害発生時の具体的な対応に重きを置いています。

いっぽう、BCPの場合は事業復旧を重視する点で大きく異なります。

また、事業継続力強化計画では義務のない計画実行のための特定条件や、中核事業の特定について、BCPでは特定する必要があります。

事業継続力強化計画のほうが記載すべき項目が少ないため、作成コストがかからない点はメリットだと言えます。

(2) 認定制度の有無

事業継続力強化計画の場合、一定の要件を満たすことで国から認定を受けられます。

いっぽう、BCPの場合にはこのような制度は設けられていません。

事業継続力強化計画の認定により受けられる優遇措置

事業継続力強化計画の認定を受けると、下記の優遇措置が受けられる可能性があります。

  1. 金融支援
  2. 中小企業防災・減災投資促進税制
  3. 補助金事業の加点対象となり採択率が上がる
  4. 損害保険料の割引対象となる

1. 金融支援

事業継続力強化計画の認定を受けた事業者を対象に、さまざまな金融支援が行われています。

1-1. 日本政策金融公庫による低利融資(BCP資金)

日本政策金融公庫では、計画の認定を受けた事業者が行う設備投資にかかる資金について、低利融資(BCP資金)を行っています。

貸付金利設備資金について、基準利率から0.9%引下げ(運転資金については基準利率)
※ 信用リスク・貸付期間等に応じ、所定の利率を適用
貸付限度額中小企業事業:7億2,000万円
※ 設備資金に0.9%の引下げが適用されるのは、貸付限度額のうち4億円まで
貸付期間設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)

1-2. 中小企業信用保険法の特例

中小企業者は、計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証・保証枠の拡大が受けられます。

通常枠別枠
普通保険2億円(組合4億円)2億円(組合4億円)
無担保保険8,000万円8,000万円
特別小口保険2,000万円2,000万円
新事業開拓保険2億円⇒3億円(組合4億円⇒6億円)(保証枠の拡大)2億円⇒3億円(組合4億円⇒6億円)(保証枠の拡大)
海外投資関係保険2億円⇒4億円(組合4億円⇒6億円)(保証枠の拡大)2億円⇒4億円(組合4億円⇒6億円)(保証枠の拡大)

1-3. 中小企業投資育成株式会社法の特例

計画の認定を受けた場合、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加え、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)も、計画の実行にあたり、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能になります。

1-4. 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット

計画の認定を受けた中小企業者(国内親会社)の海外支店 又は 海外子会社が、日本政策金融公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合、日本政策金融公庫による債務の保証を受けることが出来ます。

保証限度額1法人あたり最大4億5,000万円
融資期間1~5年

1-5. 適用対象者

金融支援の対象となるのは、事業継続力強化計画 または 連携事業継続力強化計画の認定を取得した中小企業者です。(① 及び ②の普通保険、無担保保険については、中小企業者と共に連携事業継続力強化計画に係る取組を行う中堅企業者※も法で定める者に限り対象となります)

※資本金の額が10億円以下または従業員数2,000人以下の法人

1-6. 相談窓口

各種金融支援の活用を検討する場合、計画の提出前に、各種機関までご相談ください。

制度番号期間の名称
問い合わせ窓口
電話番号
1-1.
1-4.
日本政策金融公庫 事業資金相談ダイヤル0120‐154‐505
1-1.沖縄振興開発金融公庫 融資第二部
中小企業融資第一班
098‐941‐1785
1-2.(一社)全国信用保証協会連合会
各都道府県の信用保証協会
03-6823-1200
各都道府県の信用保証協会
1-3.a) 東京中小企業投資育成株式会社
(新潟・長野・静岡以東の18都道府県に本社を置いている企業)
b) 名古屋中小企業投資育成株式会社
(愛知・岐阜・三重・富山・石川の5県に本社を置いている企業)
c) 大阪中小企業投資育成株式会社
(福井・滋賀・奈良・和歌山以西の24府県に本社を置いている企業)
a) 03-5469-1811(代)

b) 052-581-9541(代)

c) 06-6459-1700(代)
(九州支社:092-724-0651)

2. 中小企業防災・減災投資促進税制

中小企業防災・減災投資促進税制とは、中小企業等が計画に記載した設備を1年以内に導入した場合、防災・減災設備について特別償却を適用することができる制度をいいます。

特別償却とは、通常の減価償却とは異なる経費計上ができる措置を指します。

2-1. 適用対象者

特別償却の対象となるのは、青色申告を行う中小企業等で、認定対象期間内に認定を受けた者に限ります。

2-2. 適用対象期間

適用対象となるのは、事業継続力強化計画 又は 連携事業継続力強化計画の認定を受けた日から1年を経過する日までの間です。

また、適用対象期間のうち、設備を取得した時点により特別償却の割合が異なります。

取得期間償却率
令和7年(2025年)3月31日までに取得した場合18%
令和7年(2025年)4月1日以後に取得した場合16%

2-3. 対象設備

優遇措置の対象となるのは、下記の設備です。

減価償却資産の種類
(取得価額要件)
対象となるものの用途又は細目
機械 及び 装置
(100万円以上)
自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置
(これらと同等の機能を有するものを含む)
器具 及び 備品
(30万円以上)
自然災害:全ての設備
感染症:サーモグラフィ装置
(同等の機能を有するものを含む)
建物附属設備
(60万円以上)
自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、電力供給自動制御システム、照明設備、無停電電源装置、貯水タンク、浄水装置、排水ポンプ、揚水ポンプ、格納式避難設備、止水板、耐震・制震・免震装置、架台(対象設備をかさ上げするために取得等をするものに限る。)、防水シャッター
(これらと同等の機能を有するものを含む)

2-4. 適用手続

事業継続力強化計画の認定後、設備を取得して事業の用に供し、税務申告の際、「対象設備の償却限度額の計算明細書」を添付します。

3. 補助金事業の加点対象となり採択率が上がる

計画の認定事業者は、下記の補助金事業等について、加点措置を受けることができます。

  1. ものづくり補助金
  2. 事業再構築補助金(サプライチェーン型強靱化枠)
  3. IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)
  4. 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業・専門家活用事業)
  5. 地方公共団体による小規模事業者支援推進事業費補助金(災害活用)
  6. グループ補助金/なりわい再建支援補助金

4. 損害保険料の割引対象となる

計画の認定事業者について、下記の損害保険会社等において、保険料等の割引を行っています。

  1. あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
  2. AIG損害保険株式会社
  3. 共栄火災海上保険株式会社
  4. 損害保険ジャパン株式会社
  5. 大同火災海上保険株式会社
  6. Chubb損害保険株式会社
  7. 東京海上日動火災保険株式会社
  8. 三井住友海上火災保険株式会社
  9. 全日本火災共済協同組合連合会

事業継続力強化計画の認定を受けるメリット

上記、優遇措置のほか、計画の認定を受けることで下記のメリットが考えられます。

1. 災害による損害防止

事業継続力強化計画の作成において、災害を想定した事前対策を講じることにより、実際の災害時に被害拡大を防ぐ効果が相当程度、期待できます。

2. 取引先からの信頼向上

計画の認定を受けた企業は、認定ロゴマークの使用が可能となるだけでなく、中小企業庁のホームページ上にて企業情報が公開されます。

出典:中小企業庁ホームページ

そのため、取引先や顧客への信頼向上が期待でき、他社との差別化が図れる可能性があります。

事業継続力強化計画の注意点

事業継続力強化計画を作成する場合、下記に注意しましょう。

1. 3年以内に更新

計画の実施期間として定められるのは、最大3年間です。

このため、3年以内に更新手続を行う必要がある点に注意が必要です。

2. 優遇措置を受けるには早期対応が必要

計画認定によるメリットを最大化するには、令和7年(2025年)3月31日までに対象となる設備を取得する必要があります。

その後に取得した設備が対象外となるわけではありませんが、メリットを最大化することを念頭に置く場合は、早期に対応されることをオススメします。

事業継続力強化計画策定の流れ

計画策定は、下記の流れで行います。

  1. 事業継続力強化の目的を検討
  2. 災害等のリスク確認・認識
  3. 初動対応の検討
  4. ヒト、モノ、カネ、情報への対応
  5. 平時の推進体制

1. 事業継続力強化の目的を検討

目的を記載する際、下記の「事業継続力強化計画作成指針」に基づき、自らの事業継続力強化が自然災害等が起こった際、経済社会に与える影響を軽減することを念頭に行いましょう。

「事業継続力強化計画作成指針」抜粋(第1ロ)
事業継続力強化の目的については、イの自らの事業活動が担う役割を踏まえつつ、事業継続力強化に当たって の基本的な考え方を検討した上で、サプライチェーンや地域経済全体に与える影響や、従業員に対する責務等、 自らの事業継続力強化が自然災害等による経済社会的な影響の軽減に資する観点から、記載するものとする。

2. 災害時のリスク確認・認識

災害時のリスクについて、ハザードマップ等を活用し、事業所・工場等の立地地域のリスクを確認しましょう。

ハザードマップ等の入手先は下記の通りです。
・地域の自治体HP
国土交通省ハザードマップポータルサイト
国土交通省川の防災情報
・中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(情報セキュリティ自社診断・リスク分析シート

3. 初動対応の検討

初動対応では、下記の取組が求められます。

  1. 人命の安全確保
  2. 非常時の緊急時体制の構築
  3. 被害状況の把握・被害情報の共有

4. ヒト、モノ、カネ、情報への対応

2で検討した影響を踏まえ、災害等に対し、事前にどのような対策を実行できるかを検討します。

5. 平時の推進体制

事業継続力強化計画は、平時から訓練することが大切です。下記に留意し、適宜訓練等を実施しましょう。

  1. 経営層の指揮の下、事業継続力強化計画の内容を実行すること(平時の推進体制に経営
    陣が関与すること)
  2. 年に一回以上の訓練・教育を実施すること
  3. 計画の見直しを年1回以上実施すること

事業継続力強化計画の認定で受けられる優遇措置、作成方法、BCPとの違いまとめ

当ページでは、事業継続力強化計画の認定により受けられる優遇措置、計画の作成方法、BCPとの違いを解説しました。

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榊原沙奈
(さかきばら さな)
ヲタク行政書士®
やぎ座のO型、平成弐年式
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