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当ページでは、金融商品取引法(当ページでは、「金商法」と記載します)で禁止されている対象行為、禁止行為に違反した場合の罰則、金融商品取引を行う際の注意点を解説します。
Contents
金融商品取引法とは
金融商品取引法(金商法)とは、有価証券をはじめとする金融商品の売買に関し、公正な取引と価格の維持、流通の円滑化を図ることで、国民経済の健全な発展と投資者の保護を目的とする法律です。
金融商品取引法(目的)
第一条 この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。
(1) 金融商品とは
「金融商品」とは、有価証券をはじめとする金融資産・金融負債、デリバティブ取引に関する契約の総称です。
(2) 有価証券とは
「有価証券」とは、下記に該当するものを指します(第2条第1項、第2項)
- 国際証券
- 地方債証券
- 特別の法律により法人の発行する債券(商工債券、農林債券など)
- 特定社債券(SPC法に規定するもの)
- 社債券
- 出資証券(特別の法律により設立された法人の発行するもの)
- 優先出資証券(協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定されたもの)
- 優先出資証券 又は 新優先出資と引受権を表示する証券(SPC法に規定するもの)
- 株券 又は 新株予約権証券
- 投資信託 又は 外国投資信託の受益証券(投信法に規定するもの)
- 投資証券、新投資口予約権証券 若しくは 投資法人債券 又は 外国投資証券(投信法に規定するもの)
- 貸付信託の受益証券
- 特定目的信託の受益証券(SPC法に規定するもの)
- 受益証券発行信託の受益証券(信託法に規定するもの)
- 法人が事業に必要な資金調達のために発行する約束手形(内閣府令で定めるもの)
- 抵当証券(抵当証券法に規定するもの)
- 外国 又は 外国の者が発行する証券 又は 1~9、12~16までの証券 又は 証書の性質をもつもの
- 外国の者が発行する証券 又は 証書で銀行業者その他の金銭貸付業者の貸付債権を信託する信託の受益権 又は これに類する権利を表示するもの(内閣府令で定めるもの)
- 外国の法令に基づく権利で、集団投資スキーム持分に類するもの など
要するに、「有価証券全般(みなし有価証券)と金融商品取引に関する権利は全て対象となる」と考えていただいて差し支えありません。
(3) デリバティブ取引とは
「デリバティブ取引」とは、通貨・債権・株式などの原資産から派生した金融商品(デリバティブ)を目的とする取引を指します(第2条第21項、22項、23項)
デリバティブは、「先物」「オプション」「スワップ」に分類されます。
先物取引 | 特定資産を将来のある時点において、特定条件での売買を約束するもの |
オプション取引 | 特定資産を定められた期間内に、定められた価格で購入または売却する権利を売買するもの |
スワップ取引 | お金を受け取る権利、お金を支払う義務を交換するもの |
これらの仕組みを端的に説明すると…
(先物取引)推しグッズの予約
(オプション取引)抽選券付きのグッズ購入
(スワップ取引)カフェの珈琲と定食屋の親子丼の交換
が挙げられます。
金融商品取引法の規制対象
金商法の規制対象は、下記の通りです。
1. 事業者
金商法の規制対象となる事業者は、下記の通りです(第28条各項)
区分 | 業務内容 | 例 |
---|---|---|
第一種金融商品取引業 | 流動性の高い有価証券の売買・勧誘、引受け、店頭デリバティブ取引、資産管理などを行う事業者 | 証券会社 金融先物取引業者など |
第二種金融商品取引業 | 流動性の低い有価証券、ファンドの売買・募集を行う事業者 | ファンドの取引業者など |
投資助言・代理業 | 投資顧問契約、投資委任契約の締結の代理 または 媒介を行う事業者 | 投資顧問会社 投資アドバイザー コンサルタントなど |
投資運用業 | 投資者の財産で資産運用等を行う事業者 | 投資ファンド 投資信託委託会社など |
有価証券関連業 | 有価証券の発行・流通に関する事業を行う事業者 | 証券会社など |
2. 禁止行為
金商法では、下記の行為が禁止されています。
2-1. 無登録営業など
金融商品取引業を行うには、金融庁の登録を受ける必要があります(第29条)
この登録を受けず、金融商品取引業を行うことはキツく禁じられています。
登録のほか、各事業者には下記の手続が必要です。
金融商品取引業 | 登録 |
第一種金融商品取引業のPTS業務 | 認可 |
登録金融機関 | 登録 |
金融商品仲介業 | 登録 |
認可金融商品取引業協会 | 認可 |
認定金融商品取引業協会 | 認定 |
金融商品取引所 | 免許 |
自主規制法人 | 認可 |
金融商品取引清算機関 | 免許 |
証券金融会社 | 免許 |
必要な登録・認可等を受けず、規制対象となる取引業務を行った場合、処分の対象となります。
2-2. インサイダー取引
インサイダー取引とは、内部者が未公開情報を使い、外部に対して有利な取引を行うことを指します。
インサイダー取引を行うと、一部の投資家が損失を被り、利益を得る機会喪失へと繋がる可能性が高く、上場株式市場に大きな影響を与えるなど、市場全体の公平性が失われるリスクがあります。
そのほか、対象となる金融商品の価格を意図的に変動・固定させる「相場操縦」も禁じられています。
2-3. 損失補塡等
取引対象となる金融商品等の性質から、損失を出すリスクは常に付きまといます。
これに対し、金融商品取引業者が損失を補塡する行為、または 損失の補塡を約束する行為まで金処方で禁止されます。
2-4. 虚偽・不確実性事項等による勧誘
金融商品取引業者が勧誘を行う際、不確実な内容について断定的な判断を示したり、発生が確実であると誤解させる内容の告知は禁止されます。
また、勧誘を求めていない顧客に対し、訪問・電話等による勧誘行為を行うほか、断られた相手に執拗に勧誘行為を継続することも禁止されています。
2-5. 風説の流布等
有価証券の取引、デリバティブ取引に関し、相場を変動させる目的で風説を流布、偽計を用いる、暴行・脅迫をする行為は、金商法において「風説の流布等」として禁止されます(第158条)
インターネット上に根拠を提示せず、取引における重要事項等を投稿すると、「風説の流布等」に該当する可能性があります。
3. 金融商品取引業者の義務
金融商品取引業者には、下記の義務が課されます。
- 標識の掲示
- 広告規制
- 書面の交付
- その他
3-1. 標識の掲示
金融商品取引業者は、営業所や事務所の見やすい場所に標識を掲示する義務を負います(第36条の2、3)
金融商品取引業者以外の者は、標識または類似する標識を掲示する必要があります。
3-2. 広告規制
また、金融商品の販売・勧誘の目的で広告する際、商号・名称または氏名、金融商品取引業者である旨と登録番号など、顧客が取引相手を選ぶ際の判断基準に影響を及ぼすであろう事項はすべて記載する義務を負います(第37条第1項)
3-3. 書面の交付
金融商品取引業者は、契約の締結前、締結時にそれぞれ書面を交付する義務を負います(第37条の3、4)
この書面には、標識と同様の情報を記載する必要があります。
また、契約の内容に加え、顧客が支払うべき手数料・対価・相場等の変動による損失の発生可能性等を記載したうえ、顧客の知識・経験にあわせた説明責任を負います。
3-4. その他
金融商品取引業者には、金融商品取引に関する知識・経験が浅いことにつけ込んだ不当な勧誘、出資者の利益を損なう、または 利益を得る機会を失わせることのないよう営業を行う義務が課されます(第38条)
4. 上場会社の義務
上場会社には、下記の書類について開示義務が課されます(第4条、第5条、第13条、第15条、第24条、第24条の4の4、第24条の5第1項・4項、第24条の6、第24条の7)
- 有価証券届出書
- 目論見書
- 有価証券報告書
- 内部統制報告書
- 半期報告書
- 臨時報告書
- 自己株券買付状況報告書
- 親株決算
有価証券報告書等に記載する財務処方について、虚偽記載を行う「粉飾決算」に該当した場合には罰則対象となります(第24条の4)
金融商品取引法に違反した場合の罰則
金融商品取引法違反に該当した場合、「刑事罰」「業務改善命令等」「課徴金納付命令」の対象となります。
1. 刑事罰
刑事罰とは、刑罰法規 及び 刑事訴訟法に規定された禁止行為を行った場合、一定の手続を経て、違反者本人に科される罰則を指します。
金商法に規定された罰則は下記の通りです。
粉飾決算 (第197条第1項第1号) | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
無登録営業 (第197条の2 第10号の4) | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金 または併科 |
損失補塡 (第198条の3) | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金 または併科 |
広告規制違反 書面の交付義務違反 (第205条第10号、11号、12号) | 6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金 または併科 |
インサイダー取引等 (第197条の2第13号、14号、15号) | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金 または併科 |
相場操縦行為 風説の流布等 (第197条第1項、2項) | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 操縦語の相場における取引は、10年以下の懲役および3000万円以下の罰金 |
2. 業務改善命令等
金融商品取引法違反を犯した金融商品取引業者に対し、金融庁は、業務の改善に必要な措置を命じることができます(第51条)
違反の態様が悪質な場合には、業務停止命令・登録を取り消される可能性があります(第52条)
3. 課徴金納付命令
金融商品取引業者が開示すべき書類を提出しなかった場合や、虚偽記載、インサイダー取引等を行った場合、金融庁から課徴金の納付を命じられる可能性があります(第172条~)
課徴金の額は数億円から数百億円以上に及ぶ場合もある点に注意しましょう。
金融商品取引法の規制対象、罰則、注意点まとめ
当ページでは、金融商品取引法の規制対象、金融商品取引法に違反した場合の罰則と、取引時の注意点を解説しました。