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当ページでは、交通事故により交渉が残った場合の「後遺障害申請」の方法、手続の流れ、注意点を解説します。
Contents
交通事故の後遺障害とは
交通事故の後遺障害とは、交通事故による怪我について、十分な治療をしても完治せずに残った後遺症のうち、後遺障害等級の認定を受けたものを指します(自動車損害賠償保障法施行令 第2条第2項)
後遺症と後遺障害の違い
一般的な「後遺症」は、病気や怪我の治療後において、機能障害・神経症状が残った状態を指します。
後遺障害は、交通事故で受けた傷害について病院で治療を続けた結果、医師から「症状固定」の診断を受けた時点で判断されます。
「症状固定」とは、治療を継続しても症状の改善が見込めない状態を指します。
後遺障害認定された場合
交通事故による後遺症について、後遺障害認定を受けた場合、後遺障害慰謝料と遺失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害を負ったことに対する精神的苦痛への損害賠償としての性質を持ちます。
遺失利益とは、後遺障害により労働力が低下したことで失った将来の収入を指し、無職者でも請求できる場合があります。
後遺障害認定に必要な条件
後遺障害等級の認定を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。
- 症状と交通事故に関連性が認められる
- 症状の存在を医学的に証明できる
- 症状が一貫して継続している
- 治療を一定期間以上行っている
- 症状の程度が項障害等級に該当する
1. 症状と交通事故に関連性が認められる
後遺症について、交通事故と因果関係が認められなければなりません。
事故に遭う前からあらわれていた症状があると、交通事故との因果関係は認められず、認定を受けることはできません。
このため、交通事故直後に受診・検査を行い、これらの結果を記録してもらう必要があるほか、治療を中断せず、定期的に通院していることが求められます。
2. 症状の存在を医学的に証明できる
症状の有無・程度について、本人の訴えだけでは不十分です。
このため、レントゲン写真、MRI・CT検査等の画像データによって証明することになります。
ただし、これらでの証明が難しい場合、神経学的検査を行い、診断書等に記載してもらう方法で証明することになります。
神経学的検査とは、脳神経内科 または 外科医が行う中枢・末梢神経系、筋肉に関する異常を確認するものをいいます。
3. 症状が一貫して継続している
症状に一貫性がない場合、または 断続的にあらわれている場合、事故との因果関係を疑われる可能性があります。
具体的には、被害者が訴える症状が時間の経過により変化した場合や、天候により症状があらわれたり、あらわれなかったりする等がこれに該当します。
後遺障害申請を行う際は、自覚症状として、受傷当時から同じ症状を常に感じていることを訴える必要があります。
4. 治療を一定期間以上行っている
症状に関する治療期間が短い場合、治療の継続により完治する可能性や、症状の程度を疑われる可能性があります。
このため、適切な治療期間を経てもなお残る後遺症が対象となります。
ただし、適切な治療期間についての規定はないため、申請時期を主治医等と相談して判断することになります。
5. 症状の程度が後遺障害等級に該当する
後遺症の症状が一定以上であり、後遺障害等級に定められる内容に該当する必要があります。
後遺障害等級認定の方法と流れ
後遺障害等級認定手続は、下記に大別されます。
- 保険会社が手続する「事前認定」
- 被害者自身が手続する「被害者請求」
(1) 事前認定
事前認定では、加害者が加入する任意保険会社が手続を行います。
この場合、後遺障害診断書以外の書類を任意保険会社が用意し、審査期間に提出してもらうことになります。
- 病院で後遺障害診断書を受け取る
- 後遺障害診断書を加害者の任意保険会社に提出
- 任意保険会社が必要書類を揃え、審査期間に提出
- 審査が行われ、任意保険会社を介して結果が通知される
(2) 被害者請求
被害者請求では、加害者側の自賠責保険会社を経由して手続を行います。
必要書類はすべて被害者が用意しますが、自身のことなので柔軟な対応が可能なうえ、早期に支払を受けられるメリットがあります。
- 必要書類を用意し、加害者側の自賠責保険会社に提出
- 加害者側の自賠責保険会社から審査機関に書類送付
- 加害者側の自賠責保険会社を介し結果が通知されると同時に、後遺障害慰謝料・遺失利益の一部が支払われる
後遺障害認定は「被害者請求」がオススメ
事前認定、被害者請求、いずれの方法で申請するか悩んだ場合、多くの専門家は「被害者請求」を推奨します。
筆者も「被害者請求」をオススメします。
事前認定の場合、自分で書類を用意する必要がないため、手続上のメリットは感じられるでしょう。
しかし、申請者の関与できる範囲が限局的であり、後遺障害認定審査への対策が不十分なまま申請となる場合があります。
その結果、適切な認定が受けられず、異議申立による再審査を行う等、余計な手間が生じる可能性があります。
異議申立による再審査も事前認定で行うことが可能ですが、この場合、初回と同じような書類しか提出されず、思うような結果に至らない可能性が高いため、結局は被害者申請に切り替える…という事例もあります。
後遺障害認定を受けるための注意点
後遺障害認定を受けるには、下記に注意しましょう。
- 継続して通院し、治療を受ける
- 症状固定時期は医師に判断してもらう
- 後遺障害診断書の作成を任せきりにしない
- 困ったら早めに専門家を頼る
1. 継続して通院し、治療を受ける
後遺障害認定を受けるには、定期的な通院・治療・検査を受けることが大前提です。
交通事故直後、入院が不要な場合や、短期間の入院で退院できる程度の怪我であっても、後に症状が悪化する場合や、認定申請時に交通事故との因果関係を証明するため、経過を示す必要があります。
通院の頻度は多ければいいというものではなく、症状により適切な期間が異なります。
また、整骨院に通う場合でも病院には定期的に通い、検査を受けましょう。
整骨院では後遺障害診断書を作成することができませんし、必要な検査を行うことも難しいためです。
2. 症状固定時期は医師に判断してもらう
症状固定時期について、加害者側の保険会社から意見される場合があります。
全ての事例でそうとは言い切れませんが、早期の症状固定による支払額の軽減を目的としている場合もあります。
治療期間が短い場合、認定審査において「治療の必要がなかった」と判断されると、認定されない可能性があります。
このため、症状固定時期については医師に判断してもらいましょう。
主治医が思うように対応してくれない場合、行政書士 または 弁護士に立ち会ってもらうことも可能ですし、弁護士に依頼すると保険会社との交渉まで任せることができます。
3. 後遺障害診断書の作成を任せきりにしない
後遺障害診断書を作成してもらう場合、医師に任せきりにするのは危険です。
医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定審査についての知識は決して豊富とはいえません。
このため、自覚症状はすべて正確に伝え、必要に応じて適切に検査を行い、場合により診断書の内容を修正・追記してもらう必要がある点に注意しましょう。
3-1. 記載内容の希望はNG
後遺障害診断書を作成するのは、あくまでも医師です。
このため、患者側から記載内容を希望するのは不適切だといえます。
ただし、自覚症状は全て、正確に伝えましょう。
例えば、腕が上がらない場合、「腕が上がらない」のみではなく、「腕を上げる際、○度が限界」と角度を数値で示し、どのような動作で、どの部位に、どのような痛みが生じるのか、具体的に伝えます。
後遺障害認定のために行われる審査は、すべて書面によります。
このため、事情を全く知らない人が見てもわかる程度の具体性をもった記載が必要となることを理解し、自覚症状を適切に伝えることも必要です。
4. 早めに専門家を頼る
交通事故による後遺症について、後遺障害認定を受ける場合、早めに専門家を頼るのもオススメです。
交通事故は、人生で何度も経験するものではなく、補償内容や申請手続等の制度について理解している被害者は少数です。
自身の後遺症が後遺障害認定の対象になるのか、認定申請時にとれる対策やポイント、認定結果・賠償金額の妥当性など、後遺障害認定から賠償を受けるまで判断の連続です。
この点、交通事故に関する業務を専門に行う行政書士・弁護士等の手を借りることで、必要書類の取得・作成だけでなく、主治医との面談や事前対策、認定結果に不服がある場合の対処まで、徹底的にサポートを受けることができます。
交通事故による後遺障害申請の手続、認定を受けるための注意点 まとめ
当ページでは、交通事故による後遺障害申請の手続、認定を受けるために注意すべき点を解説しました。