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当ページでは、不当利得返還請求ができる場面と流れ、時効等の注意点を解説します。
Contents
不当利得返還請求とは
不当利得返還請求とは、法律上受け取る権利がないにもかかわらず、他人の財産、または 労務により利益を受け、他人に損失を及ぼした場合において、相手方に利益の返還を請求できる制度を指します(民法 第703条)
不動利得返還請求の要件
下記の要件を満たした場合、不当利得返還請求ができます。
- 他人の財産 または 労務により利益を得たこと
- 他人に損失を及ぼしたこと
- 利益と損失との間に因果関係があること
- 相手方が得た利益について、法律上の権利(原因)がないこと
1. 他人の財産 または 労務により利益を得たこと
不当利得返還請求を検討する場合、財産を無断で売却し、または 使い込んだ本人が、これらの行為で利益を受けていることが必要です。
例えば、被相続人(死亡人)名義の財産を自己名義に変更し、自分のために消費した場合には不当利得に該当します。
他の相続人にとって利益になる行為に使用した場合、行為者自身が利益を得ているとの判断は厳しくなります。
2. 他人に損失を及ぼしたこと
不当利得返還請求を行う場合、自身に損失が生じていることが求められます。
自分が受け取るはずだった遺産を勝手に売却された場合や、遺産分割の住んでいない預貯金を消費したような場合は「損失」として認められます。
損失は、具体的な数字で示す必要があるため、客観的な証拠が不可欠となります。
3. 利益と損失との間に因果関係があること
不当利得返還請求を行うには、行為者が受けた利益と、自身が被った損失との間に因果関係が必要となります。
因果関係について、自身が損失を被った原因が行為者の不当利得によること(反対に言えば、相手が利益を受ける反面、こちらに損失が生じたこと)を証明することになります。
4. 相手方が得た利益について、法律上の権利(原因)がないこと
不当利得返還請求を行うには、行為者が利益を得る原因について、法律に基づくものでないことが必要です。
例えば、被相続人の財産が無断で売却されたり、使い込まれた際に得た利益について、法律上の権利の有無を確認します。
売却・使い込みが、遺贈や死因贈与によって得たものである場合、当該要件は満たさないことになります。
不当利得返還請求ができる場合
具体的には、下記のような場合に不当利得返還請求が可能です。
- 相続人による遺産の使い込み
- 他人名義の財産を無断で売却
- 借金の過払い金 など
1. 相続人による遺産の使い込み
被相続人の遺産について、遺産分割協議が調っていないにもかかわらず、他の相続人が無断で消費(使用を含む)している場合には、不当利得返還請求が認められる可能性があります。
2. 他人名義の財産を無断で売却
他人名義の財産を、無断で売却した場合には不当利得返還請求が認められる可能性があります。
ここでいう財産は、不動産・自動車・貴金属類にかかわらず、他人の所有物は包括的に含まれると考えられています(ただし、立証の難易はあります)
3. 借金の過払い金
士業事務所等が広告宣伝している「過払い金請求」も、不当利得返還請求の一種です。
利息制限法の上限を超えた利率で課された利息の返還は、本来、法律上の権利をもたない不当利得に該当するため、不当利得返還請求が認められる場合があります。
不当利得返還請求の流れ
不当利得返還請求は、下記の流れで行います。
- 不当利得の証拠集め
- 請求
- 場合により訴訟の提起
1. 不当利得の証拠集め
不当利得の返還請求を検討する場合、事例に応じた証拠を集めましょう。
財産の種類 | 証拠となりそうな資料等 |
---|---|
預貯金 | 預金通帳、取引履歴、解約請求書の控え |
不動産 | 売買契約書、登記事項証明書 |
株式などの有価証券 | 取引残高報告書(証明書)、取引明細書 |
生命保険 | 契約内容の変更通知、解約通知 |
賃貸物件の賃料 | 領収書、払込証明書等 |
これらの証拠を基に、不当利得として請求する金額を算出します。
請求額は、客観的な証拠から算出する必要があり、「これくらいかな」というあやふやな算定は根拠として認められない点に注意が必要です。
2. 請求
証拠書類を準備し、請求額を算出したら、行為者に請求します。
法律上、請求方法に関する規定はないため、内容証明郵便を使用した請求が一般的です。
内容証明郵便とは、差出人・受取人のほか、郵便の内容・発信年月日等を郵便局が証明してくれるサービスで、時効の猶予が受けられます。
訴訟を提起する場合も、有効な証拠として扱われるため、普通郵便ではなく、内容証明郵便を活用しましょう。
3. 場合により訴訟の提起
相手方との話し合いで合意に至った場合、書類を作成することをオススメします。
強制執行認諾文言付公正証書を作成しておくと、相手方が合意内容を履行しない場合に、強制執行手続による実現が可能となります。
相続の場合、不当利得分が返還された段階で、遺産分割協議に移ります。
話し合いが調わない場合、民事訴訟を提起し、法定で争うことになります。
裁判手続は複雑、かつ 専門的な知識が求められるため、可能なら、弁護士への相談をオススメします。
不当利得返還請求を行う際の注意点
不当利得返還請求を行う場合、下記に注意しましょう。
- 時効期間内に手続をとる
- 立証が難しい場合がある
- 相続税の申告・納付期限
1. 時効期間内に手続をとる
不当利得返還請求について、下記の時効期間が設けられています(民法 第661条)
- 権利を行使できることを知った時から5年間
- 権利を行使できる時から10年間
(1) 権利を行使できることを知った時から5年間
権利を行使できることを知った時とは、行為者の不当利得に請求者が気づいた時を指します。
覚えのない通知を受け取ったときや、金融機関で記帳したときなどがこれに該当します。
(2) 権利を行使できる時から10年間
権利を行使できる時とは、行為者が不当利得を行った時を指します。
財産の無断売却なら売却成立時(売買契約の成立時)、預貯金の場合は出金時がこれに該当します。
(3) 詐欺・錯誤に該当する場合
遺産分割完了後に使い込みが判明した場合には、詐欺・錯誤による遺産分割の取消しが可能な場合があります。
しかし、これらの権利も下記の時効期間が設定されています(民法 第724条)
- 損害および加害者を知った時から5年間
- 不法行為の時から20年間
いずれの時効も、相手への催告(内容証明郵便の送付)、訴訟の提起等により完成を阻むことができるため、気づいたら早めに対処しましょう。
2. 立証が難しい場合がある
不当利得返還請求を行うには、証拠を集め、相手の不当利得を立証する必要があります。
要件のうち、「相手方が得た利益について、法律上の権利(原因)がないこと」に対し、「名義人から代理権を付与された」「自身の財産だと認識していた」等の主張がなされることがあり、これらを覆せるかどうかが請求の可否を握ります。
立証すべき事由が行為者の「主観」という目に見えないものである以上、客観的な事実と証拠を愚直に重ねることになります。
3. 相続税の申告・納付期限
対象が相続財産の場合、不当利得返還請求により、不当利得が返還されなければ遺産分割協議を行うことができません。
相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内で、基礎控除額を上回る遺産がある場合には、法定相続分における暫定的な申告を行うことをオススメします。
この場合、きちんと遺産分割協議が調い、各相続人の納付額が確定してから更正手続をとることになります。
不当利得返還請求の流れ、注意点 まとめ
当ページでは、不当利得返還請求の流れと注意点を解説しました。