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当ページでは、生活保護の受給要件、保護の種類と内容、注意点を解説します。
Contents
生活保護とは
生活保護とは、資産・能力等をすべて活用してもなお生活に困窮する人に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を促す制度をいいます。
支給される保護費は、地域・世帯状況等により異なりますが、制度の大枠は全国共通です。
生活保護の受給要件
生活保護を受けるには、下記の要件を満たす必要があります(生活保護法 第4条第1項、第2項)
- 生活に困窮する者が
- 利用しうる資産、能力その他あらゆるものを
- 最低限度の生活の維持のために活用すること
- 民法その他の法律で定められる扶助等を優先する
これらの判断は、「世帯単位」で行われる点に注意しましょう。
1. 生活に困窮する者
生活保護の受給要件のうち、最重視されるのは「最低生活費の有無」です。
最低生活費とは、居住地域、家族構成、障害の有無等を考慮して算出される金額を指し、各自治体により具体的な金額が定められています。
2. 利用しうる資産、能力その他あらゆるもの
利用しうる資産とは、生活保護申請者に係る資産全てを指します。
労働による給料・賃金のほか、自家用車、不動産、預貯金、相続財産、年金、公的保険・任意保険金(解約返戻金等)等まで含まれます。
能力とは、労働の可否を指し、可能な限り労働により生活を営むことを推奨しています。
3. 最低限度の生活の維持のために活用すること
最低限度の生活とは、世帯収入が最低生活費以下であることを指します。
このため、生活保護の受給者は、最低生活費から収入額を引いた差額分が支給されます。
4. 民法その他の法律で定められる扶助等を優先
原則、生活保護制度は、民法に定められる扶助義務、公的融資制度・公的扶助等を受けられない人でなければ受給が認められません。
具体的には、下記の制度が挙げられます。
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金
- 求職者支援資金融資
- 失業給付(雇用保険)
- 生活福祉資金貸付
- 住居確保給付金
- 休業補償 など
上記のほか、親族から経済的支援を受けられる場合には、生活保護の受給ができません。
例えば、シングルマザーの場合には、母子寡婦福祉資金の利用をすすめられるようです。いずれの場合も、児童扶養手当等の手当金と併給が可能です。
生活保護の支給額
生活保護の支給額は、厚生労働大臣が定める基準にて計算される「最低生活費」と、申請者の収入を比較した場合、収入が最低生活費に満たなければ「最低生活費-収入額」による差額分が支給されます。
厚生労働省が公表する生活扶助基準額の例が下表の通りです(令和5年10月1日時点)
東京都区部等 | 地方郡部等 | |
---|---|---|
3人世帯(33歳、29歳、4歳) | 164,860円 | 145,870円 |
高齢者単身世帯(68歳) | 77,980円 | 68,450円 |
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) | 122,460円 | 108,720円 |
母子世帯(30歳、4歳、2歳) | 196,220円 | 174,800円 |
生活保護の種類・内容
生活保護による受けられる保護の種類と内容は、下表の通りです。
生活扶助 | 日常生活に必要な費用 (食費、被服費、光熱費等) |
住宅扶助 | アパート等の家賃 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 |
介護扶助 | 介護サービスの費用 |
出産扶助 | 出産にかかる費用 |
失業扶助 | 就労に必要な技能の習得等にかかる費用 |
葬祭扶助 | 葬祭にかかる費用 |
生活保護を受ける場合、医療扶助により、生活保護法医療券 または 調剤券にて、医療機関等を受診することになります。
医療費は現金ではなく、医療機関に直接治療費等を払込んでもらえるので、受給者が負担する必要はありません。
生活保護 申請の流れ
生活保護の受給申請は、下記の流れで行います。
1. 事前相談
生活保護の受給希望者は、住所地を管轄する福祉事務所の生活保護担当者に対し、事前相談を行いましょう。
ここでは、生活保護制度の説明のほか、生活福祉資金、生活保護以外の社会保障施策等の活用を検討することになります。
福祉事務所を設置していない市区町村にお住まいの場合、住所地を管轄する市区町村役所において申請手続をすることも可能です。
2. 保護申請
生活保護の申請をします。
2-1. 申請に必要な書類
生活保護の申請にあたり、下記の書類を福祉事務所に提出する必要があります(生活保護法 第24条各項)
- 申請者の氏名 及び 住所 又は 居所
- 申請者が要保護者と異なる場合、申請者の氏名 及び 住所 又は 居所 並びに 要保護者との関係
- 保護を受けようとする理由
- 要保護者の資産 及び 収入の状況(生業 若しくは 就労 又は 求職活動の状況、扶養義務者の扶養状況 及び 他の法律に定める扶助の状況を含む)
- その他 要保護者の保護の要否、種類、程度 及び 方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
ただし、上記の書類を添付することができない特別な事情があるときは、代替措置が認められる場合もありますので、福祉事務所担当者までご相談ください。
2-2. 調査内容
生活保護の申請をした場合、下記の調査が実施されます。
- 生活状況等を把握するための実地調査
- 預貯金、保険、不動産等の財産調査
- 扶養義務者による不要の可否についての調査
- 年金等 社会保障給付、就労収入等の調査
- 就労可能性の調査 など
3. 保護費の支給
調査のうえ、生活保護の必要があると認められた場合には、毎月、生活保護費が支給されます。
生活保護の受給中は、福祉事務所からケースワーカーが訪問調査を実施するほか、毎月の収支状況を申告する必要があります。
生活保護費の支給日は自治体により異なりますが、毎月5日のところが多いようです。
3-1. 審査期間
生活保護の申請から、受給の可否がわかるまで、原則、14日以内に回答があります。
ただし、調査に日時を要する特別な理由がある場合には最長30日まで延びる可能性があります。
申請から生活保護の受給開始までの生活費がない場合、社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金貸付」制度が利用できる場合もあります。
資産の所有が認められる場合
生活保護法による保護について、世帯単位で行われ、世帯員全員が 現金、預貯金、土地・建物等の不動産、その他あらゆる資産を生活維持のために活用することが求められます(生活保護法 第10条、第4条各項)
このことから、不動産(持ち家等)、自家用車等を売却してもなお生活資金が不足することが求められると考えられます。
逆に言えば、これらの資産を持っている人は需給対象外となる可能性が高いといえます。
(1) 不動産の所有が認められる場合
ただし、やむを得ない事由がある場合や、市場における換価価値が著しく低い場合には、所有が認められる場合もあります。
具体的には、申請者が障害を抱え、住居を移転することで病状が悪化することが考えられる場合や、売却しようにも買い手がつかない土地等が該当します。
住宅ローン等の残債務のある不動産を所湯している場合、ローンを理由に生活保護の需給ができないことはありませんが、保護費でローンを返済することはできません。
このため、売却をすすめられるケースがほとんどですが、賃貸物件に移転するより負担が少ない場合には、認められる可能性があります。
(2) 自動車の所有が認められる場合
自動車は資産となるため、原則、処分することになります。
ただし、受給者が障害をもっている場合の通勤・通院等に必要な場合等には、必要に応じ、認められる可能性があるため、福祉事務所までご相談ください。
年金受給者が生活保護を受けられる可能性
原則、年金の受給者は、生活保護の対象外ですが、年金制度による支給額が著しく低く、最低生活費を下回る場合には、生活保護と併給できる可能性があります。
ただし、勤労が可能な場合や、親族からの援助が期待できる場合には対象外となります。
住所不定でも生活保護を申請できる
家賃を支払う余裕がなく、住所が確定していない場合でも、居所を管轄する福祉事務所に対し、生活保護の申請を行うことができます。
連絡手段の有無、各自治体により対応は異なりますが、他の申請者と同様に調査が行われます。
同居の両親のみ生活保護を申請したい
介護を目的に両親と同居する場合、両親のみが生活保護を受給が認められる可能性があります。
生活保護制度では、原則、世帯単位で保護を決定・実施するものですが、各家庭の事情により認められる場合もあるため、まずは福祉事務所にご相談ください。
生活保護を申請する際の注意点
生活保護を申請する場合、下記に注意しましょう。
- 原則、クレジットカード等の申込NG
- 生命保険・医療保険に加入できない
- 債務の返済に生活保護費はあてられない
1. 原則、クレジットカード等の申込NG
生活保護を受給する場合、原則、ローンやクレジットカード等の申込ができません。
そもそもですが、返済能力がある人は、生活保護の受給対象外となりますし、カード会社・金融機関等から断られる場合がほとんどです。
これらは法律に定められているものではありませんが、嘘をついて契約し、お金を借りられたとしても、生活保護の受給打切り等のリスクがついて回ります。
2. 生命保険・医療保険に加入できない
生活保護を受給している間は、一定要件を満たした場合を除き、任意保険に加入することはできません。
- 掛け捨て保険で、保障の目的が生命・身体
- 保険料が最低生活費の1割程度
生活保護では、貯蓄性のあるものは認められないため、上記のような要件が課されます。
3. 債務の返済に生活保護費はあてられない
既に、消費者金融等からお金を借りている場合でも、生活保護の対象となります。
しかし、生活保護の受給を返済にあてることは認められません。
生活保護の不正受給に対する罰則
下記に該当する場合、生活保護の不正受給となり、罰則の対象となる可能性があります。
収入を偽って申告した | 生活保護の支給に係る収入以上に収入を得ているにもかかわらず、低い金額で申告した場合 |
所有する資産の全部 または 一部を申告しなかった | 自身が所有する資産の全部 または 一部を隠蔽した場合 |
世帯員の構成に変更が生じたにもかかわらず、申告をしなかった | 世帯員の構成に変化があった場合、保護費に変動が生じる可能性があるにもかかわらず、申告しなかった場合 |
上記に該当する場合、原則、生活保護費 全額の返還義務を負います。
最悪の場合、徴収額に4割を加算した金額が徴収される可能性があります。
刑罰の対象になる可能性
生活保護の不正受給に関し、悪質性が高いと認められる場合には、刑罰の対象となる可能性があります。
この場合、3年以下の懲役 または 100万円以下の罰金に処される可能性があります(生活保護法 第85条各項)
悪質かどうかの判断について、福祉事務所のケースワーカーにより判断されることになりますが、どうしても刑事告訴を免れたい場合には、弁護士に相談する方法も考えられます。
詐欺罪が成立する場合、10年以下の懲役となる可能性があります(刑法 第246条第1項)
生活保護の受給要件、保護の内容、注意点まとめ
当ページでは、生活保護の受給要件と、保護の種類・内容、注意点を解説しました。