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当ページでは、酒類販売業免許のうち、「通信販売酒類小売業免許」取得の要件と注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
通信販売酒類小売業免許とは
酒類を販売するには、酒税法に基づく「酒類販売業免許」を取得しなければなりません。
酒類販売業免許は、販売先、販売方法、販売品目により区分され、通信販売にて酒類を販売するには「通信販売酒類小売業免許」を受ける必要があります。
通信販売とは
通信販売酒類小売業免許の「通信販売」とは、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格、その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話、その他の通信手段により売買契約の申込みを受け、当該提示した条件に従って販売することを指します(出典:通信販売酒類小売業免許の手引)
通信販売酒類小売業に該当しない場合、一般酒類小売業免許を取得することになります。
下記に該当する場合、通信販売酒類小売業免許ではなく、一般酒類小売業免許を検討しましょう。
- 店頭において、酒類の売買契約の申込みを受ける場合
- 店頭において、酒類を引き渡す場合
- 同一都道府県の消費者等のみを対象に小売する場合
- 県をまたがる電話・インターネット等による受注販売でも、一般的に自己の販売場の近隣エリアである場合
通信販売酒類小売業免許の要件
酒類販売業免許の申請において、酒税法に規定される免許要件を満たすほか、「人」「場所」「経営基礎」「需要調整」に関する要件を備えることが求められます。
1.人
通信販売酒類小売業免許申請において、申請者は下記を満たす必要があります(酒税法 第10条1号から8号)
- 酒類の製造免許、酒類の販売業免許、アルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがないこと
- 酒類の製造免許、酒類の販売業免許、アルコール事業法の許可の取消処分を受けたことがある法人で、その取消原因があった日以前 1年以内に、当法人で業務執行役員だった場合、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
- 申請前2年内において、国税・地方税の滞納処分を受けたことがないこと
- 国税・地方税に関するe-Gov法令検索等に違反し、罰金刑に処され 又は 通告処分を受けたことがある場合、それぞれ、その刑の執行を終わり、執行を受けることがなくなった日、その通告内容を履行した日から3年を経過していること
- 未成年者飲酒禁止法、風俗営業等の規制 及び 業務の適正化等に関する法律(未成年者に対する酒類の提供に係る部分に限る)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合 及び 結集、強迫 又は 背任の罪)、暴行行為等処罰に関する法律の規定による罰金刑に処された者である場合、その執行を終わり、執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
- 禁錮以上の刑に処され、その執行を終わった日、執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること
2.場所
通信販売酒類小売業免許を取得するには、正当な理由なく、取締り上 不適当と認められる場所に販売場を設けないことが必要です(酒税法 第10条9号)
具体的には、申請販売場について
(1) 製造免許を受けている酒類の製造場
(2) 販売業免許を受けている酒類の販売場
(3) 酒場 または 料理店
等と同じ場所でないことが求められます。
3.経営基礎
通信販売酒類小売業免許の申請者が、下記に該当しないことが必要です(酒税法 第10条10号)
- 破産者で復権を得ていない場合
- 現に、国税・地方税を滞納している場合
- 申請前 1年以内に、銀行取引停止処分を受けている場合
- 最終事業年度において確定した決算に基づく貸借対照表の「繰越損失」が資本金の額を上回っている場合
- 酒税に関係のある法律に違反し、通告処分を受け、履行していない場合 または 告発されている場合
- 申請する販売場の設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律、その他の法令 又は 地方自治体の条例の規定に違反し、店舗の除去・移転を命じられている場合
- 申請割ける意小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかだと見込まれる場合
上記に加え、下記を満たす必要があります。
- 経験 その他から判断し、適正に酒類の通信販売を行うために十分な知識、経営能力、販売能力があると認められる者 又は これらの者が主体的に組織する法人であること
- 酒類の通信販売を行うための所要資金等があり、販売方法が特定商取引に関する法律の消費者保護規定に準拠し、「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」を満たし、又は、この定めを満たすことが確実だと見込まれること
- 酒類の購入申込者が未成年でないことを確認できる手段を講ずるものと認められること
4.需要調整
通信販売酒類小売業免許の申請では、酒税の保全上、酒類の需給の均衡維持のため、販売できる酒類が限定されています(酒税法 第10条11号)
- 国内酒類
- 輸入酒類
(1)国産酒類の販売
国産酒類のうち、「年間の課税移出数量が品目ごとに、すべて3000KL未満」の酒類製造者が製造する酒類は、通信販売が認められます。
逆に言えば、国内大手の酒造メーカー(年間 課税移出数量3000KL以上)が製造する酒類は、通信販売による販売が認められません。
国内酒類の販売を予定している場合、販売予定の酒類製造者が発行する証明書(課税移出数量証明書)を申請書に添付する必要があります。
また、通信販売酒類小売業免許では、地方の特産品等を原料に、特定製造者以外の製造者(国内大手の酒造メーカー)に製造を委託する場合、当該酒類の一会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が3000KL未満に限って、通信販売することができます。
例えば、大手メーカーに対し、自身が栽培した青果等を原料とした酒類の製造を、上限内で依頼する場合がこれに該当します。
(2)輸入酒類の販売
通信販売酒類小売業免許で販売できる輸入酒類とは、海外の酒造メーカーが製造するお酒を指します。
洋酒でも日本の酒造が製造した酒類は、輸入酒類には該当しない点に注意しましょう。
通信販売酒類小売業の通信販売資料
通信販売酒類小売業免許の申請時、通信販売の方法を確認できる資料を添付する必要があります。
この際、下記に注意しましょう。
1.特定商取引法に基づく表記
酒類に限らず、商品等の通信販売を行う場合、特定商取引に関する法律の規定(特に第11条)、特定商取引に関する法律施行規則の規定(第8条、第9条)を遵守する必要があります。
2.20歳未満飲酒防止に関する表示
未成年者の飲酒防止に関する法律により、下記の規定を遵守する必要があります(未成年者の飲酒防止に関する法律 第1条、第2条)
- 未成年者に対して親権を行う者 若しくは 親権者に代わって子を監督する者が未成年者の飲酒を知ったときは制止しなければならない
- その業態上 酒類を販売・供与する場合、未成年者が飲むことを知りながら、酒類の販売 又は 供与をしてはならない
- その業態上 酒類を販売・供与する場合、未成年者の飲酒の防止に資する為、年齢の確認 その他の必要な措置を講じなければならない
- 未成年者が飲む目的で、所有 又は 所持する酒類について、行政の処分をもって没収 又は 廃棄 その他の必要な処置をしなければならない
3.通信販売資料
通信販売を行う際に用いる資料には、1 及び 2に関する記載が必要です。
4.購入者の年齢確認
通信販売酒類小売業を行う場合、注文確認画面に生年月日の入力欄を設けたうえ、同一ページに「20歳未満の飲酒防止に関する事項」を表記しましょう。
ネット販売の場合、チェックボックスの設置がオススメです。
また、注文を受け付けた際の自動送信メールには、下記の事項を記載する必要があります。
- 申込の承諾
- 事業者の住所、氏名(名称)、電話番号
- 責任者氏名
- 商品代金(受領金額)
- 支配時期・方法(受領の年月日)
- 商品名・注文個数
- 商品の引渡し時期
- 販売条件(20歳未満の者に販売しない旨)
上記のほか、納品時に発行する納品書にも「年齢確認の表示」が必要です。
登録免許税の金額
通信販売酒類小売業免許の登録免許税は、免許1件につき30,000円です。
通信販売酒類小売業免許の要件、注意点 まとめ
当ページでは、酒類販売業免許の要件と注意点を解説しました。