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当ページでは、1度 成立した遺産分割協議をやり直せる場合と、注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
遺産分割協議のやり直し
遺産分割協議とは、被相続人の財産について、誰が、何を、どのくらい相続するかの話し合いを指します。
遺産分割協議がまとまると、遺産分割協議書という文書を作成し、相続人全員が署名押印することで法的な効力を発揮します。
遺産分割協議をやり直せる場合
原則、成立した遺産分割のやり直しは認められませんが、下記に該当する場合、やり直しが認められる可能性があります。
1.解除
相続人全員が遺産分割のやり直しに合意した場合、遺産分割をやり直す事ができます。
2.取消し
遺産分割に係る意思表示について、詐欺・錯誤・強迫のいずれかがあった場合、当該相続人は、意思表示を取り消すことができます(民法 第95条、96条)
詐欺 | 相続財産について、他の相続人から虚偽の情報提供があったため、評価額の低い財産のみを相続した場合 など |
錯誤 | 遺産分割協議後、協議時に示された相続財産の他に、他の相続人・第三者が隠していた相続財産が発覚した場合 など |
強迫 | 他の相続人・第三者に脅され、または、騙されて遺産分割協議の内容に合意した場合 など |
上記に該当する場合の取消しについて、5年間の時効期間が定められている点には注意が必要です。
3.無効
3-1.制限行為能力者が参加していた場合
遺産分割協議に参加した相続人が下記の「制限行為能力者」に該当する場合、遺産分割に関する意思表示を取り消すことができます。
未成年者 | 法定代理人・特別代理人の選任が必要 |
被成年後見人 | 成年後見人が遺産分割虚偽に参加 |
被保佐人 | 被保佐人の意思表示につき、保佐人の同意が必要 |
被補助人 | 同意権が付与されている場合、被補助人の意思表示に補助人の同意が必要 |
制限行為能力者の後見人等が利益相反関係となる場合、家庭裁判所に対し、特別代理人等の選任を申立てる必要がありますが、これらの選任がなく代理権等を行使した場合、遺産分割は無効となります。
3-2.相続人等の一部が参加していなかった場合
遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要があります(民法 第907条第1項)
このため、相続人 または 包括受遺者(包括遺贈を受ける人)が参加していない場合、遺産分割協議は無効となり、相続人等が全員参加のうえ、改めて行う必要があります。
遺産分割協議をやり直せない場合
遺産分割協議をやり直せる要件に該当する場合でも、家庭裁判所における遺産分割調停 または 審判による遺産分割については、やり直すことができません。
遺産分割審判に対する不服は、審判後、2週間以内に「即時抗告」を行うことで示します。
ただし、審判時に含まれなかった相続財産については、その財産を対象とした協議を行うことはできます。
遺産分割協議をやり直せる期限
遺産分割協議をやり直す場合、やり直し自体の期限は法律に定められていません。
しかし、詐欺・強迫・錯誤による取消権を行使するには、時効期間(5年)または除斥期間(20年)の期限が設けられている点に注意しましょう。
遺産分割協議をやり直す際の注意点
遺産分割協議をやり直す場合、下記に注意しましょう。
新たに贈与税・所得税が課税される
遺産分割協議のやり直しに伴う遺産の移転は、相続税ではなく、贈与 または 譲渡と評価されます。
当初の遺産分割協議で課税された相続税は維持されるため、いわゆる二重課税の状態が生じる可能性がある点に注意しましょう。
ただし、無効・取消しとなった遺産分割協議の場合、通常と同じ扱いがされ、相続税の課税対象となります。
無効・取消し前に相続税の申告・納税が済んでいる場合、修正申告や更正手続が必要となるため、税務署 または 税理士までご相談ください。
完全にやり直せるわけではない
遺産分割協議において相続した財産について、既に相続人から第三者に移転している場合、遺産分割協議のやり直しを理由に取り戻すことはできません。
一定要件に該当する場合には、取り戻すことができる可能性もあるため、相続問題に強い弁護士への相談をオススメします。
遺産分割協議をやり直せる場合、注意点まとめ
当ページでは、遺産分割協議をやり直せる場合と注意点を解説しました。