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財産開示手続の流れ、注意点を解説

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当ページでは、財産開示手続の流れと注意点を解説します。

筆者プロフィール

榊原 沙奈さかきばら さな(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。

財産開示手続とは

財産開示手続とは、債権者が債務者の財産情報を取得するための手続で、債権者がもつ権利の実効性確保の目的でとられるものです。

具体的には、債務者が財産開示期日に裁判所に出頭し、自分の財産状況を陳述します。

端的にいうと、「強制執行」の前段階です。

財産開示手続に関する罰則

財産開示手続において、出頭、陳述等を拒否した場合、虚偽の陳述をした場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金にしょされる可能性があります。

罰金は処罰に該当し、刑事手続きの対象となります。

相手が応じなかった場合

債務者本人が開示請求に応じない場合、債務者以外の第三者から情報を取得することができます。

財産情報の種類取得先
預貯金銀行等の金融機関
株式、社債等銀行、証券会社
不動産
(土地、建物等)
法務局
(登記所)
給与情報
(勤務先)
市区町村、日本年金機構等

勤務先情報について開示請求を行えるのは、養育費の支払い、生命・身体への侵害に関する損害賠償に関する債権者に限られます。

財産開示手続の流れ

  1. 申立要件の確認
  2. 申立書類の作成
  3. 申立て
  4. 財産開示期日
  5. 財産開示期日後

1.申立要件の確認

財産開示請求の申立てができるのは、(1)執行力のある債務名義の正本をもつ債権者、(2)一般の先取特権がある債権者に限られ、条件ごとに満たすべき要件が異なります。

  1. 執行力のある債務名義の正本をもつ債権者
  2. 一般の先取特権がある債権者
  3. 1、2に共通する要件

債務名義とは

債務名義とは、下記に該当するものをいいます。

  • 判決、仮執行宣言付判決
  • 仮執行宣言付支払督促(執行文不要)
  • 公正証書
  • 手形判決
  • 少額訴訟判決
  • 家事審判(執行文不要)
  • 和解調書
  • 民事調停調書
  • 家事調停調書(原則、執行文不要/例外として、承継および条件成就の場合は必要)
  • 訴訟費用額確定処分

1-1.執行力のある債務名義の正本をもつ債権者

執行力のある債務名義(正本)をもつ債権者は、下記の要件を満たす必要があります。

  1. 執行力のある債務名義(正本)をもつ金銭債権の債権者であること
  2. 執行開始要件を備えていること
    (a)債務者に債務名義の正本または謄本が送達されていること
    (b)条件成就執行文または承継執行文が付与された場合、これらの謄本および証明文書の謄本が送達されていること
    (c)請求が確定期限の到来に係る場合、その期限が到来していることなど
  3. 強制執行を開始できない場合に該当しないこと

強制執行を開始できない場合

債務者について、破産手続き開始決定、会社更生手続き開始決定、民事再生手続き開始決定、特別清算手続き開始決定が出ている場合、破産債権等に基づく強制執行を開始できないため、財産開示手続を行うことができません。

1-2.一般の先取特権がある債権者

一般の先取特権をもつ債権者は、下記を満たす必要があります。

  1. 債務者の財産について、一般の先取特権をもつ債権者であること
  2. 一般の先取特権を実行できない場合に該当しないこと

一般の先取特権を実行できない場合

一般の先取特権を実行できない場合とは、被担保債権の履行期が到来している場合をいいます。

債務者について、破産手続き、会社更生手続き、民事再生手続き等の開始決定により、裁判所から一般の先取特権の実行中止または取消しを命じられている場合、破産債権等の担保となっている財産に関し、手続きを行うことはできないため、財産開示手続を行うことができません。

1-3.共通要件

「執行力のある債務名義の正本をもつ債権者」「一般の先取特権をもつ債権者」いずれの場合も、下記を満たす必要があります。

  1. 次の(a)または(b)に該当することを主張、立証する必要があります。
    (a)強制執行または担保権の実行における配当等の手続きにおいて、申立人が金銭債権の完全な弁済を受けることができなかったこと
    (b)知っている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該債権の完全な弁済は受けられないこと
  2. 債務者が申立ての日前3年以内に、財産開示期日において財産を開示した者でないこと

(a)強制思考または担保権の実行における配当等の手続きにおいて、申立人が金銭債権の完全な弁済を受けることができなかったこと

6か月以内に実施された動産、不動産、債券に対する強制執行、または、担保権実行における配当、弁済金の交付において、申立人が完全な弁済を受けることができなかったことを主張する必要があります。

具体的には、下記の書類を提出します。

  • 配当表または弁済金交付計算書
  • 開始決定正本の写しまたは差押命令正本の写し
  • 配当期日呼出状の写しなど

(b)知っている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該債権の完全な弁済を受けられないこと

申立人が、債権者として行うべき調査を行った結果、わかった財産の範囲、これらの財産に対する強制執行を実施しても、請求債権の完全な弁済を受けられないことを具体的に主張し、財産調査結果報告書に資料を添付して提出します。

財産概要
不動産居住地、所在地(本店、支店)等の不動産を調査したものの、これを所有していない、あるいは、所有していても無剰余であること
債権法人個人共通:預貯金口座を調査したが不明、または、残額では完全な弁済は受けられないこと
法人、個人事業者:営業内容から予想される債権を調査したが、完全な弁済を受けられる財産が判明しなかった
個人:勤務先を調査したが不明、あるいは、給料等のみでは完全な弁済は受けられないこと
動産、その他不明、あるいは、無価値であること

債務者が申立ての日前3年以内に財産開示期日において財産を開示した者でないこと

申立ての段階において、当該主張立証は不要です。

ただし、過去3年以内に前文の財産を開示したことが実施決定前に明らかになった場合、申立人は、一部の財産非開示、新たな財産の取得または雇用関係の終了を立証する必要があります。

立証できなければ、申立は却下となります。

2.申立書類の作成

申立てに必要な書類は下記のとおりです。

2-1.執行力のある債務名義の正本をもつ債権者

  • 財産開示手続申立書(頭書)
  • 当事者目録
  • 請求債権目録
  • 財産調査結果報告書
  • 債務名義等還付申請書

2-2.一般の先取特権をもつ債権者

  • 財産開示手続申立書(頭書)
  • 当事者目録
  • 担保権・被担保債権・請求債権目録
  • 財産調査結果報告書

2-3.財産開示期日が実施されたことの証明申請書

債務者に対し、3年以内に財産開示期日が実施されたことを証明する必要がある場合、証明申請書が必要です。

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3.申立

必要書類がすべてそろったら、裁判所に申立てを行います。

申立先は、債務者の普通裁判籍(住所地)の所在地を管轄する地方裁判所です。

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3-1.申立手数料

申立手数料は、2,000円です。

同一の債権者が複数の債務名義に基づいて申立てをする場合、1個の申立てとして扱われます。

ただし、同一の債務名義に複数の債務者が記載されている場合、債務者ごとに別事件として申し立てる必要な点には注意しましょう。

3-2.予納金等

予納金納付に必要な保管金提出書の送付のため、下記の郵便切手、封筒の提出が必要です。

  • 郵便切手94円分(84円1枚、10円1枚)
  • 申立人宛ての住所等を記載した封筒1枚(長形3号)

上記金額、切手の組み合わせ等は、裁判所により異なる場合があるため、申立先の地方裁判所まで確認しましょう。

4.財産開示期日

財産開示期日の約10日前に、債務者が財産目録を提出します。

これに対し、あらかじめ債権者が提出した質問書に基づき、裁判所が債務者に質問を行います。

裁判所による質疑応答を経て、申立人または代理人により質問を行います。

5.財産開示期日後

財産開示期日後、開示手続により開示された財産を閲覧することができます。

この情報を基に、申立人は強制執行手続きを行うことになります。

万が一、債務者が出頭せず、または、虚偽の陳述を行った場合、告発・告訴を検討しましょう。

財産開示手続の流れ、注意点まとめ

当ページでは、財産開示手続の流れと注意点を解説しました。

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