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相続財産清算人は、故人の遺産に関する重要な役割を果たす人物です。相続人がいない場合や相続放棄が行われた場合などに、相続財産を適切に管理し、清算するために選任されます。
この記事では、相続財産清算人とはどのような存在で、どのようなケースでその選任が必要となるのか、そして申立て手続きの流れや必要書類について詳しく解説します。
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相続財産清算人とは
相続財産清算人とは、故人の債権者に対し、故人が返済すべきだった債務等を生産し、残った財産を適切に処理する役割を担う人のことをいいます。相続財産清算人が選任されるのは、相続人がいない場合や、その存在がはっきりしない場合、相続人はいるものの全員が相続放棄した場合が考えられます。
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相続財産清算人が必要なケース
以下に該当する場合、相続財産清算人の選任申立てが必要です。
- 故人の債権者が債権を回収したいとき
- 故人の相続人が全員相続放棄したいとき
- 特別縁故者が相続財産を受け取りたいとき
1.故人の債権者が債権を回収したいとき
故人の債権者が債権を回収する際、相続人がいらっしゃる場合には相続人に請求することができます。しかし、相続人がいらっしゃらない場合、請求相手がおらず取り付く島もない状況となります。
こうした事態を回避するため、債権者から相続財産清算人の選任を申立てる必要があります。
2.故人の相続人が全員相続放棄したいとき
故人の遺産について相続放棄をした場合、相続放棄前に占有していた相続財産については、代わりに管理をする人が決まるまで、引き続きその相続人が管理の責任を負うことになります。しかし、処分が難しい財産を管理し続けるのは困難であり、特に一部の相続人に過度な負担がかかる恐れがあります。
そのため、相続財産の管理や処分に関する権限を持つ相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てるのが一般的です。
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3.特別縁故者が相続財産を受け取りたいとき
特別縁故者とは、故人に相続人がいない場合や相続人が相続放棄した場合、故人との間に特別な関係があり、遺産を受け取ることができる人のことをいいます。特別縁故者として認められるには、故人との間に特別な縁があることを示さなければなりません。たとえば、長期にわたって故人を支援したり、法律上婚姻や養子縁組はしていないものの、事実上の夫婦関係や養子関係にあった人などが考えられます。
特別縁故者が遺産を受け取るには、相続財産清算人の選任を申立て、相続財産清算人が行う相続人調査の後、家庭裁判所に特別縁故者として相続財産分与の審判を申立てなければなりません。
相続財産清算人の選任申立て要件
相続財産清算人を申立てるには、以下の要件をクリアしなければなりません。
- 利害関係人であること
- 遺産があること
- 相続人の有無が明らかでないこと
1.利害関係人であること
相続財産清算人を選任し、遺産の管理、清算を任せるには、法律上の利害関係がなければなりません。具体的には、故人の債権者や、遺産に含まれる不動産の共有者等が該当います。
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2.遺産があること
相続財産清算人の選任は、遺産の適切な管理、清算のためです。そのため、対象となる遺産が存在しなければ、選任する必要がありません。
3.相続人の有無が明らかでないこと
相続人や受遺者がいらっしゃる場合、原則、この方たちに遺産の管理義務が生じますので、相続財産清算人の選任は不要です。また、故人が遺言書を作成し、その中で遺言執行者を指名している場合にも、相続財産清算人の選任は不要だと考えられます。
相続財産清算人の選任申立ての概要、必要な書類
相続財産清算人の選任申立てついて、以下の手続きが必要です。
1.申立人
相続財産清算人の選任を申立てられるのは、故人の債権者、特定遺贈を受けた方、特別縁故者などの利害関係人のほか、検察官です。
2.申立先
相続財産清算人の選任について、申立先となるのは故人の最後の住所地の家庭裁判所となります。
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3.申立てに必要な費用
申立てに際し、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手、官報公告料5,075円が必要です。
ただし、連絡用の郵便切手の金額、組み合わせについては、申立先となる家庭裁判所により異なるほか、官報公告料は家庭裁判所の指示があってから納めることになります。そのため、事前に確認しておくと安心です。
上記のほか、遺産が少なく、相続財産清算人への報酬が支払えない可能性が高い場合、申立人が報酬相当額を「予納金」として納める必要があります。予納金の要否や金額については、個々の事案ごとに異なりますので、申立先となる家庭裁判所に問い合わせましょう。
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4.申立てに必要な書類
申立てには、以下の書類が必要です。
申立書 | 申立書(書式および記載例) |
標準的な添付書類 | 故人の出生から死亡するまでのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
故人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 | |
故人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合 | その子(及びその代襲者)の出生時から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
故人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 | |
故人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合 | その兄弟姉妹の出生時から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合 | そのおい、またはめいの死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
故人の住民票除票、または戸籍附票 | |
財産を証する資料 (不動産登記事項証明書、預貯金および有価証券の残高が分かる書類等) | |
利害関係人からの申立ての場合 | 利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書等) |
相続財産清算人の候補者がある場合 | その住民票、または戸籍附票 |
5.相続財産清算人に必要な資格
相続財産清算人の候補者について、特別な資格は必要ありません。しかし、故人との関係や利害関係の有無などを考慮し、相続財産を生産するのに最も適任と認められる人を家庭裁判所が選ぶこととなります。そのため、必ずしも候補者が選ばれるわけではなく、弁護士、司法書士等の専門職が選ばれる可能性もあります。
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相続財産清算人が選任された後の流れ
相続財産清算人が選任されると、以下の手続きが行われます。
- 相続人に対し、相続権主張の催告
- 相続債権者や受遺者に対し、請求申出の催告
- 相続債権者、受遺者への弁済
- 特別縁故者に対し、相続財産分与
- 共有持分の共有者がいる場合、帰属
- 国庫への帰属
1.相続人に対し、相続権主張の催告
相続財産清算人が選任された場合、家庭裁判所から相続人に対し、期間内に相続権を主張するよう6か月間の公告が行われます。この公告により相続人が現れた場合、相続人が財産を相続し、相続財産清算人の任務は終了となります。
2.相続債権者や受遺者に対し、請求申出の催告
1.と同時に、相続財産清算人は、故人の債権者と受遺者に対し、請求を申し出るよう2か月以上の期間を定めて公告します。故人の債権者や受遺者がいる場合、この期間内に申し出なければなりません。
3.相続債権者、受遺者への弁済
相続債権者や受遺者の公告終了時において、相続財産清算人は、遺産から債権者、受遺者の順に弁済します。この段階で遺産が尽きた場合には、ここで手続き終了となります。
4.特別縁故者に対し、相続財産分与
催告に対し、相続人が現れなかった場合、家庭裁判所は特別縁故者に対し、残りの遺産を与えられるようになります。そのため、相続権主張の催告に関する公告終了から3か月以内に、特別縁故者は「相続財産分与」の審判を申立てなければなりません。
5.共有持分の共有者がいる場合、帰属
遺産に不動産などの共有持ち分が含まれる場合、その持ち分は共有者のものとなります。
6.国庫への帰属
ここまでの手続きを経て残った遺産がある場合、国庫に帰属します。
おわりに
相続財産清算人の選任は、相続人がいない場合や相続放棄が行われた際に、遺産を適切に処理するために重要な役割を果たします。相続財産の管理や処分を円滑に進めるためには、正確な手続きと必要書類の提出が欠かせません。必要な場合は、家庭裁判所に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。