本記事では建設業のうち、「清掃施設工事業」の許可を取得した事業者様に向け、工事内容、許可を取るために満たすべき要件と資格、申請手続きについて解説します。
Contents
「清掃施設工事業」とは
清掃施設工事業の許可を取得するには、対象となる建設工事がし尿処理施設又はゴミ処理施設を設置する工事に該当しなければなりません。具体例は、以下の通りです。
- ごみ処理施設工事
- し尿処理施設工事
公害防止施設を単体で設置する工事の場合、この「清掃施設工事」ではなく、公害防止施設ごとに区分されます。たとえば、排水処理施設は「管工事」、集塵設備は「機械器具設備工事」になります。
👉規模を問わず、浄化槽によりし尿を処理する施設の建設工事は「管工事」
👉公共団体が設置するもので、下水道により収集された汚水を処理する施設の建設工事は「水道施設工事」
公共団体が設置するもののうち、汲み取り方式で収集されたし尿を処理する施設の建設工事は、「清掃施設工事」に該当します。
「清掃施設工事業」許可を取るために満たすべき6つの要件
建設業のうち、「清掃施設工事業」許可を取得するには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 経営能力があること
- 専任技術者を設置すること
- 財産的基礎があること
- 必要な社会保険に加入している
- 請負契約に関して誠実性があること
- 欠格要件等に該当しないこと
1.経営能力があること
「清掃施設工事業」許可を取得するには、法人の場合、常勤役員のうち1人以上、個人の場合は事業主本人について、建設業を営む会社の役員、または個人事業主としての5年以上の経験が求められます。
2.専任技術者を設置すること
「清掃施設工事業」許可を取得するには、営業所ごとに常勤の専任技術者を設置していることが求められます。ただし、誰でも専任技術者になれるわけではなく、申請する建設業許可の区分に応じ、満たすべき要件が異なる点に注意が必要です。
一般建設業許可の場合
一般建設業許可「清掃施設工事業」の専任技術者になれるのは、以下のいずれかに該当する人です。
- 「清掃施設工事業」の専任技術者となり得る資格を持っている
- 以下のいずれかに該当する場合
(a)大学の指定学科を卒業+「清掃施設工事業」に関する3年以上の実務経験がある
(b)高校の指定学科を卒業+「清掃施設工事業」に関する5年以上の実務経験がある - 「清掃施設工事業」に関する10年以上の実務経験がある
1.「清掃施設工事業」の専任技術者となり得る資格を持っている
清掃施設工事業の専任技術者となり得る資格とは、以下の資格等をいいます。
資格区分 | 資格 |
---|---|
技術士試験 | 衛生工学「廃棄物・資源循環」 または 「汚物処理」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物・資源循環」) |
衛生工学「廃棄物管理」 または 「汚物処理」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物管理」) |
2.以下のいずれかに該当する場合
(a)大学の指定学科を卒業+「清掃施設工事業」に関する3年以上の実務経験がある
(b)高校の指定学科を卒業+「清掃施設工事業」に関する5年以上の実務経験がある
この要件を満たすことを証明するため、以下の書類を提出する必要があります。
建設業許可 | 必要な書類 | |
---|---|---|
「清掃施設工事業」の事業者について | あり | ①卒業証書 ②厚生年金被保険者記録照会回答票 ③建設業許可通知書の写し 等 |
なし | ①卒業証書 ②厚生年金被保険者記録照会回答票 ③工事請負契約書または注文書 ④③に対応する請求書 ⑤③に対応する通帳 等 |
3.「清掃施設工事」に関する10年以上の実務経験がある
この要件を満たすことを証明するため、以下の書類を提出する必要があります。
建設業許可 | 必要な書類 | |
---|---|---|
「清掃施設工事業」の事業者について | あり | ①厚生年金被保険者記録照会回答票 ②建設業許可通知書の写し 等 |
なし | ①厚生年金被保険者記録照会回答票 ②工事請負契約書または注文書 ③②に対応する請求書 ④②に対応する通帳 等 |
特定建設業許可の場合
特定建設業許可の場合、次のいずれかに該当する人は「清掃施設工事業」の専任技術者となることができます。
- 「清掃施設工事業」の専任技術者(特定建設業)となり得る資格を持っている
- 一般建設業の専任技術者の要件を満たしていること+元請として4,500万円以上の「清掃施設工事業」について、2年以上指導管理的な実務経験がある
1.「清掃施設工事業」の専任技術者(特定建設業)となり得る資格を持っている
特定建設業「清掃施設工事業」の専任技術者となり得る資格とは、以下を指します。
資格区分 | 資格 |
---|---|
技術士試験 | 衛生工学「廃棄物・資源循環」 または 「汚物処理」・総合技術監理 (衛生工学「廃棄物・資源循環」) |
衛生工学「廃棄物管理」 または 「汚物処理」・総合技術監理(衛生工学「廃棄物管理」) |
2.一般建設業の専任技術者の要件を満たしていること+元請として4,500万円以上の「清掃施設工事」について、2年以上指導監督的な実務経験がある
この要件を満たしていることを証明するには、以下の書類を提出します。
- 一般建設業の専任技術者要件を満たすことを証明する書類
- 指揮監督的な実務経験があることを証明する書類
👉厚生年金被保険者記録照会回答票
👉建設業許可通知書の写し 等
3,財産的基礎があること
財産的基礎について、申請する建設業許可の区分により内容が異なります。
一般建設業許可の場合
一般建設業許可を申請する場合、申請時において、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達力があること
1.自己資本の額が500万円以上であること
「自己資本」とは、法人の場合、貸借対照表の「純資産合計の額」、個人の場合、貸借対照表における「期首資本+事業主借+事業主利益ー事業主貸+引当金+準備金」の額をいいます。
2.500万円以上の資金調達力があること
500万円以上の資金調達力を証明するため、取引先金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書を提出する必要があります。
特定建設業許可の場合
特定建設業許可を申請する場合、申請時において、以下のすべてを満たす必要があります。
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
- 流動比率が75%以上であること
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
1.資本金の額が2,000万円以上であること
資本金とは、法人の場合、貸借対照表における「資本金の額」をいいます。一方、個人の場合、貸借対照表における「期首資本」をいいます。
2.自己資本の額が4,000万円以上であること
自己資本とは、法人の場合、貸借対照表における「純資産合計の額」、個人の場合、貸借対照表における「期首資本+事業主借+事業主利益ー事業主貸+引当金+準備金」の合計額をいいます。
3.流動比率が75%以上であること
流動比率は、「流動資産合計÷流動負債合計×100」にて算出します。ただし、貸借対照表における「流動資産合計」が「流動負債合計」より多い場合には計算する必要はありません。
4.欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
欠損の額が資本金の20%を超えていないかどうかの確認は、以下の方法で算出します。
法人 | 資本金に対する欠損の額の割合(%) =(マイナスの繰越利益剰余金ー(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金))÷資本金×100 |
個人 | 期首資本金に対する欠損の額の割合(%) =(事業主損失+事業主借ー事業主貸)÷期首資本金×100 |
ただし、貸借対照表における「繰越利益剰余金」がプラスの場合や、「資本剰余金(資本剰余金合計)、利益準備金及びその他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計額」が「繰越利益剰余金のマイナスの額」を上回る場合、計算する必要はありません。
4.必要な社会保険に加入している
建設業許可「清掃施設工事業」を申請するには、適用除外になる場合を除き、必要な社会保険への加入が求められます。
【関連記事】建設業許可の要件「社会保険の加入」について
健康保険・厚生年金保険
法人の場合、従業員の数にかかわらず、加入する必要があります。個人の場合、常勤の従業員が5人以上いる場合に限り、加入が必要です。
雇用保険
法人・個人にかかわらず、以下に該当する労働者が1人以上いる場合、雇用保険への加入手続きが必要です。ただし、法人の役員や個人事業主が加入することはできません。
- 引続き31日以上の雇用が見込まれる
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
5.請負契約に関して誠実性があること
建設業許可「清掃施設工事業」の申請にあたり、法人の場合はその法人、役員等、支店、または営業所の代表者、個人の場合は本人、または支配人等に対し、請負契約に関して不正、または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。
不正な行為とは
不正な行為とは、請負契約の締結、または履行に際し、詐欺・脅迫・横領等法律に違反する行為が該当します。
不誠実な行為とは
不誠実な行為とは、工事内容・工期等について、請負契約に違反する行為が該当します。
6.欠格要件に該当しないこと
欠格要件とは、以下のようなものをいいます。
- 許可申請書、またはその添付書類の中の重要な事項について虚偽の記載がある、または重要な事実の記載が欠けているとき
- 法人の場合はその法人、役員等、法定代理人、支店、または営業所の代表者、個人の場合は本人、または支配人等が以下の要件に該当するとき
ア.精神の機能の障害により建設業を適正に営むことができない人、または破産者で復権を得ない人
イ.建設業許可を取り消されてから5年を経過しない人
ウ.許可の取り消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない人
エ.建設工事を適正に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大きいとき
オ.営業停止を命じられ、その停止期間が経過しない人
カ.禁固以上の刑(禁固、懲役、死刑)に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない人
キ.一定の法律に違反し、または罪を犯したことにより罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない人
ク.暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない人
ケ.暴力団員等がその事業活動を支配する人
「清掃施設工事業」の建設業許可の申請手続き
「清掃施設工事業」の許可申請は、以下の流れで行います。
- 申請先となる都道府県より「建設業許可申請の手引き」、「建設業許可申請の様式一覧」を受け取る
👉申請先ホームページからダウンロードする、または窓口にて購入できます - 添付書類を収集する
- 申請書類を作成する
- 申請
👉申請書の正・副本、添付書類、申請手数料を持参、または郵送にて提出 - 建設業許可の取得
👉許可が下りると、事業所宛に「建設業許可通知書」が郵送されます
申請窓口
申請者の営業所が1つの都道府県内にのみ設置されている場合には「都道府県知事」、営業所が2つ以上の都道府県に設置されている場合は「国土交通大臣」宛に申請を行います。
都道府県知事の場合
都道府県 | 担当窓口 | 都道府県 | 担当窓口 |
---|---|---|---|
北海道 | 建設部建設政策局 建設管理課 | 滋賀県 | 土木交通部 管理課 |
青森県 | 県土整備部 管理課 | 京都府 | 建設交通部 指導検査課 |
岩手県 | 県土整備部 建設技術振興課 | 大阪府 | 住宅まちづくり部 建築振興課 |
宮城県 | 土木部事業管理課 | 兵庫県 | 県土整備部 県土企画局 総務課 建設業室 |
秋田県 | 建設部 建設政策課 | 奈良県 | 県土マネジメント部 建設業・契約管理課 |
山形県 | 県土整備部 建設企画課 | 和歌山県 | 県土警備部 県土整備政策局 技術調査課 |
福島県 | 土木部 技術監理課 建設産業室 | 鳥取県 | 県土整備部 県土総務課 |
茨城県 | 土木部 監理課 | 島根県 | 土木部 土木総務課 建設産業対策室 |
栃木県 | 県土整備部 監理課 | 岡山県 | 土木部 監理課 建設業班 |
群馬県 | 県土整備部 建設企画課 | 広島県 | 土木建築局 建設産業課 建設業グループ |
埼玉県 | 県土整備部 建設管理課 | 山口県 | 土木建築部 監理課 建設業班 |
千葉県 | 県土整備部 建設・不動産産業課 建設業班 | 徳島県 | 県土整備部 建設管理課 |
東京都 | 都市整備局 市街地建築部 建設業課 | 香川県 | 土木部 土木監理課 契約・建設業グループ |
神奈川県 | 県土整備局 事業管理部 建設業課 | 愛媛県 | 土木部 土木管理局 土木管理課 |
新潟県 | 土木部 監理課 建設業室 | 高知県 | 土木部 土木政策課 |
山梨県 | 県土整備部 県土整備総務課 建設業対策室 | 福岡県 | 建築都市部 建築指導課 |
長野県 | 建設部 建設政策課 建設業係 | 佐賀県 | 県土整備部 建設・技術課 |
富山県 | 土木部 建設技術企画課 | 長崎県 | 土木部 監理課 |
石川県 | 土木部 監理課 建設業振興グループ | 熊本県 | 土木部 監理課 |
岐阜県 | 県土整備部 秘術検査課 | 大分県 | 土木建築部 土木建築企画課 |
静岡県 | 交通基盤部 建設業課 | 宮崎県 | 県土整備部 管理課 |
愛知県 | 都市整備局 都市基盤部 都市総務課 | 鹿児島県 | 土木部 監理課 |
三重県 | 県土整備部 建設業課 | 沖縄県 | 土木建築部 技術・建設業課 |
福井県 | 土木部土木管理課 | ー |
国土交通大臣の場合
地方整備局名 | 担当部・課など | 管轄区域 |
---|---|---|
北海道開発局 | 事業振興部 建設産業課 | 北海道 |
東北地方整備局 | 建政部 建設産業課 | 青森県、岩手県、宮城県 秋田県、山形県、福島県 |
関東地方整備局 | 建政部 建設産業第一課 | 茨城県、栃木県、群馬県 埼玉県、千葉県、東京都 神奈川県、山梨県、長野県 |
北陸地方整備局 | 建政部 計画・建設産業課 | 新潟県、富山県、石川県 |
中部地方整備局 | 建政部 建設産業課 | 岐阜県、静岡県 愛知県、三重県 |
近畿地方整備局 | 建政部 建設産業第一課 | 福井県、滋賀県、京都府 大阪府、兵庫県、奈良県 和歌山県 |
中国地上整備局 | 建政部 計画・建設産業課 | 鳥取県、島根県、岡山県 広島県、山口県 |
四国地方整備局 | 建政部 計画・建設産業課 | 徳島県、香川県 愛媛県、高知県 |
九州地方整備局 | 建政部 建設産業課 | 福岡県、佐賀県、長崎県 熊本県、大分県、宮崎県 鹿児島県 |
沖縄総合事務局 | 開発建設部 建設産業・地方整備局 | 沖縄県 |
申請費用
建設業許可申請では、以下の金額が必要です。
申請区分 | 知事許可 | 大臣許可 |
---|---|---|
新規 | 9万円 | 15万円 |
許可換え新規 | ||
一般・特定 新規 | ||
業種追加 | 5万円 | |
更新 |
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