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問題45
AがBに対して有する貸金債権の担保として、Bが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき抵当権が設定され、設定登記が経由された。当該貸金債権につきBが債務不履行に陥った後、甲が火災によって焼失し、Bの保険会社Cに対する火災保険金債権が発生した。Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使するためには、民法の規定および判例に照らし、どのような法的手段によって何をしなければ
ならないか。40 字程度で記述しなさい。
Contents
正解例:抵当権に基づく物上代位により、火災保険金の払渡し前に、債権を差押えをしなければならない。(44字)
問題文の状況
問題文の状況をまとめると、下記の通りです。
- AはBの退勤債権の担保として、甲建物に抵当権を設定(登記済)
- Bが債務不履行に陥った後、甲が火災により焼失
- Bが加入していた保険約款に基づき、Cに対する火災保険金債権が発生
要するに、火災により焼失した甲建物が火災保険金に代わったわけですね。
問われていること
問題文より、判例に基づき「Aが保険金に対し、優先弁済権を行使するために必要な法的手段」「具体的に何をするのか」を問われていることがわかります。
解説
この問題は、抵当権の物上代位に関するものです。
1.物上代位とは
物上代位とは、抵当権の目的物が売却、損傷、滅失などにより代替物(代償請求物)に変わった場合、抵当権者がその代替物に対し、優先弁済を受ける権利を行使することを指します(民法第372条、第304条)。
2.物上代位の要件
物上代位を行使するには、下記の要件を満たす必要があります。
(1)代位の対象
本件における物上代位の対象(代替物)とは、甲建物に代わる火災保険金を指します。
(2)第三者への払渡前の行使
火災保険金(代替物)が保険会社C(第三者)に払渡される前に物上代位を主張する必要があります。
(3)差押え手続
物上代位の行使には、払渡前に差押えをする必要があります(民法第304条ただし書き、判例の解釈)。
3.解答の内容
上記をまとめると、
- 抵当権を理由に物上代位を主張し、
- 火災保険金が保険金CからBまたは他の者に払渡される前に、
- 差押え手続を速やかに行う必要がある
となります。
判例では、差押えのタイミングを重要視しており、物上代位の成立には、払渡し前の確実な差押えが条件とされます。
したがって、解答の趣旨である「抵当権に基づく物上代位を行使するには、払渡し前に差押えが必要」という結論を導くことができます。