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問題39
役員等の責任に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
1 利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合には、株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず、株式会社と利益が相反する取引をした取締役または執行役は任務を怠ったものと推定する。
2 取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反して取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役または第三者が得た利益の額は、賠償責任を負う損害の額と推定する。
3 監査等委員会設置会社の取締役の利益相反取引により株式会社に損害が生じた場合において、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず、当該取締役が任務を怠ったものと推定されることはない。
4 非業務執行取締役等は、定款の定めに基づき、職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を株式会社と締結することができる。
5 自己のために株式会社と取引をした取締役または執行役は、任務を怠ったことが当該取締役または執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって損害賠償責任を免れることはできない。
正解:3
この問題は、会社法の条文知識だけを問うだけでなく、契約の適用範囲や上限額の計算方法などを理解しているかが試されます。
したがって、背景や目的も踏まえた理解が求められ、本試験の会社法の中ではややこしい出題だと感じる受験生もいたのではないでしょうか。
1:正しい
利益相反取引について、取締役又は執行役が行った利益相反行為により会社に損害が発生した場合、当該取引を行った取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定されます(会社法第423条第3項第1号)。
したがって、本肢は正しいです。
2:正しい
取締役または執行役が競業取引の制限に関する規定に違反した取引を行った場合、当該取引により取締役、執行役または第三者が得た利益の額は損害額と推定され、損害賠償責任を負います(会社法第423条第2項)。
したがって、本肢は正しいです。
3:誤り
株式会社において、取締役が監査等委員会の承認を受けて行った取引がある場合、当該取締役の利益相反により株式会社に損害が生じた場合、監査等委員会の承認を得たときは、当該取締役が監査等委員である場合を除き、当該取締役の任務懈怠とは推定されません(会社法第423条第4項)。
端的に言えば、監査等委員会の承認を受けてした取引で不正を行ったのだから、その取締役自身が監査等委員でない限り、利益相反取引を行った取締役だけが責任を問われることはないのです。
したがって、「当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず」任務懈怠を推定するとある本肢は誤りです。
4:正しい
非業務執行取締役等は、定款の定めに基づいて、善意かつ重過失がない状態で職務を行った場合、定款で定めた額の範囲内において、あらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額のうちいずれか高い額を限度として責任を負うとする契約を、株式会社と結ぶことが可能です(会社法第427条)。
要するに、役員が職務を行う際に生じる損害賠償責任の上限額をあらかじめ定めておく「責任限定契約」を指します。
したがって、本肢は正しいです。
5:正しい
直接、株式会社と私欲を肥やすために取引をした取締役等は、当該取締役または執行役の任務懈怠が原因でないことを証明した場合でも、これを理由に責任を免れることはできません(会社法第428条第1項)。
当然のことながら、役員が自分の利益を優先し、会社との取引を行うのは法律違反であり、損害が生じた場合には損害賠償責任を負います。
したがって、本肢は正しいです。