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問題8
行政行為の瑕疵に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。
イ 普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。
ウ 複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。
エ 行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。
オ 更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。
1 ア・イ
2 ア・エ
3 イ・オ
4 ウ・エ
5 ウ・オ
正解:3
ア:不適当
最高裁判例(最判昭和50年3月13日など)では、違法な行政行為であっても、別の行政行為としての要件を満たす場合、その行政行為を別の行為として扱うことができるとの姿勢を示しています。
これは、行政行為の法的安定性や実効性を確保するために認められる考え方です。
したがって、当設問は不適当です。
イ:妥当
最高裁判例(最判昭和55年9月4日)では、行政行為の効力について、原則、取消されるまでは有効としています。
そのため、前任の長の解職が取消されるまでの期間について、後任の長の行為は有効と考えられます。
したがって、当設問は妥当です。
ウ:不適当
先行行為の違法性は、後行行為の取消訴訟において主張可能です(最判昭和52年3月30日)。
段階的な行政行為において、後行行為は先行行為に基づいているため、後行行為の取消しには、先行行為の違法性を検討する必要があります。
そのため、後行行為について争う取消訴訟の場に、先行行為の違法性を持ち出すことは可能との姿勢を示したものです。
したがって、当設問は不適当です。
(補足1)出訴期間について
出訴期間は、先行行為に対する直接の取消訴訟を提起できる期間を制限するものですが、後行行為の取消訴訟において、間接的に先行行為の違法性を争うことは、出訴期間の趣旨に反するものではありません。
これは、段階的行政行為の一連性、法律関係の公平性と実質的正義を確保するために認めているものです。
段階的行政行為を例えるなら、都市計画事業の
先行行為:都市計画決定
後行行為:事業認可
が当てはまります。都市計画決定が違法だとして、その違法性を事業認可の取消訴訟でも争うことができます。
エ:不適当
職権取消しの場合、原則、遡及効が認められます。
つまり、行政行為自体が当初から無効だったとして扱われることになります。
ただし、遡及効を認めることで関係者に不当な損害が生じる場合、取消しの効力を将来的に限定することもあります。
したがって、当設問は不適当です。
オ:妥当
理由附記は、行政行為の適法性を認めるための要件であり、瑕疵がある場合、後に行われる裁決等でいくら理由を補足しても、瑕疵そのものが治癒するものではありません。
理由附記は、国民の権利保護を図るために設けられた要件であり、行政行為の透明性を確保するために不可欠だからです。
したがって、当設問は妥当です。