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当ページでは、不動産ADRの相談先と必要な手続、活用のメリットと注意点を解説します。
Contents
不動産ADRとは
不動産ADRとは、ADR(裁判外紛争解決手続)のうち、建築物等の不動産に関するトラブルに特化したADRを指します。
不動産関連のトラブルを解決するには、高い専門性が求められますが、一般的に、施主と施工業者との間には知識・交渉力等において大きな差がみられます。
そのため、当事者間の話し合いによる解決が困難となる可能性があります。
(1)ADR(裁判外紛争解決手続)とは
ADR(裁判外紛争解決手続)とは、裁判外で行われる紛争解決手続の総称で、紛争当事者のニーズに応じ、「和解」「調停」「仲裁」により解決が図られるのが一般的です。
和解 | 当事者双方が互いに譲歩し、紛争を解決させる |
調停 | 調停委員を介し、当事者の話し合いによる解決(合意)を目指す |
仲裁 | 仲裁人に紛争解決を委ね、仲裁人の判断に従う形で解決を図る |
(2)調停委員とは
調停委員とは、調停手続において中立的な立場から当事者の話し合いを支援する人を指します。
調停委員は裁判官が任命し、通常、その地域で尊敬を集める人や紛争内容に応じた専門家から選ばれます。
(3)ADR手続の一般的な流れ
ADR手続は、下記の流れに沿って進められます。
スタート
│
▼
ADR機関の選定
│
▼
申立書の提出・手数料の支払い
│
▼
手続き準備
(当事者通知・資料提出・日時調整)
│
▼
手続きの開始
(調停・仲裁の進行)
│
├─→ 合意形成 → 合意書作成 → 実行 → 手続き終了
│
└─→ 仲裁裁定 → 裁定の実行 → 手続き終了
│
└─→ 不成立 → 他の手続き(裁判等)へ
│
▼
アフターフォロー
(合意履行の確認)
└─→ 必要に応じて再交渉・裁判
不動産ADRを活用するメリット
不動産ADRを活用することで、下記のメリットが考えられます。
- 裁判に比べ短期間で解決できる
- 裁判より費用が抑えられる
- 不動産の専門家が対応してくれる
- プライバシーが保護される
- 解決に至らない場合も次の手段が確保されている
- 心理的負担を軽減できる
1.裁判に比べ短期間で解決できる
通常の裁判では、提起から判決に至るまで数ヶ月から数年を要することがありますが、不動産ADRの場合、早ければ数週間で解決に至る場合があります。
裁判は、訴状の提出から証拠の準備、口頭弁論、証人尋問、判決のプロセスを辿りますが、不動産ADRでは、より簡易な資料と口頭説明が中心となることが多く、準備にかかる時間と費用の短縮が期待できます。
裁判による判決は、裁判官が事実認定と法律の適用関係を慎重に検討する必要がある一方、仲裁の場合は、仲裁人が一定の審理後に最終的な判断を下すため、同等の法的拘束力がありながら、全体の手続短縮が期待されるのです。
2.裁判より費用が抑えられる
裁判には、訴訟費用の他に弁護士費用等がかかりますが、不動産ADRの手数料は比較的低く設定されています。
また、全体的な時間短縮により、トータルのコストも軽減することが可能です。
3.不動産の専門家が対応してくれる
不動産ADRでは、不動産取引に詳しい弁護士や不動産鑑定士が調停・仲裁に携わります。
そのため、専門的な知見を期待でき、複雑な内容にも対応可能です。
4.プライバシーが保護される
原則、裁判は公開の法廷で行われますが、ADR手続は非公開にて行われます。
特に、近隣や取引先とのトラブルの場合、その後の関係も考慮する必要があります。
5.解決に至らない場合も次の手段が確保されている
不動産ADRでは、合意に至らなかった場合、裁判に移行することができます。
その際、ADRにおける話し合いが裁判の参考資料として採用される場合があるため、かけるコストが無駄になることがありません。
6.心理的負担を軽減できる
厳格な手続と大きなストレスを伴う裁判手続に対し、不動産ADRの場合、よりリラックスした状態で話し合いを進めることが可能です。
これにより、当事者間の精神的な負担軽減が期待できます。
不動産ADRの活用を検討する際のポイント
不動産ADRを検討する際、下記のポイントを抑えましょう。
- 紛争の性質を確認する
- 解決の緊急性を検討する
- 費用対効果を考慮する
- 専門的な助言を求める
1.紛争の性質を確認する
不動産ADRは、話し合いや合意を前提に解決を目指す方法であり、当事者間における一定の子ミュウにケーションや歩み寄りの余地がある場合に適しているといえます。
2.解決の緊急性を検討する
紛争に時間的な制約がある場合、時間がかかる裁判よりも不動産ADRの方が早期解決を期待できます。
3.費用対効果を考慮する
高額な資産や契約が絡む場合、不動産ADRの手続費用以上のメリットを得られる可能性がありますが、かける費用に比し、目的額が低い場合にはあまりメリットを感じられない可能性があります。
4.専門的な助言を求める
紛争の原因が複雑な場合、不動産に詳しい弁護士や不動産鑑定士等の意見を求め、不動産ADRの適否を検討する方法もあります。
不動産ADRの実施機関は複数存在し、それぞれ特徴が異なるため、自身に合った機関を選定する助けになるでしょう。
不動産ADRの活用事例
下記の場合、不動産ADRの活用が適している可能性があります。
- 不動産売買契約に関するトラブル
- 賃貸借契約に関するトラブル
- 近隣トラブル
- 相続や共有不動産の分割に関するトラブル
1.不動産売買契約に関するトラブル
不動産売買契約では、契約内容や履行状況がトラブルに発展するケースがみられます。
これらを裁判で解決するとなると、証拠収集や手続に時間がかかり、解決までに長期間を要するのが一般的です。
一方、不動産ADRは裁判より短期間での解決が期待されます。
裁判の長期化は当事者間の対立を深刻化させ、修復困難になる可能性がありますが、ADRは当事者間の関係を維持しながら解決策を見つけることができるため、その後も良好な関係を保てる可能性があります。
2.賃貸借契約に関するトラブル
賃貸借契約において、家賃の未払、契約の解約に関する問題や、退去時の敷金返還トラブルが相次いでいます。
これらの問題を裁判で解決するには時間がかかり、滞納期間が更に延びる可能性があります。
この点、不動産ADRを活用することで、短期間での解決が期待できるため、損害拡大の抑止に有効だと考えられます。
3.近隣トラブル
近隣トラブルには、騒音や悪臭、境界線の問題、駐車場の無断利用のほか、ペットに関する問題といった日常に関わるものが多く見られます。
一見小さな問題ですが、長期化すると互いの関係は悪化し、解決に膨大な時間を要するリスクがあります。
こうしたトラブルの解決に不動産ADRを活用すると、当事者間の合意に基づく解決策を選択できるため、金銭による賠償だけでなく、具体的な行動を解決策として選ぶことも可能です。
これにより、近隣住民との良好な関係を維持・構築することが期待されます。
4.相続や共有不動産の分割に関するトラブル
相続や共有不動産に関するトラブルでは、感情的な対立が多く見られ、家族間の関係悪化が一般的です。
裁判の場合、物理的な分割や金銭的な配分に限られる場合が多い一方、不動産ADRでは、当事者間における具体的で柔軟な解決策を提示することも可能です。
いずれもプライバシーに配慮しつつ、迅速な解決が期待できる点がメリットだといえます。
不動産ADR活用時の注意点
不動産ADRを活用する際、下記に注意しましょう。
- 法的拘束力を確認する
- 当事者間の合意が必要である
- 情報開示が必要
- 長期化のリスクがある
- 冷静に対応する
- 裁判との違いを理解する
- 仲裁と調停の違いを理解する
- 相手方の資力と実行力を確認する
1.法的拘束力を確認する
不動産ADRを活用する場合、その結果に法的拘束力が伴わないケースがあります。
例えば、調停案が合意に至らない場合などがこれに該当するため、強制力のある解決策を検討する場合、裁判所の手続への移行を検討しましょう。
2.当事者間の合意が必要である
不動産ADRでは、紛争当事者双方の合意が前提となり、どちらか一方が非協力的な場合は手続が滞るリスクがあります。
相手方の話し合いに応じる意向を確認し、検討することをオススメします。
3.情報開示が必要
問題解決には、紛争当事者双方が必要な情報を正確に提供しなければなりません。
開示する情報に不備や誤り、隠ぺいがあった場合、当事者間での信頼が損なわれ、解決までの時間が大幅に延びる可能性があります。
不動産ADRにおける隠ぺいや情報の誤りに直接的な罰則はないものの、誠実で正確な情報提供を怠った場合、最終的には自分の不利益に繋がる可能性が高いので注意しましょう。
4.長期化のリスクがある
不動産ADRは、原則、迅速な解決を目指す手続ですが、相手方の対応が遅れるとそのぶん手続が長期化するリスクがある点に注意しましょう。
不動産ADRが長期化する場合、まずは遅延の理由を把握し、調停人や仲裁人の力を借り、迅速な対応を促すことをオススメします。
それでも進展がない場合、手続の終了や裁判への移行を検討するなど、柔軟に次の手を講じましょう。
全ての論点について合意が難しい場合、一部の争点を切り離し、可能な部分だけ先に進める方法もあるため、何がベストな選択か、専門家の手を借りると良いでしょう。
5.冷静に対応する
不動産トラブルには、感情的な対立が絡むことも多いです。
調停や仲裁には、中立的な立場の第三者が介入することから、冷静な手続が促されるものの、当事者自身も事前に感情面の整理を行っておくとより良い結論を導きやすくなるでしょう。
6.裁判との違いを理解する
裁判は終局的な結論を白黒はっきり示す形式ですが、不動産ADRの場合は、柔軟な解決策が求められます。
そのため、必ずしも勝敗を決するものでなく、あくまで当事者間の妥協点を探る手続であることに注意が必要です。
比較項目 | 裁判 | 不動産ADR |
---|---|---|
目的 | 法的な判決に基づく紛争解決 | 紛争の円満解決 合意形成 |
第三者の役割 | 裁判官による判決 | 調停人・仲介人による提案 |
手続の柔軟性 | 低い | 高い |
法的拘束力 | あり | 一部なし 調停調書、仲裁にはある |
費用・期間 | 高額 | 比較的低額 |
公開性 | 公開 | 非公開 |
関係維持 | 判決後、悪化しがち | 合意形成に至れば、保てる |
上訴の可否 | 可 | 不可 |
7.仲裁と調停の違いを理解する
調停では、紛争当事者の合意形成を目指しますが、仲裁の場合、最終的な判断を下すのは仲裁人または仲裁廷です。
調停 | 仲裁 | |
---|---|---|
目的 | 合意形成の支援 | 紛争の最終判断 |
第三者の役割 | 助言や提案を行うが、解決策に拘束力はない | 最終判断を下し、法的拘束力がある |
当事者の義務 | 当事者の合意による | 仲裁人の判断に従う |
法的拘束力 | 合意成立後の調停調書にのみ法廷拘束力がある | 仲裁判断そのものに法廷拘束力あり |
費用・期間 | 比較的低コストで短期間 | 調停より費用がかかり、長期化する場合がある |
調停は当事者間の合意を前提に進める手続であり、柔軟性と迅速性をもちますが、仲裁は法的拘束両区をもつ判断を仲裁人または仲裁廷が下し、紛争の確実な解決が見込める反面、柔軟とは言い難いのです。
8.相手方の資力と実行力を確認する
解決策を提示する前に、相手方の実行力を検討する必要があります。
相手方の資力や実行力は、手続の効果を大きく左右するため、確認は慎重に行い、問題がある場合は履行を担保する現実な合意条件の提案が求められます。
どうしても解決が見込めない場合、不動産ADRを中止し、裁判や他の解決方法を検討することで不利益の最小化を目指すことになります。
不動産ADRの相談先
不動産ADRを検討する際、下記にて専門的なサポートを受けることができます。
不動産ADRの相談先と必要な手続、メリットと注意点まとめ
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