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当ページでは、家族信託を自分で行う場合の手続と、注意点を解説します。
Contents
家族信託は自分でできる
家族信託は、自分で行うことができます。
家族信託を自分で行うメリット
家族信託を自分で行うメリットは、下記の通りです。
- コストの削減
- 柔軟な運用
- 家族間の信頼を深められる
- 財産管理に関する理解が深まる
- 秘密が守られる
1.コストの削減
弁護士や司法書士に依頼した場合、報酬を支払う必要があります。
この点、自分で行うことでこれらの費用を節約することができます。
2.柔軟な運用
家族信託について、自分で手続を進めることで、家族内で話し合いを重ねることができ、より柔軟に信託内容を設計することができます。
一方、専門家に依頼する場合、家族だけでなく専門家を介すことになり、煩わしいと感じる可能性があります。
3.家族間の信頼を深められる
家族信託では、財産の承継・管理について話し合うことになり、家族の意向、要望、将来のことを互いに理解する機会となります。
信託の内容を自分たちで設計し、役割分担を明確にすることにより、家族間の信頼関係を深められる可能性があります。
4.財産管理に関する理解が深まる
信託契約書の作成や財産管理を自ら行うことにより、財産管理に関する知識・スキルが身につくこともメリットだといえます。
財産の管理・運用について、長期的な目線で設計する過程において、資産運用への理解が深まり、自己管理能力が高まる可能があります。
5.秘密が守られる
家族信託を自分で行うことにより、家族の財産状況や個人情報を外部に共有するリスクが減少します。
家族信託を自分で行う際の注意点
家族信託を自分で行う際は、下記に注意しましょう。
- 契約内容に不備が生じる可能性がある
- 税関連でリスクを負う
- 家族間の合意形成が難しい
- 遺留分への配慮不足
- 信託内容の見直しが必要な場合がある
1.契約内容に不備が生じる可能性がある
家族信託には、信託法や民法の知識が必要です。
信託契約書に不備があった場合、信託契約の効力が認められない可能性があるほか、内容が不明確でトラブルの原因になることがあります。
このため、信託法や民法の基本について理解し、信託契約書の記載内容を慎重に検討する必要があります。
信託契約が家族の事情に沿った内容であるかを確認し、契約書だけでも専門家にチェックしてもらうと安心ですね。
2.税関連でリスクを負う
家族信託契約の内容により、贈与税や相続税が課される場合があります。
これらを納得した上で契約を締結するのは構いませんが、税に関する誤解から様々なリスクを負う可能性があります。
信託開始時や終了時の財産移転に伴う税負担について、税理士に相談し、税金の納付・申告を正しく行えるよう準備しましょう。
3.家族間の合意形成が難しい
家族信託では、家族間における財産管理・承継について話し合い、合意を得ることが重要です。
事前にしっかりと話し合い、全員が納得の上で信託を進めるのが望ましいといえます。
また、特に重要な内容については合意書等を作成しておくと、トラブルを未然に防止することができます。
4.遺留分への配慮不足
家族信託による財産の移転に伴い、法定相続人が遺留分を主張する場合があります。
これを考慮せず信託を進めると、後に家族間でトラブルに発展する可能性があるため、遺留分を侵害しない設計にする、又は他の財産で遺留分を充当する方法を検討しましょう。
5.信託内容の見直しが必要な場合がある
家族や財産状況に変化が生じた場合、信託内容の見直しが必要な場合があります。
このため、信託の定期的に見直すようスケジュールを組み、必要に応じ、信託契約の内容を修正しましょう。
家族信託を自分で行う場合の手続
家族信託を自分で行う場合、下記の手続が必要です。
- 信託内容を決定する
- 信託契約書の作成
- 信託財産の管理体制を整える
- 受託者による財産管理の開始
1.信託内容を決定する
円滑な信託を行うには、委託者、受託者、受益者の三者だけでなく、家族全員で下記の項目について話し合いましょう(参考記事:家族信託の開始前に検討すべきポイント、必要な手続を解説)
- 家族信託の目的
- 信託財産
- 受託者と受益者
- 受託者の権限
- 信託監督人の設置
- 受益者代理人、第二受託者
- 家族信託の期間と終了事由
- 家族信託終了時の信託財産の帰属先
2.信託契約書の作成
家族間で話し合い、決定した内容に基づき、家族信託契約書案を作成し、公正証書にしましょう。
具体的には、下記の事項を記載します。
家族信託の目的 | 何のために家族信託を行うのかを記載 受託者が財産の管理・処分等を行う際の行動基準として機能 |
信託財産 | 受託者が、管理・運用・処分を行う財産を特定できるよう具体的に記載 長くなる場合、別紙にて物件目録を作成することも可能 |
受託者 | 信託財産の管理・運用・処分を任せる相手を指定 氏名、住所、職業、生年月日により特定するのが一般的 受託者に万が一のことがあった場合に備え、第二受託者を定めておくのがオススメ |
受託者の任務終了事由 | 終了事由に該当し、受託者の任務が終了した場合、第二受託者を定めている場合には当該受託者、そうでなければ新任者に引き継がれる |
委託者、受益者と受益権 | 委託者、受益者の特定と、受益権の承継について記載 |
信託の期間 | 信託の期間や終了事由を記載 原則、委託者と受益権者の合意により信託を終了させることができるものの、当事者の一方が認知症となった場合に備え、代理人等の合意による解除を認められるよう設計するのがオススメ |
信託事務処理代行者 | 原則、信託事務を行うのは受託者だが、契約で定めることで、第三者に信託事務の一部を行わせることも可能 |
信託財産の管理、処分等 | 信託財産について、受託者がどのように管理・運用するのか、どのような権限をもつのかを記載 信託財産ごとに権限を決定することも可能 |
その他管理等に必要な事項 | 信託財産を管理する上で、受託者自身の財産と明確に分けて管理することを記載 その他必要な事項があれば記載 |
信託報酬 | 報酬の有無は自由に設計可能 設定する場合、金額や支払時期、支払方法等を記載 |
清算受託者、帰属権利者 | 家族信託終了時に開始する清算手続について記載 清算受託者は、受託者が担うのが一般的で、残余財産は帰属権利者等に帰属する |
公正証書の作成は、下記の流れで行います。
3.信託財産の管理体制を整える
家族信託契約書を締結したら、受託者が信託財産を管理できるよう体制を整えます。
受託者は、受託者固有の財産と信託財産とを区別して管理する義務を負い、現金預貯金は信託口口座等の専用口座を開設、不動産は信託不動産である旨を登記する必要があります(信託法 第34条)
信託財産の種類ごとの管理方法は、下記の通りです。
種類 | 概要 | 窓口 |
---|---|---|
現金、預貯金 | 信託口口座など家族信託専用口座を解説 | 各金融機関 |
不動産 | 信託登記 | 法務局 |
火災保険、地震保険等の名義変更 | 保険会社 | |
借主に対する貸主変更通知 | 借主 | |
管理会社への通知(管理を委託している場合) | 管理会社 | |
管理組合への通知(区分所有不動産の場合) | 管理組合 | |
自社株式 | 株主名簿の書換え | 当該会社 |
上場株式 | 信託口口座など家族信託専用口座を開設 | 証券会社 |
4.受託者による財産管理の開始
受託者の管理体制が整ったら、信託契約の内容に従い、信託財産の管理を開始します。
この際、受託者は下記の義務を負います(信託法 第36条、第37条)
- 信託財産に関する支出、入金の記録
- 帳簿の作成・報告
- 作成した帳簿、領収書等の保管
かかる費用
家族信託を自分で行う場合、下記の費用がかかります。
公正証書の作成手数料 | 5,000円~20万円 信託財産の額に応じて異なる |
登録免許税 (不動産を含む場合) | 固定資産税評価額×0.3~0.4% |
(1)公正証書の作成手数料
公正証書の作成手数料は、原則、目的となる価額により定められています(手数料令第9条)
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
(2)登録免許税
信託財産に不動産を含む場合、信託登記を行う必要があります。
登記の際、下記の登録免許税が課されます(租税特別措置法 第72条、登録免許税法第9条別表第一、1(+)イ)
信託分の土地 | 固定資産税評価額×0.3% |
信託分の建物 | 固定資産税評価額×0.4% |
受益者変更の登記では、不動産1個につき1,000円
受託者変更時の登記は、非課税
信託終了時の登録免許税は、所有権移転分が固定資産税評価額の2%、相続の場合は固定資産税評価額の0.4%、信託登記抹消分は不動産1個につき1,000円です。
家族信託を自分で行う場合の手続、注意点まとめ
当ページでは、家族信託を自分で行う場合の手続、注意点を解説しました。