当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、配偶者居住権の成立要件、メリットと注意点を解説します。
Contents
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、配偶者の死亡後、原則、他方が死ぬまで自宅に無償で住み続けられる権利を指します。
配偶者居住権制度ができる前は、配偶者が自宅不動産を相続しない限り、自宅に住み続けられず、自宅を相続した相続人から追い出されたり、自宅を相続することで他の遺産を一切相続できなくなる心配がありました。
1.配偶者居住権の取得者
配偶者居住権を取得できるのは、法律上の配偶者に限られます。
2.所有権を相続する人
配偶者が配偶者居住権を取得する場合、自宅の権利を「配偶者居住権」「所有権」に分けて考えます。
分けた権利のうち、配偶者居住権を配偶者、所有権については相続人の誰が相続しても構いません。
通常は、子、孫等が相続することになるかと思いますが、子がいない場合は、二次相続まで視野に入れ、所有権取得者を定めることをオススメします。
3.配偶者居住権の存続期間
配偶者居住権の存続期間は、原則、配偶者が生きている間です。
ただし、存続期間を設定することもできます。
4.配偶者居住権の発生時点
配偶者居住権の発生時点は、要件を満たしたときです。
ただし、第三者に対抗するには登記を経る必要があります。
5.配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い
配偶者居住権を設定しない場合、配偶者短期居住権が認められます。
配偶者短期居住権も被相続人の相続開始後、配偶者が自宅に住み続ける権利を認めるものですが、下記の点が異なります。
比較項目 | 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 |
---|---|---|
設定要件 | 被相続人が所有していた物件に、相続開始時点において、配偶者が居住していること | 被相続人が所有していた物件に、相続開始時点において、配偶者が無償で居住していること |
設定方法 | 遺産分割協議、調停・審判 遺贈 | 要件を満たせば自動で発生 |
存続期間 | 原則、終身 | 最低6か月間 |
権利の範囲 | 居住建物全体の使用収益が可能 | 実際の居住部分のみ使用可能 |
登記の可否 | 可 | 不可 |
相続税 | 課税 | 非課税 |
第三者への対抗力 | あり | なし |
配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権は、下記をすべて満たしたときに成立します。
- 法律上の配偶者である
- その建物に居住していた
- 被相続人が単独で所有していた
- 配偶者居住権を設定
1.法律上の配偶者である
配偶者居住権を取得できるのは、戸籍上の配偶者のみです。
内縁の妻または夫、その他の相続人が取得することはできません。
2.その建物に居住していた
被相続人の相続開始時点において、配偶者が対象となる建物に住んでいることが求められます。
例えば、配偶者が福祉施設に入居している場合には、当該施設を生活拠点と考え、配偶者居住権を設定することができませんが、入院・デイサービスなど一時的に自宅を離れていると認められる場合には、配偶者居住権を設定することができます。
要するに、生活拠点としている建物が対象なんですね。
3.被相続人が単独で所有していた
配偶者居住権を設定する建物について、被相続人が単独で所有権をもっている必要があります。
この際、配偶者以外の第三者との共有状態だと認められない点に注意しましょう。
4.配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、下記の方法で設定することができます。
- 遺贈
- 遺産分割
遺贈の場合、被相続人が遺書に「配偶者居住権を取得させたい」旨の記載をする必要があるのに対し、遺産分割(調停・審判を含む)の場合は、遺産分割協議書に記載する必要があります。
配偶者居住権を設定するメリット
配偶者居住権を設定するメリットは、下記の通りです。
- 配偶者が自宅に住み続けられ、他の遺産を取得できる
- 配偶者居住権を第三者に対抗できる
- 相続税の節税対策として有効な場合がある
1.配偶者が自宅に住み続けられ、他の遺産を取得できる
相続において、自宅が相続財産の大半を占める場合があります。
ここで配偶者が自宅を相続する場合、自宅以外の金融資産を相続できないだけでなく、他の相続人に対し、代償分割として現金を支払う必要があります。
反対に、配偶者が金融資産を取得すると、自宅を相続できず、住む場所に困る可能性があります。
このような場合に配偶者居住権を設定すれば、配偶者は配偶者居住権、相続人は所有権の形でそれぞれ自宅を相続することとなり、配偶者も金融資産を相続することが可能です。
2.配偶者居住権を第三者に対抗できる
配偶者居住権は、配偶者居住権をもつ配偶者と所有権をもつ相続人による共同登記が可能です。
これにより、所有権を取得した第三者から立ち退きを求められた場合でも、配偶者は配偶者居住権を主張することができ、応じる必要がありません。
配偶者居住権を設定する際の注意点
配偶者居住権を設定する際、下記に注意しましょう。
- 配偶者居住権の譲渡、売却はできない
- 使用収益には所有者の許可が必要
- 固定資産税は配偶者が負担する
- 相続税の課税対象
- 小規模宅地等の特例の適用外
- 消滅事由がある
1.配偶者居住権の譲渡、売却はできない
配偶者居住権は、配偶者のみに認められる権利であり、第三者に譲渡・売却することはできません。
また、配偶者死亡時に消失するため、相続の対象にもなりません。
ただし、所有者との間では買取請求を行うことが可能です。
2.使用収益には所有者の許可が必要
配偶者居住権の設定後、当該建物を第三者に使用させて収益を得るには、所有者の許可が必要です。
許可なく賃貸等を行ってしまうと、所有者は「配偶者居住権の消滅請求」をすることができるため、当該建物から追い出される可能性があります。
3.固定資産税は配偶者が負担する
配偶者居住権の対象となる建物にかかる固定資産税について、納税義務を負うのは配偶者です。
原則、固定資産税の納税義務者は所有者となりますが、配偶者居住権を取得した配偶者には、「建物の通常の必要費を負担すること」と定められていることから、使用者である配偶者が負う事になります。
4.相続税の課税対象
配偶者居住権は、相続税の課税対象です。
また、所有権を取得する相続人にかかる相続税については、建物の相続税評価額から配偶者居住権の価額を除いて算定します。
5.小規模宅地等の特例の適用外
小規模宅地の特例とは、被相続人が使用していた自宅の土地に対し、一定の面積まで減額される制度を指します。
この特例は土地に対するものなので、配偶者居住権を設定する建物には適用されない点に注意しましょう。
建物の敷地については、要件を満たせば適用を受けられます👌
6.消滅事由がある
下記に該当する場合、配偶者居住権は消滅します。
- 配偶者が死亡した場合
- 存続期間が満了した場合
- 建物が滅失し、使用できなくなった場合
- 配偶者の義務違反に対し、所有者が消滅の意思表示をした場合
- 配偶者が配偶者居住権を放棄した場合
- 配偶者と所有者との間で合意に至った場合
配偶者居住権の設定が有効なケース
下記に該当する場合、配偶者居住権の設定が有効だと思われます。
- 配偶者の住居を確保したい場合
- 相続財産の大半を不動産が占めている場合
- 配偶者に不動産以外の財産を相続させたい場合
1.配偶者の住居を確保したい場合
配偶者居住権を設定することで、原則、配偶者は生涯にわたり、現在の住まいに居住し続けることができます。
これにより、配偶者が経済的に不安定な場合や、高齢で他の住まいを探すのが難しい場合の住居喪失リスクを軽減できます。
2.相続財産の大半を不動産が占めている場合
配偶者居住権を設定すると、自宅の権利を「所有権」「配偶者居住権」に分けることができます。
これにより、所有権は他の相続人に分配されるいっぽうで、配偶者が住み続ける権利を得られ、両者にとって公平な遺産分割の機会につながります。
3.配偶者に不動産以外の財産を相続させたい場合
所有権よりも配偶者居住権のほうが相続税評価額は低いため、自宅をそのまま相続する場合に比べ、他の相続財産を相続できる可能性があります。
これにより、自宅以外の預貯金等の財産を相続でき、配偶者の生活資金等を確保しやすくなります。
配偶者居住権に関する相談窓口
配偶者居住権に関する相談は、下記に行うことができます。
弁護士 | 日本弁護士連合会 |
司法書士 | 日本司法書士会連合会 |
税理士 | 日本税理士会連合会 |
配偶者居住権の成立要件、メリットと注意点まとめ
当ページでは、配偶者居住権の成立要件と、メリット・注意点を解説しました。