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当ページでは、お金を貸した相手が返してくれない場合の対処法と、注意点を解説します。
Contents
お金を返してもらえない場合の対処法
お金を貸した相手が期限を過ぎても返してくれない場合、下記の対処法が考えられます。
- 電話、メール等による催促
- 民事調停
- 支払督促
- 少額訴訟・訴訟
- 強制執行
1.電話、メール等による催促
お金を返してくれない場合、電話またはメール等により連絡し、下記を踏まえて(1)期日を過ぎていること、(2)返済してほしいことを伝えましょう。
(1)相手を脅すようなことは言わない
返済を促す際、返してくれないときの措置を告げる場合、相手や家族に危害を加えるような文言は控えましょう。
下記を脅かすような言動を含む場合、刑法上の脅迫罪が成立し、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第222条)
- 生命
- 身体
- 自由
- 名誉
- 財産
手段は、相手方への電話、メール、手紙、メッセージアプリ、FAXのほか、SNSやブログへの投稿まで含まれます。
(2)内容は記録する
相手に催促する場合、その年月日と時間、内容を記録しましょう。
具体的には、発信履歴のスクリーンショット・通話の録音、メール・メッセージアプリのトーク画面等のスクリーンショット等が該当し、相手方からの返信内容も全て保存しておくと安心です。
2.民事調停
民事調停とは、裁判と同様のメンバーで構成される調停委員会を介し、当事者同士の話し合いで解決を目指す方法を指します。
(1)民事調停のメリット
民事調停には、下記のメリットがあります。
- 裁判に比べ、手続きが簡単
- 円満解決が期待できる
- 通常の訴訟に比べ、費用が抑えられる
- 非公開で行われるため秘密が守られる
- 早期解決を目指せる
(2)民事調停の注意点
民事調停を検討する場合、下記に注意しましょう。
- 相手方が欠席すると打つ手がない
- 平日に調停期日が開かれる
- 必ず終局的な結果を得られるわけではない
調停の場合、出席に強制力がないうえ、調停期日が平日10時~17時なので、会社員にとっては出席が難しい点がデメリットだといえます…。
(3)調停手続きの流れ
調停は、下記の流れで行います。
- 申立て
- 調停期日の指定
- 当事者双方への呼び出し
- 調停期日に裁判所に出向いて双方の意見を主張
- 調停成立(調停に代わる決定を含む)または不成立
3.支払督促
支払督促とは、相手方が金銭等を支払わない場合、簡易裁判所に申し立てて支払いを促す手続きをいいます。
(1)支払督促のメリット
支払督促には、下記のメリットがあります。
- 消滅時効の進行を止められる
- 弁済の可能性が高まる
- 裁判所に赴く必要がない
(2)支払督促の注意点
支払督促を利用する場合、下記に注意しましょう。
- 債務者が異議を申し立てると通常訴訟に移行する
- 通常訴訟に移行した場合、裁判管轄を選べない
相手方の意義により簡単に無効となるため、はじめから訴訟を申し立てた方が楽な場合もあることに留意しましょう。
(3)支払督促の流れ
支払督促は、下記の流れで進めましょう。
- 必要書類の作成・取得
- 支払督促の送達
- 仮執行宣言の申立て
- 仮執行宣言付支払督促正本の送達
- 確定
申立てを受けた裁判所は、債務者に対し「支払督促」の送達を行い、2週間以内に異議申立てがなければ、債権者から裁判所に対し、「仮執行宣言」を申し立てることができます。
※仮執行宣言とは、裁判の判決確定前でも強制執行を可能とする宣言を指します。
4.少額訴訟・訴訟
少額訴訟とは、原則、1度きりの裁判で審理を終え、和解または判決により事件を解決する制度です。
(1)少額訴訟のメリット
少額訴訟には、下記のメリットがあります。
- 即日終了
- 強制執行ができる
少額訴訟に勝訴した場合にも「仮執行宣言」が出るため、強制執行による財産の差押えが可能となります。
通常訴訟で強制執行を行う場合に比べスピーディなのは少額訴訟最大のメリットだといえます。
(2)少額訴訟の注意点
少額訴訟を検討する場合、下記に注意しましょう。
- 少額訴訟の目的額は最大60万円
- 少額訴訟を提起できる回数は年10回
- 相手方の住所がわからなければ利用できない
- 相手が異議を唱えると通常訴訟に移行する
- 回収額が少なくなる可能性がある
通常の訴訟では、原告勝訴に伴い、裁判所から相手方に遅延損害金・利息等を含む金額を一括で支払うよう命じる一方、少額訴訟の場合には、分割払いを命じる場合や遅延損害金等を含まない金額で確定する可能性がある点に注意しましょう。
(3)少額訴訟と通常訴訟の違い
少額訴訟と通常訴訟には、下記の違いがあります。
少額訴訟 | 通常訴訟 | |
---|---|---|
訴額の制限 | あり 訴額60万円以下 | なし |
所要期間 | 1日 | 6か月以上 |
公訴の可否 | 不可 異議申立ては認められる | 可能 |
手数料 ※郵便切手等は含まない | 最大6,000円 | 1億円の場合、32万円 ※1億円を超える場合は各裁判所への問い合わが必要 |
手数料は、訴訟を提起する際に納める印紙代を指し、印紙代は訴額により異なります(出典:別表(民事訴訟費用等に関する法律別表第1)(第3条、第4条関係))
(4)少額訴訟の流れ
少額訴訟は、下記の流れで行います。
- 必要書類等を作成・取得
- 申立て
- 裁判所から期日の連絡
- 事前聴取
- 答弁書のやりとり
- 審理
- 判決
- 強制執行
(5)通常訴訟を提起する必要がある場合
下記に該当する場合、少額訴訟の提起は認められず、通常訴訟でなければなりません。
- 訴額が60万円以上の場合
- 少額訴訟の利用上限を超過している場合
- 相手方の住所・居場所がわからない場合
5.強制執行
強制執行とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者の財産を差し押さえることにより債権回収を実現する方法をいいます。
(1)強制執行の種類
強制執行は、下記に分類されます。
分類 | ||
---|---|---|
金銭執行 | 不動産執行 | 債務者所有不動産を差し押さえて競売し、売却代金から債権を回収 |
動産執行 | 動産を差押えて競売にかけ、売却代金から債権を回収 | |
債権執行 | 債務者が第三者に対して持っている債権を差押える | |
非金銭執行 | 金銭債権以外の債権が対象 |
(2)強制執行の流れ
強制執行は、下記の流れで行います。
- 債務名義を取得
- 執行文の付与
- 債務名義の送達証明申請
- 債権執行
債務名義とは、裁判所に強制執行を申し立てることができる資格を証明する文書を指し、下記が該当します。
- 確定判決
- 仮執行宣言を付した判決
- 執行証書
- 和解証書
執行証書とは、公正証書に強制執行を認める文言を付したもの。
和解調書とは、裁判所において和解に至った内容を箇条書きにした文書を指します。
債務名義だけで強制執行をしてもらうことはできないため、債務名義が判決なら裁判所書記官、公正証書の場合は公証人に「執行文」を付与してもらいましょう。
(3)強制執行の注意点
強制執行を検討する際は、下記に注意しましょう。
- 時間がかかる
- 全額回収できるとは限らない
- 申立時に予納金が必要
予納金は、不動産執行時にかかるもので、不動産の売却代金から返還されるものの、80万円~200万円ほどかかります。
このため、まとまった資金がなければ実行できないうえに、不動産の売却代金がこれを下回る可能性も…。
お金を返してくれない場合に成立し得る罪
債務者がお金を返してくれない場合、相手方が罪に問われることはあるのでしょうか。
1.民事上の債務不履行
お金の貸し借りについて、民法では「金銭消費貸借」と呼び、借りた側に返済義務を定めています。
このため、期日までに返済しなければ契約違反であり、民事上の債務不履行が成立することになります。
債務不履行によって債務者は、現金に利息や遅延損害金を加えた金額を返済する責任を負いますが、一般的に訴訟で争うケースは少ないようです。
個人間の貸し借りでは、あまり高額化するケースが少ないほか、訴訟等の手間や時間が惜しいと感じる人が多いんですね。
2.刑法上の詐欺罪
お金の貸し借りそのものについて、刑法に規定はありません。
このため、債務者がお金を返さないことが何らかの罪状に該当し、相手方が逮捕・起訴されることはまずありえません。
ただし、下記に該当する場合には詐欺罪が成立する可能性があります(刑法第246条各項)
- 人をだます行為により
- 相手方が錯誤に陥り
- その錯誤に基づき
- 財物・財産上の利益を他人に移転
例えば、はじめから返すつもりはなかったのに、返すと約束してお金を借りた場合や、督促を受けた際に借りていないと白を切るような場合に成立し得る罪です。
貸したお金の時効期間
民法上、借金の時効は「債権者が権利を行使できることを知った日から5年間、権利を行使できるときから10年間」と定められています(民法第166条第1項第1号)
ただし、貸金業者等からの借入金については5年間となります(商法第522条)
当ページをご覧の債権者様はきっと個人だと思いますが、知っておいて損はないかと思われます。
(1)時効は援用しなければ意味がない
貸したお金について、消滅時効期間を満了しただけで返済義務が消滅するわけではなく、債務者が返済義務を免れるには「援用」しなくてはなりません(民法第145条)
時効の援用とは、債務者から債権者に対し、時効の利益を受ける旨の意思表示を行うことをいいます。
端的にいえば、債務者からあなたに「消滅時効が成立したから借金は支払いません」と伝える動作をいい、一般的には、内容証明郵便等により消滅時効援用通知書を送付されます。
(2)時効の更新
債務者の援用を防ぐためには、更新事由を生じさせることで、消滅時効のカウントを更新する必要があります(民法第147条)
- 裁判上の請求
- 差押え、仮差押え又は仮処分
- 債務者による承認
裁判上の請求は訴訟、支払督促をいい、差押え等については競売開始決定が債務者に送達された時点や競売開始決定登記がされた時点が該当します。
承認は、返済する旨を示した場合に限られず、わずかな金額でも返済が実行されると承認とみなし、時効が更新されます。
自分でできる債権回収の手続き
さまざまな手続きがありますが、自分自身でもできる債権回収の手続きをご紹介します。
- 内容証明郵便の送付
- 執行認諾文言付き公正証書の作成
1.内容証明郵便の送付
内容証明郵便の送付そのものに、何らかの強制力を持たせる効果はありませんが、支払請求(催告)の記録として有効です。
このため、時効の進行を一時的に中断することができます。
記載内容は下記のとおりです。
- 表題(「督促状」など)
- 相手方の住所、氏名
- 自分の住所、氏名
- 支払が必要な金額
- 支払期日
- 期日までに支払いがなかった場合の措置
- 年月日
2.執行認諾文言付き公正証書の作成
執行認諾文言付き公正証書とは、「債務名義」となる公正証書を指します。
この対処法は、お金を貸す前に取り得るものですが、借用書等を公正証書にする際は執行認諾文言を付すことを忘れないよう注意しましょう。
お困りの際は弁護士にご相談ください
債権回収について、残念ながら行政書士がお手伝いできることはありません。
このため、相手方がお金を返してくれない場合には、ご自身で何らかの対策を講ずるほか、弁護士への相談をオススメします。
一般の方の多くは、弁護士から督促があるだけでプレッシャーを感じるため、訴訟を提起する前に支払いが受けられる場合があります。
また、実際に訴訟になったとしても、専門的な知見をフルに活用し、訴訟で勝訴できるようベストを尽くしてくれるでしょう。
お金を返してもらえない場合の対処法、注意点まとめ
当ページでは、お金を返してもらえない場合の対処法と注意点を解説しました。