当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、過失割合の決定方法、裁判にて争う場合を解説します。
Contents
過失割合とは
過失割合とは、発生した事故に対する当事者同士の責任割合を指します。
(1) 過失とは
過失とは、事故等の結果を予見し、回避するために必要な注意義務を怠ったことをいいます。
要するに「不注意」「怠慢」等のことですね。
(2) 過失割合が考慮される場面
過失場面を考慮するのは、民事訴訟において、損害賠償額を判定する場面です。
このため、刑事処分等の行政処分が前提の場合。過失割合が問題になることはありません。
過失割合を決める人
過失割合を決めるのは、当事者が加入する保険会社です。
交通事故が発生した場合、警察による現場確認や状況確認を行い、事故の内容を確認・記録してくれますが、ここに過失割合は含まれません。
過失割合の決定はあくまで民事で、警察不介入が原則です。
過失割合の決定方法
過失割合について、通常は当事者が加入する保険会社の担当者が話し合いを行って決定します。
ここでは、裁判例を基礎に実際の事故と照らし合わせて決定することになります。
(1) 過失割合に関する調査
過失割合を決定するため、当事者・目撃者から聴き取りを行います。
当事者が主張する内容に相違がある場合、調査会社等に依頼し、詳細まで調べることになります。
過失割合算定時のポイント
過失割合は、下記を考慮して算定されます。
- 事故の類型
- 事故の態様
- 修正要素
1. 事故の類型
交通事故は、下記のように分類されます。
- 四輪車同士
- 四輪車と二輪車
- 四輪車と歩行者
衝突対象について、自転車<二輪車<四輪車の順に過失割合が大きくなるため、相手方が歩行者の場合は、四輪車側の過失が重くなります。
2. 事故の態様
事故の態様とは、交通事故の発生場所や、発生時の状況を指します。
具体的には、事故発生場所の交通規制、道路(路面)状況、当事者双方の同行等です。
3. 修正要素
原則、交通事故の類型や態様により過失割合は決定されますが、基本過失割合をそのまま適用することが適当ではない場合、過失割合に修正が施されます。
主な修正要素は、下記の通りです。
- 速度超過
- 一時停止義務違反
- 合図不履行
- 歩行者の通行妨害など
【事例別】基本過失割合
下記は、一般的な過失割合です。
1. 歩行者と四輪車の事故
1-1. 青信号を渡る歩行者、赤信号を無視した四輪車の場合
歩行者側が青信号、四輪車側が赤信号の場合に起きた事故では、四輪車の過失が10割となります。
横断歩道上に歩行者がいる場合、自動車は横断歩道等の手間で一時停止し、かつ、その進行を妨げてはいけません(道路交通法第38条)
このため、青信号を横断中の歩行者の進行を妨げた四輪車は、過失割合100%となります。
1-2. 駐車場に入庫する四輪車、通行する中の歩行者
駐車場において、入庫する四輪車が通行中の歩行者と接触した場合、基本過失割合は四輪車9:歩行者1です。
この場合、四輪車には歩行者がいる場合に直ちに停止する義務がある一方、歩行者には、自動車が入庫してくる際の動きに注意する義務があります。
2. 四輪車同士の事故
2-1. Uターンする際、直進車と接触
Uターンしている車Aに、直進車Bが接触した場合、基本過失割合はA8:B2です。
道路交通法では、他の車両の正常な交通を妨害するおそれがある場合の転回を禁止する一方、直進車には、前方車両の挙動を予測できたとされ、無過失とはなりません(道路交通法第25条の2、第1項)
2-2. 交差点に進入した緊急車両と直進車
信号機のある交差点において、青信号を直進する四輪車Aと、赤信号を徐行で進行する緊急車両Bが接触した場合、基本過失割合はA8:B2です。
緊急車両が接近している場合、一般車両は交差点を避け、道路の左側で一時停止する義務を負います(道路交通法第40条第1項)
2-3. 一方が明らかに広い道路
信号機がなく、一方が明らかに広い道路(本線)において、本線を直進するAと、狭い道路を直進するBが接触した場合、A3:B7です。
狭い道路に対し、広い道路を通行する車両が優先されますが、交差点を通行する際はいずれの車両にも徐行、安全確認義務が生じます(道路交通法第36条第2項、第3項)
2-4. 一方に一時停止の規制がある場合
信号機のない交差点において、直進するAと、一時停止の規制がある道路を通行するBが接触した場合、基本過失割合はA2:B8です。
一時停止規制がある場合、車両等は、停止線の直前で一時停止しなければならず、交差する道路を走行する車両等の進行を妨げてはいけません(道路交通法第43条)
多方、直進している車両は、交差道路を通行する車両に対して注意義務を負うため、無過失とはなりません。
3. 四輪車と二輪車の事故
3-1. 赤信号を直進する四輪車、青信号を進行する二輪車
赤信号の交差点に進入した四輪車Aと、青信号で進入した二輪車Bの基本過失割合は、A10:B0です。
二輪車、四輪車に関係なく、信号機のある交差点では信号に従う必要があり、赤信号を無視した者の過失は100%です。
ただし、信号の変わり目に発生した交通事故については、過失割合が変動する可能性があります。
3-2. 同程度の道幅の交差点
信号機がなく、同程度の道幅の交差点における直進同士の事故について、左側から進行する二輪車Aと、右側から進行する四輪車Bの基本過失割合は、A3:B7です。
信号機のない交差点では、左方から来る車両の進行を妨げてはならず、左方から進入する車両等の優先度が高くなります(道路交通法第36条第1項)
また、四輪車と比べて二輪車は交通弱者として扱われるため、二輪車の過失割合は小さくなる傾向にあります。
3-3. 信号機のある交差点で直進する二輪車、右折する四輪車
信号機のある交差点において、双方青信号で二輪車Aは直進、四輪車Bは右折の場合、基本過失割合はA1.5:B8.5です。
車両等が交差点で右折する場合、直進・左折する車両の進行を妨害してはならず、右折する側に過失が認められます(道路交通法第37条)
ただし、直進車にも交差点内での安全速度・方法を遵守する義務があるため、このような過失割合となります。
4. 四輪車と自転車の事故
4-1. 傘さし自転車と四輪車
信号機のない同程度の道幅の交差点において、交差点を右折する自転車と、直進する四輪車との基本過失割合は3:7です。
ただし、自転車側が傘をさして片手で運転していた場合、自転車側に「著しい過失」が認められ、過失割合が5%上乗せされます。
4-2. 無灯火の自転車
夜間、一時停止規制のある道路を無灯火の自転車Aが直進し、交差点を直進する四輪車Bが接触した場合、基本過失割合はA4.5:B5.5です。
原則、交差点の一時停止を無視した直進自転車と、交差点を直進する四輪車の交通事故では、基本過失割合が四輪車6:自転車4と判断されますが、この場合、自転車を視認しづらい夜間であるにもかかわらず、灯火義務を無視した自転車に過失が認められます。
5. 高速道路での事故
5-1. 走行車線から追越車線への進路変更時
高速道路において、走行車線から追越車線へと進路変更するAと、追越車線を直進していたBの基本過失割合は、A8:B2です。
進路変更を行う車両等は、進路変更後の車線を後方から走る車両等の速度・方向を急に変更させるおそれがあるときには、進路を変更してはいけません(道路交通法第26条の2第2項)
高速道路では、一般道に比べて車両が高速で走行するため、進路変更には特に注意が必要です。
これらの事情から、一般道の進路変更による7:3を修正し、8:2となります。
6. 歩行者と自転車の事故
6-1. 信号機のない横断歩道上
信号機のない横断歩道において、横断歩道を通行する歩行者に自転車が衝突した場合、基本過失割合は0:10です。
横断歩道により道路を横断する歩行者は、絶対的保護の対象であり、直進・右左折にかかわらず、自転車の過失割合は100%となります。
被害者が損害賠償額を負担する場合
被害者の過失割合が小さい場合でも、損害賠償額を負担しなければならないことがあります。
具体的には、交通事故の損害賠償について、当事者間で互いの損害賠償義務は公平にすることで合意に至った場合が挙げられます。
ただし、当事者双方が任意保険に加入している場合には、保険会社が補償してくれるため、自費で支払う必要はありません。
過失割合を裁判で争う場合
過失割合について、下記の場合には裁判で争う可能性があります。
- 事故状況の認識がずれている場合
- 損害賠償額が高額な場合
- 事故状況が特殊な場合
1. 事故状況の認識がずれている場合
過失割合について、当事者間の認識が大きくズレている場合、原則、ドライブレコーダーの映像等を確認することになります。
しかし、これらの証拠が全くない場合には、双方の主張が折り合わず、訴訟で決着をつける可能性があります。
2. 損害賠償額が高額な場合
請求できる損害賠償額が高額な場合、過失相殺による影響が大きくなります。
まあ、交通事故の場合、事故発生日から損害賠償の全額に対し、「遅延損害金」を請求することができます。
遅延損害金とは、金銭損害に関し、債務者の履行遅滞による損害を補償するために支払われる金銭を指し、「損害賠償額×年率(通常3%)×滞納日数÷365」にて算出されます。
3. 事故状況が特殊な場合
交通事故の内容により、過去の裁判例等による算定が難しい場合があります。
この場合、実際の事故状況に適合する過失割合を求めるために、裁判所に判断を委ねることになります。
訴訟の流れ
交通事故に関する訴訟は、下記の流れで行います。
- 訴訟の提起
- 口頭弁論
- 尋問・証拠調べ
- 和解勧告
- 判決
裁判にかかる費用
交通事故に関する民事訴訟には、下記の費用がかかります。
手数料 | ||
---|---|---|
訴額 (請求する損害賠償額) | 100万円までの部分 その価額10万円までごとに | 1,000円 |
100万円を超え500万円までの部分 その価額20万円までごとに | 1,000円 | |
500万円を超え1,000万円までの部分 その価額50万円までごとに | 2,000円 | |
1,000万円を超え10億円までの部分 その価額100万円までごとに | 3,000円 | |
10億円を超え50億円までの部分 その価額500万円ごとに | 1万円 | |
50億円を超える部分 その価額1,000万円までごとに | 1万円 | |
弁護士費用 | 着手金、成功報酬等 |
過失割合の決定方法、裁判に発展する場合まとめ
当ページでは、過失割合の決定方法と、裁判に発展する場合を解説しました。