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当ページでは、タンス預金のメリットと、相続時の注意点を解説します。
Contents
タンス預金とは
タンス預金とは、金融機関に預けることなく、自宅に保管している金銭を指します。
タンス預金(タンス貯金)は、あくまで俗称なので、タンス以外への貯金でもこう呼ばれる場合があります。
タンス預金のメリット
タンス預金には、下記のメリットがあります。
- 流動性が高い
- 手数料・利息がかからない
- 資産の分散
- プライバシーの保護
1. 流動性が高い
金融機関に預けた場合、金融機関の営業時間や取引上限額等に左右される場合があります。
また、相続発生時には遺産分割協議終了までの間、口座が凍結されてしまいます。
いっぽう、タンス預金の場合には、自分の好きなタイミングで、上限額を気にせず、お金を使えるメリットがあります。
2. 手数料・利息がかからない
金融機関に預けた場合、入出金時に手数料がかかる場合がほとんどです。
タンス預金の場合、利息はつかない一方で、手数料がかからないため、希望した金額での保管が可能です。
3. 資産の分散
金融機関に預けた場合、当該機関が破綻した場合には、一定額までの保証しか受けられません。
この点、タンス預金であれば破綻の心配がなく、自身の資産を守ることができます。
ペイオフ制度の場合、破綻した金融機関に口座を持っている預金者1人あたり、1,000万円までは元本・利息が保証されます。
このため、1,000万円を超える資産については保証が受けられない点に注意が必要です。
4. プライバシーの保護
金融機関に預ける場合、他人に自分の資産額を知られることになります。
一方、タンス預金の場合には、自分以外の他人に資産額を知られる心配がありません。
タンス預金の注意点
タンス預金を行う際は、下記に注意しましょう。
- 盗難・紛失
- 利息がつかない
- インフレによる影響
- 相続トラブルに発展
1. 盗難・紛失
タンス預金の場合、火災や自然災害による損失リスクに晒されるだけでなく、原則、火災保険や地震保険の対象外です。
また、盗難の場合には、犯人の特定が難しい場合や、相手方により心身に損害を被る可能性もあります。
このため、現金を自宅保管する際は、他者の侵入を許さず、物理的な搬出が難しい構造にする必要があります。
2. 利息がつかない
金融機関に預けた場合、わずかでも利息がつきますが、タンス預金の場合には、利息を得ることはできません。
現状では考えづらいですが、今後利息が上がった場合に機会損失に繋がる可能性があります。
3. インフレによる影響
インフレが進行した場合、現金の価値が下がる可能性があります。。
インフレとは、物価が全体的に上昇する現象を指し、タンス預金の実質的な価値は下がるため、将来的な資産計画に影響を及ぼすリスクがあります。
4. 相続トラブルに発展
金融機関に預けた場合、その金額を客観的に証明することが可能ですが、タンス預金の場合、その金額を証明することが困難な場合がほとんどです。
このため、一部の相続人がタンス預金を持ち去った場合に、その金額を証明することができず、他の相続人とトラブルに発展する可能性があります。
タンス預金が違法になる場合
下記に該当する場合、タンス預金が違法となります。
- 遺産にタンス預金が含まれる場合
- 贈与された金額をタンス預金とした場合
1. 遺産にタンス預金が含まれる場合
被相続人がタンス預金を行っていた場合、財産目録に記載し、相続税の申告・納税を行う必要があります。
しかし、財産目録に記載しなかった場合や、相続税の申告・納税を行わなかった場合には、違法となります。
2. 贈与された金額をタンス預金とした場合
他者から贈与を受けた場合、その金額が控除額を超えているにもかかわらず、確定申告をしなかった場合には違法となります。
タンス預金自体は「合法」ですが、預金しているお金のルートや、これに伴う手続を怠ることが「違法」となるため、注意が必要です。
タンス預金の時効期間
タンス預金について、下記の時効期間に注意しましょう。
(1) 相続税の申告・納税期間
相続税の申告・納税は、原則、相続開始を知った日の翌日から10か月です。
この申告・納税の時効は、申告期限から5年間と定められているため、相続開始から5年10か月間が時効期間となります。
(2) 悪質な場合
ただし、相続税の申告・納税漏れについて、「悪質」と判断された場合には7年間まで延長されます。
時効期間のうち、「5年」「7年」いずれを適用するかは申告義務者の善意・悪意により異なるということですね。
タンス預金が発覚するルート
一般的に、下記のルートにてタンス預金が特定されます。
1. 国税総合管理(KSK)システム
税務署は、「国税総合管理(KSK)」というネットワークで全国の国税局と税務署を結び、申告・納税の実績情報等を一元的に管理しています。
日本国内すべての納税者から提出される申告書が把握され、資産の購入売却履歴など、詳細なデータを蓄積しているため、タンス預金以外の資産が動いた段階で税務調査の対象となる可能性があります。
2. 税務調査
税務署が行う調査は、下記に分類されます。
強制調査 | 国税局捜査部が担当し、裁判所の令状をもって、強制的に実施 |
任意調査 | 裁判所の令状はなく、納税者の協力を得て実子 |
「任意調査」とはいいますが、拒否すると罰則規定の対象となる可能性が高いため、注意が必要です(国税通則法第74条の2)
3. 遡及的な預貯金調査
相続税に関する税務調査では、10年前まで遡る場合があります。
ほとんどの金融機関は、口座の取引履歴を10年分保存していて、相続開始前における生前贈与の有無等を調べられることになります。
無申告のタンス預金に対する罰則
タンス預金について無申告だった場合、下記の罰則が考えられます。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 延滞税
- 重加算税
1. 無申告加算税
無申告加算税とは、納税者が法定期限内に申告しなかった場合に課される税金を指します。
1-1. 税率
加算税の割合は、下記の通りです。
事例 | 対象額 | 加算税率 |
---|---|---|
税務調査後に申告した場合 | ~50万円 | 15% |
50万円超 | 20% | |
税務調査通知後から 税務調査通知前に申告した場合 | ~50万円 | 10% |
50万円超 | 15% | |
税務調査通知前に自主申告した場合 | 5% | |
1-2. 無申告加算税が免除される場合
下記に該当する場合、無申告加算税は免除されます。
- 期限内に申告する意思があり、期限から1か月以内に納付した場合
- 対象額が5,000円未満の場合
- 正当な理由がある場合
2. 過少申告加算税
過少申告加算税とは、申告書に記載した金額が実際に申告すべき金額より少ない場合に課される税金を指します。
2-1. 税率
過少申告加算税は、不足税額の10%が原則です。
ただし、不足税額のうち、期限内に申告した税額または50万円のうち、いずれか多い金額を超える部分については15%です。
2-2. 過少申告加算税がかからない場合
下記に該当する場合、過少申告加算税がかかりません。
- 納税者自ら修正申告を行う場合
- 過少申告した金額が低額の場合
- 正当な理由がある場合
3. 延滞税
延滞税とは、法廷納付期限までに支払うべき税金を納付していない場合にかかる税金を指します。
具体的には、法定納期限の翌日から納付までの日数に応じた金額が課されます。
納付すべき本税のみにかかり、加算税等に課されるものではありません。
3-1. 税率(令和3年1月1日以後)
延滞税の割合は、下記の通りです。
納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 原則、年7.3% | |
令和4年1月1日から令和6年12月31日まで | 年2.4% | |
令和3年1月1日から令和3年12月31日まで | 年2.5% | |
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 原則、年14.6% | |
令和4年1月1日から令和6年12月31日まで | 年8.7% | |
令和3年1月1日から令和3年12月31日まで | 年8.8% |
3-2. 税率(令和2年12月31日以前)
納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 原則、年7.3% | |
平成30年1月1日から令和6年12月31日まで | 年2.6% | |
平成29年1月1日から令和3年12月31日まで | 年2.7% | |
平成27年1月1日から平成28年12月31日まで | 年2.8% | |
平成26年1月1日から平成26年12月31日まで | 年2.9% | |
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 原則、年14.6% | |
平成30年1月1日から令和6年12月31日まで | 年8.9% | |
平成29年1月1日から令和3年12月31日まで | 年9.0% | |
平成27年1月1日から平成28年12月31日まで | 年9.1% | |
平成26年1月1日から平成26年12月31日まで | 年9.2% |
3-3. 延滞税の計算期間の特例
延滞税の計算期間について、下記に該当する場合には算入されません。
- 期限内申告書が提出されていて、法定申告期限後1年を経過して修正申告または更正があったとき
- 期限後申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過して修正申告または更正があったとき
- 確定申告書を提出した後に減額更正がされ、その後さらに修正申告または更正があったとき(平成29年1月1日以後に法定納期限が到来する国税について適用)
4. 重加算税
重加算税とは、過少申告加算税等が課税される場合において、その内容が悪質と判断された際にこれらの税金に代えて課税される付帯税を指します。
付帯税は、無申告加算税、過少申告加算税、不納付加算税、重加算税のことをいいます。
4-1. 税率
重加算税は、下記の通りです。
過少申告加算税 不納付加算税 | 35% |
無申告加算税 | 40% |
タンス預金のメリット、相続時の注意点まとめ
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