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当ページでは、事実実験公正証書の概要と、活用場面を解説します。
Contents
事実実験公正証書とは
事実実験公正証書とは、公証人が自らの五感で直接見聞した事実を記載した文書を指します。
語感とは、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のことです。
具体的には、事実確認の結果だけでなく、関係者による説明内容・事実実験時の状況、写真(図面)等を添付し、より具体詳細な内容を記載します。
このため、事実実験公正証書の証明力・信用性は高く、証拠保全を目的に作成されるのが一般的です。
事実実験公正証書の活用場面
事実実験公正証書は、下記の場面で活用されることがあります。
- 尊厳死の意思表示
- 貸金庫の開扉・強制移転等
- 知的財産権に関わる証拠保全
- 不法行為・義務違反行為等の証拠保全
- 土地の境界・建築状況の確認
1. 尊厳死の意思表示
尊厳死とは、終末期医療の場において、患者本人が一定の延命治療等を拒否することで、人としての尊厳を保ったまま死を受け入れることを指します。
尊厳死を選択するには、「尊厳死宣言・意思表示による録取型」を作成する必要があります。
2. 貸金庫の強制開扉・強制移転
金融機関において、貸金庫を強制開扉する場合、金庫内に格納された品物の点検・確認を行う必要があります。
支店等の統廃合に伴った貸金庫の移転時においても同様で、いずれの場合も内容を明確にする目的で、事実実験公正証書を活用することになります。
3. 知的財産権に関する証拠保全
事実実験公正証書は、知的財産権に関する証拠保全に活用される場合があります。
知的財産権とは、特許権・意匠権・実用新案権・商標権等の総称で、これらは権利として出願し、登録することで保護されるものです。
原則、出願時に申請内容の一部を公開する必要があり、同業他社に権利を侵害されるおそれがあります。
このようなリスクを回避するため、申請対象となる技術・ノウハウ等を公正証書に記載し、現在または未来の紛争に備え、証明力の高い有力な証拠を残すために活用されます。
4. 不法行為・義務違反行為等による証拠保全
事実実験公正証書は、不法行為・義務違反行為等の被害者が受けた損害を確認し、証拠として残すために用いられる場合があります。
被害者が損害賠償請求を行うには、被害を明確に示す必要があり、第三者機関である公証人に証明してもらうことで、より高い証拠能力を示すことができるメリットがあります。
5. 土地の境界・建築状況確認
事実実験公正証書は、土地の境界争いが生じている場合に活用されることもあります。
土地の境界は「筆界」「所有権界」に区別され、一般的に双方は一致します。
しかし、土地の一部について権利の変動があった場合に不一致となり、土地の売買・家屋の改築等の際にトラブルに発展する場合があります。
こうしたトラブルの原因は「現況が曖昧なこと」であるため、トラブル解決を目的として活用されるのです。
事実実験公正証書の作成に必要な書類
事実実験公正証書を作成するには、下記の書類が必要です。
(1) 実験に本人が立ち会う場合
必要書類 | ||
---|---|---|
個人の場合 AまたはB | A | 運転免許証、個人番号カードなど公的機関が発行する写真付の証明書と認印 |
B | 発行から3か月以内の印鑑登録証明書と実印 | |
法人の場合 A~C全て | A | 発行から3か月以内の印鑑証明書 |
B | 発行から3か月以内の履歴事項全部証明書または現在事項全部証明書 | |
C | 代表印 |
(2) 実験に代理人が立ち会う場合
必要書類 | ||
---|---|---|
個人の場合 A~C全て | A | 発行から3か月以内の依頼者の印鑑登録証明書 |
B | 希望する実験の内容について記載した委任状に、依頼者の実印を押印 | |
C | 代理人の身分証明書 (a.運転免許証など公的機関発行の写真つき証明書と認印、または、b.発行から3か月以内の印鑑登録証明書・実印) | |
法人の場合 A~C全て | A | 発行から3か月以内の印鑑証明書 |
B | 発行から3か月以内の履歴事項全部証明書または現在事項全部証明書 | |
C | 希望する実験の内容について記載した委任状に、法人の実印を押印 | |
D | 代理人の身分証明書 (a.運転免許証など公的機関発行の写真つき証明書と認印、または、b.発行から3か月以内の印鑑登録証明書・実印) |
かかる費用
事実実験公正証書を作成するには、下記の計算にて算出する金額が必要です。
事実の実験並びにその録取、実験方法の記載に要した時間の1時間ごとに11,000円
事実実験等に要した時間×11,000円=基本の作成手数料
休日や特定の時間帯に作成を依頼する場合、上記以外の金額が必要な場合があるため、事前に確認しましょう。
事実実験公正証書に記載される内容
事実実験公正証書には、次の内容が記載されます。
- 事実実験公正証書を作成するに至った経緯
- 事実実験公正証書で保護する対象、目的
- 事実実験公正証書で行う実験内容
- 事実実験公正証書に添付する書類について
事実実験公正証書を作成する際の注意点
事実実験公正証書を作成する際、下記に注意しましょう。
- 事前の打ち合わせを入念に行う
- 誰が読んでもわかる内容にしてもらう
1. 事前の打ち合わせを入念に行う
事実実験公正証書は、公証人自身が見聞きした事実を記載するものです。
依頼人の目的と希望をきちんと伝えなければ、これらの狩猟が反映されない可能性があります。
このような自体を避けるため、事実実験公正証書の作成日までに打合せを重ね、「誰が」「何を」「何のために」等の基本的な事項を明確化しましょう。
2.誰が読んでもわかる内容にしてもらう
公証人は法律のプロであり、日頃から様々な事案に触れています。
しかし、全ての事案に精通しているわけではなく、その知識にはある程度の偏りがある点に留意しましょう。
このため、争訟性がある事案において、裁判前提で事実実験公正証書を作成する場合には、客観的にわかりやすく、平易な内容にしてもらうと安心です。
事実実験公正証書の活用場面、作成に必要な書類まとめ
当ページでは、事実実験公正証書の活用場面、作成に必要な書類をご紹介しました。