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当ページでは、令和7年(2025年)施行予定の建設業法等改正のポイントを解説します。
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建設業法等改正とは
建設業法等改正(正式名を「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」といいます)とは、令和6年6月に国会で可決・成立した法律を指します。
同法の公布日は令和6年(2024年)6月14日ですが、施工日については「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日(ただし、一部は前倒しで施行)」とされています。
建設業法等改正法のポイント
建設業法等改正法(以下、「改正法」といいます)のポイントは、下記の通りです。
- 労働者の処遇改善
- 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
- 働き方改革と生産性向上
1.労働者の処遇改善
改正法において、労働者の処遇について下記の内容が定められました。
- 建設業者に対し、労働者の処遇確保を努力義務化し、国は当該処遇確保に係る取組状況を調査・公表すること
- 労務費等の確保・行き渡りのため、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告し、受注者及び注文者の双方に対し、著しく低い労務費等による見積書の作成、変更依頼を禁止すること(違反発注者には国土交通大臣等が勧告)
- 受注者における不当に低い請負代金による契約締結を禁止
1-1. 労働者の処遇確保を建設業者に努力義務化
改正法において、建設業者は、労働者がもつ知識・技能その他の能力について公正な評価に基づき、適正な賃金を支払うこと、その他の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう、努力義務が課されました(改正建設業法 第25条の27第2項)
建設業者に課されたのは「努力義務」であり、怠った場合の罰則規定はないものの、労働者の処遇改善への取組に期待できそうです。
1-2. 標準労務費の勧告
改正法において、国土交通省に設置された「中央建設業審議会」が労務費の基準を作成・勧告することが定められました。
現在、中央建設業審議会は下記の内容について、審議を行う役割を担っています。
- 経営事項審査の項目と基準について(建設業法 第27条の23第3項)
- 建設工事の標準請負契約約款について(同法第34条第2項)
- 工期に関する基準について(同法第34条第2項)
- 公共工事の入札・契約に関する「適正化指針」について(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 第17条第5項)
今回の改正法により、上記に「建設工事の労務費に関する基準の作成、実施を勧告する権限」が追加されました(改正建設業法 第34条第2項)
中央建設業審議会とは、学識経験者、建設業者、需要者の代表で構成される「建設業に関する中立・公正な審議会」を指します。
1-3. 適正な労務費の確保・行き渡り
建設業者は、材料費等のほか、施工に必要な経費の内訳を記載した材料費等記載見積書を作成する努力義務を負います。
改正法において、当該見積書に記載する材料費等の額を、通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものとしてはいけないことが明記されました(改正建設業法 第20条第2項)
また、注文者についても、見積書の交付後、その材料費等の額について、通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回る額への変更を求めてはならないことが明文化されています。
材料費等が適正でなければ、労務費を圧迫することとなるため、これらを防止する目的で設けられた規制だといえます。
1-4. 原価割れ契約の禁止を受注者に導入
改正法では、建設業者には、正当な理由がある場合を除いて、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額での請負契約の締結を禁止しています(改正建設業法 第19条の3)
2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
改正法において、資材高騰に伴う労務費について、下記の内容が定められました。
- 資材高騰など、請負代金・工期に影響を及ぼす事象がある場合、請負契約の締結までに受注者から注文者に通知することを義務化。また、資材価格変動時における請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として明確化
- 注文者に対し、当該リスク発生時は、誠実に協議に応ずることを努力義務化
2-1. 契約前のルール
改正法では、契約前の請負業者に対し、資材高騰等の請負金額に影響を及ぼす事象情報について、契約締結までの間に、注文者に提供する義務が規定されました(改正建設業法 第20条の2第2項)
これにあわせ、資材が高騰した際の請負金額等の変更方法も記載しなければならない点に注意が必要です(同法 第19条第1項8号)
2-2. 契約後のルール
契約後において、実際に工期・請負代金等に影響を及ぼす自体が発生した場合、あらかじめ提供された変更方法に基づき、請負業者から注文者に契約内容の変更に関する協議を申し込むことができます(改正建築基準法 第20条の2第3項)
この申出を受けた注文者は、正当な事由がある場合を除き、誠実に対応する努力義務を負います(同条第4項)
公共工事の場合、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象の発生により、請負業者から契約内容について変更の申出があったときは、各省庁の長等は、誠実に協議に応じる義務が課されました(改正公共工事適正化促進法 第13条第2項)
3.働き方改革と生産性向上
建設業法等改正法において、働き方改革・生産性向上について、下記の内容が定められました。
- 長時間労働を抑制するため、受注者における著しく短い工期による契約締結を禁止
- ICT活用等を要件に、現場技術者に係る専任規制や、公共工事における施工体制台帳提出義務を合理化
- ICT活用による現場管理の「指針」を国が作成し、特定建設業者や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化
3-1. 長時間労働の抑制
本改正により、請負側となる建設業者について、施工に通常必要と認められる期間に対し、著しく短い工期を設定する請負契約の締結を禁止されました(改正建設業法 第19条の5第2項)
また、公共性のある施設・工作物、多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事について、原則、選任の主任技術者および監理技術者の設置が義務づけられているところ、本改正では、ICTの活用等を要件に、専任技術者の設置義務緩和が規定されました(同法第26条第3項、第26条の5)
3-2. 公共工事の発注者に施工体制台帳の提出義務免除
本改正により、発注者が情報通信技術を利用する方法により、工事現場の施工体制を確認できる措置を講じたい場合、施工体制台帳の提出義務を免除する規定が置かれました(改正公共工事適正化促進法 第15条第2項)
従前は、公共工事の受注者に対し、施工体制台帳の作成・写しの提出が義務づけられていましたが(改正公共工事適正化促進法 第15条第1項、改正建設業法 第24条の8)、ICT活用による現場管理の効率化を目的として、このような緩和措置がとられる運びとなりました。
3-3. ICTを活用した生産性向上
本改正において、特定建設業者に対し、建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し、必要な措置を講ずる努力義務が課されました(改正建設業法 第25条の28第1項)
また、元請事業者に対し、当該工事の下請負人が同措置を講ずることができるよう、下請負人の指導を行うことも努力義務として定められています。
「情報通信技術の活用に関する措置」は、国土交通大臣が指針を定め、公表することになっているため(同法第25条の28第3項)、こまめに告示等を確認する必要があります。
【令和7年】建設業法等改正のポイントまとめ
当ページでは、改正建設業法・公共工事適正化促進法のポイントを解説しました。