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当ページでは、建設業で禁止される「一括下請負」に該当する場合と、注意点を解説します。
Contents
一括下請負の禁止とは
一括下請負の禁止とは、下記の条文で禁止される内容を指します。
建設業法 第22条(一括下請負の禁止)
- 建設業者は、その請負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
- 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない。
- 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設 又は 工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合においで、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
- 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。
要するに、下記に該当する下請負を禁止するとともに、公共施設を除く建設工事においては、発注者の書面(電子データでも可)があれば一括下請負が認められることを規定するものです。
- 元請業者に対する一括下請負
- 下請業者に対する一括下請負
一括下請負とは
建設業法における「一括下請負」とは、建設業者が請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせることを指します。
端的に言えば「丸投げ」ということです。
一括下請負の条件
下記の条件を満たす場合、建設業法により禁止される一括下請負に該当すると認められます。
- 注文者が建設業者であること
- 建設業者が請け負う建設工事であること
- 一括した建設工事であること
- 建設工事を請け負わせること
1. 注文者が建設業者であること
建設業法では、一括下請負の規制対象を「建設業者」「建設業を営む者」としています(第22条第1項、第2項)
1-1. 建設業者・建設業を営む者とは
「建設業者」とは、建設業許可を受けて建設業を営む者をいいます。
「建設業を営む者」とは、建設業を営む者をいい、建設業許可を受けていない者をいいます。
両者の違いは、建設業許可を取得しているかどうかですが、その有無にかかわらず、原則、建設業に携わる事業者すべてに一括下請負の禁止を課しています。
2. 建設業者が請け負う建設工事であること
一括下請負の禁止対象となる建設工事は、建設業者が請け負った建設工事に限られます。
請負契約とは、請負人がある仕事を完成することを約束し、注文者は、その仕事の対価として報酬を支払うことを約束することを指します(民法 第632条)
建設業における仕事の完成とは、「建設工事の完成」を指し、契約書の様式等に限らず、これを目的とするものは請負契約とみなされる点に注意しましょう(建設業法 第24条)
ちなみに…
「建設工事」とは、建設業法別表第一の上欄に掲げるものを指します。
3. 一括した建設工事であること
「一括下請負の禁止」とあるように、規制される対象となるのは一括の建設工事です。
建設業者が請け負った建設工事の完成について、誠実な履行が求められます。
したがって、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、下記に該当する場合は一括下請負に該当するものと考えられます(出典:一括下請負の禁止について(平成28年10月14日国土建第275条))
- 請け負った建設工事の全部 又は その主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
3-1. 実質的に関与とは
実質的に関与とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導を行うことをいい、具体的に下記を指します。
①発注者から直接建設工事を請け負った建設業者
施工計画の作成 | |
工程管理 | |
品質管理 | |
安全管理 | |
技術的指導 | |
その他 |
② ①以外の建設業者
施工計画の作成 | |
工程管理 | |
品質管理 | |
安全管理 | |
技術的指導 | |
その他 |
③ 単一の業者と下請負契約を締結するもの
下請業者が、請け負った建設工事と同一の種類の建設工事につき、単一の業者と下請負契約を締結する場合、下記をすべて実施する必要があります。
- 請け負った範囲の建設工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
- 自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議
- 下請負人からの協議事項への判断・対応
3-2. 技術者要件について
建設業者は、工事現場にて建設工事の施工上の管理をつかさどるものとして、監理技術者 又は 主任技術者等の「技術者」を置かなければなりません(建設業法 第26条第1項、第2項)
しかし、単に現場に技術者がいるだけでは義務を果たしたことにはなりません。
また、元請負人との間に直接的 かつ 恒常的な雇用関係がある技術者が現場に置かれない場合、「実質的に関与している」とはいえず、一括下請負とみなされる可能性があります。
一括下請負の該当性について、元請負人が請け負った建設工事1件ごとに判断することになります。
3-3. 主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合の具体例
「主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、下請負に出された建設工事の質・量を勘案し、個別に判断されます。
下記に、具体的な事例を挙げます。
- 建設物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は 他の業者に下請負させる場合
- 戸建住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての建設工事を1社に下請負させ、建具工事のみを元請負人が自ら施工し、 又は 他の業者に下請負させる場合
建設工事のうち、主要な部分を他人に任せ、元請負人がそれ以外の部分のみ施工する場合です。
3-4. 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合とは
「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、具体的に、下記のような場合を指します。
- 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の建設工事を一社に下請負させる場合
- 道路改修工事2kmを請け負い、そのうち500m分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その建設工事を1社に下請負させる場合
請け負った建設工事のうち、一部分だけ切り離しても本来の機能が損なわれない工作物について、一括して他の業者に任せてしまう場合です。
4. 建設工事を請け負わせること
建設業者には、請け負った建設工事を一括して他人に「請け負わせること」を規制しています(建設業法 第22条第1項)
この点、請負ではなく「委任」の形なら一括下請負に該当しないようにも思えます。
4-1. 請負契約と委任契約の違い
請負契約の目的が「仕事の完成」であるのに対し、委任契約の場合、仕事の完成ではなく、一定の行為が目的である点で異なります。
しかしながら、建設業法での請負契約は非常に幅が広く、実務上これを根拠に下請に出すのは危険だと思われます。
一括下請負に該当した場合の罰則
一括下請負を行った場合、行政処分の対象となります。
(1) 指示 及び 営業停止
建設業許可を取得した建設業者が一括下請負を行った場合、国土交通大臣 または 都道府県知事より指示処分が出されます(建設業法 第28条)
この指示に従わない場合、1年以内の期間を定め、営業停止処分となる可能性があります。
(2) 特に悪質な場合
一括下請負の禁止規定に違反した建設業者のうち、その情状が特に重い場合や、営業停止処分に違反した場合、建設業許可の取り消し処分となる場合があります(建設業法 第29条)
受注した建設工事を一括して他人に請け負わせることは、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る行為であることから、一括下請負の禁止に違反した建設業者に対しては厳正に対処されます。
建設業の禁止事項「一括下請負」に該当する場合、具体例まとめ
当ページでは、建設業で禁止される「一括下請負の禁止」に該当する場合と注意点について、具体例を踏まえて解説しました。