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当ページでは、遺産分割前の預貯金債権の払戻し制度で引き出せる金額、必要な手続、注意点を解説します。
Contents
預貯金債権の払戻し制度とは
預貯金債権の払戻制度とは、遺産分割の対象となる預貯金について、遺産分割の前でも一定金額まで払戻しを受けられる制度を指します(民法 第909条の2)
原則、分割前の遺産は相続人全員の共有となり、遺産に含まれる預貯金の取扱いには、都度、相続人全員の同意が必要です(民法 第898条、第251条)
しかし、一定の範囲内であれば、相続人が単独で預貯金を引き出すことができ、引き出した預貯金は当該相続人が取得したものとみなされ、後に返還する義務を負いません(民法 第909条の2)
遺産分割前に仮払いを受けられる金額
預貯金債権の払戻し制度で認められる仮払い金額は、相続人の生活費、被相続人の葬儀費用等を賄うために認められる範囲です。
上限額の計算方法
預貯金債権の払戻し制度で受けられるのは、下記のうち低い金額となります。
- 預貯金債権額×3分の1×相続人の法定相続分
- 150万円
上記は、1つの金融機関についての上限であり、被相続人が複数の金融機関に口座を保有している場合、各機関で上限額まで引き出すことができます。
預貯金債権の払戻しに必要な手続
預貯金債権の払戻しを受けるには、下記の手続が必要です。
1. 仮払い申請
被相続人の口座がある金融機関に対し、預貯金債権の払戻しを申し出ます。
2. 必要な書類
預貯金債権の払戻し申請において、下記の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍(除籍)謄本
- 相続人全員の戸籍抄本(個人事項証明書) または 謄本(全部事項証明書)
- 預貯金の払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書
戸籍書類について、法務局が交付する「法定相続情報一覧図の写し」で代用することも可能です。
預貯金債権の払戻しを請求する際の注意点
預貯金債権の払戻しを請求する場合、下記に注意しましょう。
1. 法定単純承認が成立する可能性がある
預貯金債権の払戻し制度により引き出した金額は、相続財産に含まれるものです。
このため、払戻しを受けた金額を消費すると、法定単純承認が成立する可能性があります(民法 第921条1号)
法定単純承認が成立すると、相続放棄・限定承認が認められなくなります。
相続放棄 または 限定承認を検討している場合、預貯金債権の払戻しは割けるのが賢明かもしれません。
2. 払戻しを受けた預貯金の使途
ただし、払戻しを受けた預貯金を相続人全員のために使用した場合、法定単純承認は成立しないと考えられています。
このため、後に使途を証明できる領収書等の書類は保管し、第三者に説明できるようにしておきましょう。
払戻し金額が足りない場合
預貯金債権の仮払い制度を利用してもなお、葬儀等の必要資金が工面できない場合、家庭裁判所に仮分割の仮処分を申立てる方法があります。
この場合、遺産分割調停 または 審判の申立てがされていることが前提となりますが、民法上の払戻制度の上限に関係なく、預貯金の払戻しを受けられる可能性があります(家事事件手続法 第200条第3項)
ただし、預貯金債権の仮払い制度とは異なり、係属中の遺産分割調停 または 審判の行方により、払戻し金額を返還する義務を負う可能性もある点に注意しましょう。
相続人全員が同意している場合、預貯金債権の払戻制度の上限額に関係なく、被相続人の預貯金を引き出すことも可能です(民法 第251条)
預貯金債権の払戻し制度で引き出せる金額、必要な手続、注意点 まとめ
当ページでは、預貯金債権の払戻し制度で引き出せる金額、必要な手続、注意点を解説しました。