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当ページでは、振り込め詐欺の被害に遭った際に受けられる「被害回復分配金」の支払要件、注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
振り込め詐欺の被害に遭った場合
振り込め詐欺の被害に遭った場合、振込先の金融機関、警察に連絡し、振り込んだ預金口座等の取引停止を求めましょう。
これらの機関にすぐ連絡をすることで、振り込め詐欺救済法にもとづく「被害回復分配金」の支払を受けられる可能性があります。
振り込め詐欺救済法とは
振り込め詐欺救済法とは、振り込め詐欺等の被害者を救済する目的で定められ、犯罪に利用された口座に振り込んだ被害金の支払について規定するものです。
被害回復分配金が返還されるまでの流れ
被害回復分配金の支払申請から返還まで、下記の流れで行われます。
- 口座の凍結
- 口座の名義人がもつ口座残高に関する権利を消滅させる手続開始の公告(60日以上)
- 口座の名義人がもつ口座残高に関する権利 消滅の公告
- 被害回復分配金を支払う旨の広告と、請求受付機関(30日以上)
- 被害回復分配金の支払
(1)口座凍結の要件
預金口座等が犯罪に利用されたと疑うに足る相当な理由があるかどうかは、金融機関が下記の事由等により判断します。
- 捜査機関等からの情報提供
- 捜査機関等からの情報等に基づいた調査の結果
- 名義人の所在等の状況調査結果
- 取引状況 など
ただし、当該預金口座等に払戻しの訴えが提起されている場合や、強制執行、仮差押え、仮処分の手続、担保権の実行、国税滞納処分等の手続が行われている場合には、手続の対象外となる可能性があります。
(2) 権利消滅の公告方法
口座の名義人がもつ口座残高に関する権利を消滅させる手続開始の公告は、インターネット上において、預金保険機構ホームページ上で行われます。
公告される内容は、下記の通りです。
- 対象預金口座等のある金融機関、店舗、預金等の種別、口座番号
- 対象預金口座等の名義人 氏名(名称)
- 対象預金等債権の額
- 権利行使の届出期間、方法
被害回復分配金を支払う旨の公告では、下記の内容が記載されます。
- 対象預金口座等のある金融機関、店舗、預金等の種別、口座番号
- 対象預金口座等の名義人 氏名(名称)
- 消滅預金等債権の額
- 支払申請期間、方法
- 被害者から振込が行われた時期 など
支払手続に関する公告の期間は30日以上なので、振込先の金融機関に被害を申出ていない場合には、忘れず確認しましょう。
被害回復分配金の請求ができる人
被害回復分配金の請求ができるのは、下記をすべて満たした人です。
- 請求の対象となる犯罪行為の被害者
- 下記のア、イのいずれか、または 両方の口座残高が1,000円以上残っている場合
ア 被害額を振り込んだ振込先の口座残高
イ 被害額を振り込んだ口座から被害金が他の口座に移転している場合、移転先口座の残高
(1) 請求の対象となる犯罪行為
請求の対象となる犯罪行為とは、下記を指します。
- オレオレ詐欺
- 融資保証金詐欺
- 架空請求詐欺
- 還付金等詐欺
- ヤミ金被害(恐喝)等
他人の財産を害する罪の犯罪行為であって、その財産を得る方法として、被害者からの預貯金口座等への振込み(送金)が行われたものが対象となりますが、郵送・直接犯人に手渡した被害金は、振り込め詐欺救済法の対象外となる点に注意しましょう。
被害回復分配金の支払いを受ける方法
被害回復分配金の支払を受けるには、所定の申請書に本人確認資料、被害振込の受取書等を添付し、金融機関に申請する必要があります。
申請ができるのは、捜査機関等に通報し、公告手続・公告期間が経過後に行われる「請求受付期間」です。
申請書は、最寄りの金融機関 または 預金保険機構や金融庁ホームページからダウンロードすることができます。
(1) 本人確認資料
本人確認資料とは、下記に該当するものをいいます。
- 運転免許証
- 外国人登録証明書
- 住民基本台帳カード など
いずれも、申請日において有効であることが求められますので、有効期限等に気を付けましょう。
法人の場合、登記事項証明書、申請日前6か月以内に作成した印鑑登録証明書等を提出します。
(2) 申請手数料
被害回復分配金の申請に、手数料はかかりません。
(3) 申請方法
申請書、添付書類は、振込先の金融機関に持参 または 郵送にて提出しましょう。
振込を行った金融機関からの提出も可能です。
万が一、被害者の決定確定前に被害者が亡くなった場合、死後に被害者であることが認められれば、相続人が被害回復分配金の支払を受けられる可能性があります。
被害回復分配金の支払決定後に被害者が亡くなった場合も同様に、相続人が支払を受けられる可能性がありますので、届出先の金融機関等に確認しましょう。
(4) 申請期間中に申請できなかった場合
申請期間内に申請できなかった場合、振り込め詐欺救済法による被害回復分配金の支払は受けられないため、民事上の請求等により損害賠償額を請求する方法を検討しましょう。
被害回復分配金の支払を受けた場合、損害賠償請求権 その他の請求権について、受けた支配額分だけ権利が消滅するものと考えられています。
支払上限額
振り込んだ資金が相手口座に残っている場合、その金額を基に被害回復分配金が支払われます。
いっぽう、至近の一部 または 全部が既に引き出されている場合、口座の残高が返金上限額となります。
また、同じ口座について被害回復分配金の申請者が複数いる場合には、口座残高に対し、被害額により按分した金額が支払われるため、必ずしも全額が支払われるわけではない点に注意しましょう。
被害回復分配金に税金はかかるのか
支払われる被害回復分配金について、税金が課されることはありません。
ただし、所得税の確定申告において、ヤミ金等の被害額を事業所得等の必要経費に算入している場合は、修正申告により、事業所得等の金額を訂正する必要があることに注意しましょう。
被害者になりすまして申請をした場合
対象となる犯罪の被害者ではない人が被害者を装い、振り込め詐欺救済法による被害回復分配金の支払を請求した場合、刑法上の詐欺(未遂)罪に該当し、10年以下の懲役、虚偽申請罪に該当した場合は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
また、不正に被害回復分配金の支払を受けた場合、被害回復分配金を金融機関に返還する義務を負います。
振り込め詐欺の被害に遭った場合の対処法、注意点 まとめ
当ページでは、振り込め詐欺の被害に遭った場合の対処法と注意点を解説しました。