当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、保佐人・保佐監督人の権限と、保佐人の選任を検討すべき場面、成年後見人との違いを解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
保佐人とは
保佐とは、病気や障害により判断能力が著しく低下した人の財産・権利を保護する制度を指します。
保佐人は、家庭裁判所が選任した被保佐人の支援・保護の役割を担う人をいいます。
保佐監督人の選任
保佐人には、代理権、同意見等の権限が与えられますが、当権限が濫用された場合、被保佐人(本人)が重大な不利益を被る可能性があります。
本人は判断能力が低下しており、保佐人の権限濫用をコントロールできないことが予想されます。
このことから、第三者が保佐人を監督する必要が生じた場合、保佐人を監督する役目を担うのが「保佐監督人」です。
保佐監督人の役割
保佐監督人を選任するのは、家庭裁判所です(民法 第876条の3 第1項)
選任された保佐監督人は、下記の役割を担います。
- 保佐人の事務を監督すること
- 保佐人が書けた場合、遅滞なく、新たな保佐人の選任を家庭裁判所に請求すること
- 急迫の事情がある場合、必要な処分をすること
- 保佐人 被保佐人が利益相反関係になる場合、被保佐人を代表すること
- 財産の調査 及び 財産目録の作成に立ち会うこと
- 保佐人に保佐事務の報告を求め、被保佐人の財産状況等を調査すること
- 保佐人が被保佐人に代わり、営業 または 民法第13条 第1項 各号に掲げる行為(元本の領収を除く)等をする場合、同意すること
- 保佐人の解任請求
保佐開始の要件
保佐開始の要件は、本人が「精神上の障害により 事理を弁識する能力が著しく不十分であること」です(民法 第11条)
保佐人を選任すべき場面
保佐人の選任を検討すべきなのは、他者の支援がなければ、契約等の意味・内容を理解できず、判断ができないほど判断能力が低下している場合です。
- 浪費傾向にある
- 親族の相続手続を控えている
- 不動産等、大規模な取引を控えている など
保佐人の権限
保佐人の権限は、下記に分類されます。
- 同意権
- 取消権
- 代理権
1.同意権・取消権
保佐人は、被保佐人の行為についての「同意見」「取消権」をもちます。
このため、被保佐人が下記の行為をする場合、保佐人に同意を得る必要があります。
行為 | 概要 |
---|---|
元本を領収 または 利用すること | |
借財 または 保証すること | |
不動産 その他 重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること | |
訴訟行為をすること | |
贈与、和解、仲裁に合意すること | |
相続の承認、放棄、遺産分割をすること | |
贈与の申込の拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みを承諾 または 承認すること | |
新築、改築、増築、大修繕すること | |
一定期間を超える賃貸借をすること | (1)樹木の栽植 または 伐採を目的とする山林の賃貸借:10年 (2)前号以外の土地の賃貸借:5年 (3)建物の賃貸借:3年 (4)動産の賃貸借:6か月 |
上記に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人として行うこと |
上表に掲げる行為を同意を得ることなく行った場合、被保佐人・保佐人ともに、その行為を取消すことができます。
ただし、日用品の購入 その他 日常生活に関する行為については同意なく行うことができ、取消しの対象とはなりません。
2.代理権
前述の行為のうち、申立権者等の請求により、家庭裁判所が審判で決定したものに限り、保佐人に、被保佐人の代理権を認めることができます(民法 第876条の4 第1項)
ただし、下記に該当するものについて代理することはできません。
- 婚姻、離婚
- 養子縁組、離縁
- 医療行為等の同意
- その他 選挙権の行使(投票)など
代理権付与の審判を申立てられるのは、下記に該当する人です。
- 本人
- 本人の配偶者
- 四親等内親族
- 後見人
- 後見監督人
- 保佐人
- 保佐監督人
- 補助人
- 補助監督人
- 検察官
本人以外が審判を請求するには、本人の同意が必要です(民法 第876条の5 第2項)
保佐人・保佐監督人の報酬
保佐人・保佐監督人に対し、家庭裁判所は、被保佐人の財産から報酬を与えることができます(民法 第862条/第876条の3)
報酬額について法律に定めはないため、保佐の事務内容、被保佐人の財産状況を勘案し、裁判官が妥当な金額を算出します。
保佐人の場合、月額2万円
保佐監督人の場合、月額1万円から3万円が目安とされています。
保佐の終了時期
下記に該当する場合、保佐は終了を迎えます(民法 第876条の5)
- 被保佐人の死亡
- 被保佐人の判断能力の回復 または 憎悪し、保佐開始の審判が取消された場合
被保佐人の死亡後、相続人が相続財産を管理できるまでの間、保佐人は下記の行為を行うことができます。
- 相続財産のうち、特定の財産の保存に必要な行為
- 相続財産に含まれる債務の弁済(※弁済期が到来しているもののみ)
- 死体の火葬・埋葬に関する契約締結(※事前に家裁の許可が必要)
- その他 相続財産の保存に必要な行為
保佐人と成年後見人の違い
成年後見人も、保佐人と同様、判断能力が低下した本人の財産・生活を保護する役割を担いますが、下記の点で異なります。
- 本人の判断能力
- 権限の範囲
1.本人の判断能力
成年後見人の場合、選任は「本人が精神上の障害により 事理を弁識する能力を欠く常況にあること」が求められます(民法 第7条)
保佐人選任の要件は「本人が精神上の障害により 事理を弁識する能力が著しく不十分であること」でしたね。
2.権限の範囲
成年後見人の場合、保佐人が与えられる同意権・取消権(民法 第13条第1項)、代理権の付与を審判で求めなければならない等の事情はなく、財産に関する全ての法律行為について代理権をもちます。
保佐人・保佐監督人の権限、成年後見人との違い まとめ
当ページでは、保佐人・保佐監督人の権限、成年後見人との違いを解説しました。