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農地の相続手続と注意点を解説

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筆者プロフィール

榊原 沙奈さかきばら さな(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること

農地の相続手続

被相続人の遺産に「農地」が含まれる場合、下記の点が他の土地と異なります。

  1. 農地法の規制対象
  2. 取得時に届出が必要

1.農地法の規制

農地法とは、農地を守る法律で、農地を売買・転用する際のルール等が定められています。

このため、通常の土地よりもかかる規制が厳しい場合もありますので、事前に確認しましょう。

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2.取得時に届出が必要

通常、農地の権利が移転するには、農地法による許可が必要ですが、相続の場合、許可ではなく「届出」が必要となります。

届出先は、農地の所在地を管轄する市区町村に設置される農業委員会で、相続したときから一定期限内に行う必要があります。

法務局で行う「登記」の後に行う手続です。

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農地の評価方法

相続税を計算する際、農地を評価する必要があります。

農地は、下記に分類され、対応する計算方法にて算出します。

1.純農地

純農地とは、農業地区域内の農地、第1種農地、甲種農地に該当するものをいいます。

評価方法は「評価倍率方式」によります。

2.中間農地

中間農地とは、第2種農地とこれに準ずる農地をいい、評価は「倍率方式」によります。

3.市街地周辺農地

市街地周辺農地とは、第3種農地とこれに準ずる農地をいいます。

評価時は、当該農地が市街地農地だった場合の80%相当額として算定します。

4.市街地農地

市街地農地とは、転用許可を受けた農地、市街化区域内にある農地、転用許可不要の農地として都道府県知事の許可を受けた農地をいいます。

評価方法は「宅地批准方式」「倍率方式」のいずれかによります。

宅地批准方式とは、対象農地を宅地転用したものと仮定し、1㎡あたりの価格から造成費用を控除して計算する方法をいいます。

農地の相続税納税猶予の特例

農地を相続する相続人が引き続き農業を行う場合、農地の「相続税の納税猶予の特例」の対象となる可能性があります。

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1.適用要件

相続税の納税猶予の適用を受けるには、下記の要件を満たす必要があります。

1-1.被相続人要件

本特例の適用を受けるには、被相続人が下記のいずれかに該当する必要があります。

  1. 死亡日まで農業を営んでいた
  2. 農地等の生前一括贈与をした
  3. 死亡日まで特定貸付け等を行っていた
  4. 死亡日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人 または 農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、営農困難時貸付をし、税務署長に届出をした人

1-2.相続人要件

本特例の適用を受けるには、相続人が下記のいずれかに該当する必要があります。

  1. 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人
  2. 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金 または 経営移譲年金の支給を受けるため、その推定相続人の1人に対し、農地等について使用貸借による権利を設定し、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人
  3. 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、営農困難時貸付けをし、税務署長に届出をした人
  4. 相続税の申告期限までに特定貸付け等を行った人

1-3.農地等の要件

本特例の対象となる農地は、下記のいずれかに該当し、相続税の期限内申告書に本特例の適用を受ける旨を記載する必要があります。

  1. 被相続人が農業の用に供していた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割された農地等
  2. 被相続人が特定貸付等を行っていた農地 または 採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割された農地 または 採草放牧地
  3. 被相続人が営農困難時貸付を行っていた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割された農地等
  4. 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で、被相続人の死亡時まで贈与税の納税猶予 または 納期限の延長の特例の適用を受けていた農地等
  5. 相続、遺贈により財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地等

出典:「農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(相続税の申告のしかた(令和5年分用)(抜粋))」を一部編集して掲載

2.納税猶予の対象額

本特例の適用により、納税が猶予される税額は下記にて算出します。

  1. 通常の評価額による相続税(A)
  2. 農業相続人が相続する特例農地等を農業投資価格で評価した場合の相続税額(B)
  3. (A)、(B)の差額を猶予

農業投資価格とは、農業に使用することを前提に設定した売買価格をいい、国税局が都道府県、地目ごとに設定しています。

通常の宅地等に比べ、低く設定されています。

3.必要な手続

本特例の適用を受けるには、下記の手続が必要です。

  1. 相続税の申告手続
  2. 納税猶予期間中の継続届出

3-1.相続税の申告手続

本特例の適用を受けるには、相続税の申告書を期限内に提出し、農地等納税猶予税額 および 利子税の額に対応する担保を提供する必要があります。

利子税は下記の通りです。

区分利子税
相続 または 遺贈による取得日において、都市営農農地等であるものをもつ農業相続人年3.6%
(1)相続 または 遺贈による取得日において、市街化区域内農地等に対応する部分の金額を基礎とする部分
(2) (1)以外の部分
(1)年6.6% 

(2)年3.6%

各年の利子税特例基準割合が7.3%未満の場合、その年中において、下記の算式により計算した割合が適用されます。

6.6% または 3.6%×利子税特例基準割合÷7.3%

3-2.納税猶予期間中の継続届出

本特例の適用を受ける農業相続人は、農地等納税猶予税額の全部について免除されるまで または 全部について納税猶予が打ち切られるまでの間、相続税の申告期限から3年ごとに「継続届出書」を提出する必要があります。

継続届出書の提出を怠った場合、本特例の適用は打切りとなり、納税猶予税額、利子税を納付しなければならないため、農地転用等を考えている場合には慎重な検討が必要です。

農地を相続放棄する場合

農地を相続放棄する場合、他の遺産もすべて相続できなくなる点に注意しましょう。

残念ながら、農地のみを相続放棄して他の遺産を相続することは不可能です。

また、相続人全員が相続放棄をした場合でも、相続財産清算人が管理を引き継ぐまでの間、農地の管理義務を負います。

農地の相続手続と注意点まとめ

当ページでは、農地の相続手続と注意点を解説しました。

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カテゴリー: 相続・相続税


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