当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、自己破産すると起きること、注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
自己破産とは
自己破産とは、支払不能 または 債務超過の状態にある場合、裁判所に申立て、抱える債務(借金)を免除してもらう手続をいいます。
端的に言えば、債務者の再起を図るための法的手続きだといえます。
自己破産のメリット
自己破産手続によるメリットは、下記の通りです。
- 支払請求、督促がなくなる
- 返済義務を免れる
- 財産の一部は手元に残る
1.支払請求、督促がなくなる
自己破産手続を弁護士等の専門家に依頼した場合、債権者である金融機関等に「受任通知」を発出します。
受任通知とは、受任者である弁護士等から債権者に対し、破産手続に関し、自らが窓口となる旨を知らせるものです。
金融庁により、受任通知を受け取った債権者は、債務者への直接的な接触を禁じられています。
このため、受任通知を送った段階で債権者からの取り立ては止み、訴訟を提起されたり、強制執行を行われることもありません。
2.返済義務を免れる
自己破産手続が認められると、返済義務の免除が行われます。つまり、借金はなくなります。
ただし、下記の債務は残る点に注意しましょう。
- 税金
- 社会保険料
- 養育費
- 損害賠償金など
3.財産の一部は手元に残る
自己破産手続を行った場合、すべての財産がなくなるわけではありません。
破産法において、下記の財産は手元に残ります。
- 99万円以下の現金(預貯金を除く)
- 20万円未満の預貯金
- 差押えが禁止されるもの
自己破産を行う際の注意点
自己破産を検討される際は、下記に注意しましょう。
- 一部を除き、財産が処分される
- 職業、資格等に制限を受ける
- ブラックリストに登録される
- 官報に掲載される
- 保証人に一括請求される
1.一部を除き、財産が処分される
原則、100万円以上の現金、20万円以上の預貯金、その他生活に必要なもの以外は全て処分対象です。
2.職業、資格等に制限を受ける
自己破産後、復権を得るまでの期間、一定の職業、資格等について制限を受けます。下記は一例です。
- 貸金業登録
- 行政書士
- 銀行、信用金庫等の役員(取締役、監査役等)
- 警備員、警備業者
- 公安審査委員会の委員長、委員
- 公証人
- 公認会計士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 商工会議所の会員
- 生命保険外交員(募集人)
- 税理士
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 弁護士など
一般の会社員、公務員、医師、看護師、薬剤師、教員等は制限を受けることはありません。
3.ブラックリストに登録される
自己破産を行うと、信用情報機関が管理する個人信用情報に「事故情報」として登録されます。
この結果、新規借入、クレジットカードの新規契約、住宅や自動車に関するローン等が組めなくなるほか、スマートフォンの端末代金を分割購入することもできません。
ただし、一定期間の経過により、事故情報は消去されます。
4.官報に掲載される
官報とは、国が発行する機関紙をいい、行政機関の休日を除いて毎日発行されます。
官報の主な役割は、法令の公布、公告です。
自己破産に関する公告では、下記の情報が掲載されることになります。
- 手続をした裁判所
- 手続をした年月日
- 氏名
- 住所
- 自己破産の事実
掲載のタイミングは、破産手続開始決定時、免責許可決定時の2回です。
官報の主な閲覧者は、
(1)信用情報機関
(2)市区町村役所の税務担当者
(3)一部ヤミ金業者
(4)行方不明者の親族
だと推察され、友人知人皆に知れ渡る可能性は低いです。
5.保証人に一括請求される
自己破産を行った場合、債務者本人に対する支払督促等は止みます。
しかし、保証人に対しては一括請求することができ、担保等が設定されている場合には執行される可能性があります。
保証人を巻き込みたくない場合、一緒に債務整理等を行うのが賢明かと思われます。
自己破産すると起こること
自己破産をすると、下記の変化が起こります。
- 奨学金
- 養育費
- 係属中の裁判
- 賃貸借契約
- 自宅の所有権
- 自家用車
- 会社、事業への影響
- 給与、退職金
- 家族への影響
1.奨学金
自己破産をした場合、奨学金の返済義務も免れます。
ただし、保証人、連帯保証人に対して一括請求が行われる可能性が高いです。
自己破産の前に保証人には話をしておきましょう。
2.養育費
自己破産をした場合、養育費の支払義務は免れません。
なぜなら、養育費は借金ではないからです。
もらう側の自己破産について、ほとんどの場合は変わりなく受け取ることができますが、一部制限される場合もあります。
3.係属中の裁判
自己破産手続の前に訴訟を行っていた場合、破産に関する裁判は中断されます。
いっぽう、破産と関係のない裁判は引き続き行われます。
4.賃貸借契約
自己破産を行った場合、自己破産の事実のみで、賃貸物件に入居できなくなることはありません。
ただし、信販系の家賃保証会社を使う場合、信用情報を照会され、ブラックリストに掲載されていることを理由に審査が不利になる可能性はあります。
この場合、家賃保証会社を使わず、連帯保証人等を立てる方法等を検討しましょう。
5.自宅の所有権
自己破産を行う際、持ち家を所有している場合は処分対象です。
賃貸の場合、敷金回収を目的として、賃貸借契約を解約する事例もあります。
6.自家用車
自家用車について、ローン完済済の場合には処分対象となります。
いっぽう、ローンが残っている場合、自己破産による支払不能を理由にローン会社が引き取ります。
例外として、完済済の自家用車のうち、査定額が20万円以下の場合には手元に残る可能性があります。
7.会社、事業への影響
自己破産をした場合、通常は勤務先に知られることはありません。
ただし、自己破産手続において「退職金見込証明書」等の書類を取得する場合、発行理由を尋ねられることがあります。
自営業の場合、自己破産を理由に廃業しなければならないという規定はありませんが、事業用資産の一部を処分される可能性があり、結果的に廃業せざるを得ない可能性もあります。
一部の職業には規制もあるため、自身の事業にどの程度の影響があるのか慎重に検討しましょう。
8.給与、退職金
給与のうち、4分の3は差押えが禁止されているため、自己破産を行う場合、4分の1は回収される可能性があります。
退職金も同様で、自己破産手続開始時点で退職した場合、退職金の4分の1を支払う必要があります。
給与や退職金については、裁判所により取扱いが異なるため、手続時にご確認ください。
9.家族への影響
自己破産手続において、家族の協力が必須ですが、直接影響を受けるのは破産者のみです。
ただし、家族所有の財産について、購入資金等を提供したのが破産者だった場合、処分の対象となる場合があります。
また、破産手続き後において、破産者本人は契約行為を行うことができないため、家族名義で生活をする等の影響は考えられます。
自己破産手続の流れ
下記に、自己破産手続の流れをご紹介します。
- 弁護士等の専門家に相談、依頼
- 自己破産、免責の申立て
- 破産審尋
- 破産手続開始決定(官報掲載)
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 官報掲載
「3.破産審尋」とは、裁判官が債務者本人に対し、返済能力の有無をはかる目的で話を聞きます。
「5.免責審尋」とは、免責の妥当性を判断するために行われる手続で、端的に言えば、人間性を見られます。
自己破産をすると起きること、注意点まとめ
当ページでは、自己破産をすると起きること、注意点を解説しました。