当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、令和6年(2024年)1月に日本公証人連合会の公式サイト上に公開された「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します」ページより、定款作成支援ツール等の概要、利用時の注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
起業家向けの新制度
令和6年(2024年)1月、日本公証人連合会の公式サイト上に「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します」というタイトルにて、特設ページが公開されました。
当該ページには下記の項目が記載されています。
- 「定款作成支援ツール」の公開
- 48時間処理
- Web会議の原則化
1.定款作成支援ツールの公開
1-1.定款作成支援ツールとは
定款作成支援ツールとは、下記の特徴をもつシステムです。
- 小規模でシンプルな株式会社の設立希望者向け
- 定款案の作成を選択式にすることで容易に
- 定款認証に必要な書類の一部を出力可能
- 定款案の48時間処理
1-1.定款作成ツールで使用されるフォーマット
定款作成支援ツールは「発起人1名用」「発起人3名以下用」に分類され、いずれもZip形式ファイルをダウンロードして使用します。
定款作成ツールに表示される入力項目は、下記の通りです。
- 発起人、定款作成者等に関する事項
- 設立する会社の商号、本店所在地、設立登記申請予定日
- 公告の方法
- 株式・出資に関する事項
- 株主総会に関する事項
- 取締役に関する事項
- 目的
- 嘱託先の公証役場名
法人の設立に必要な定款認証は、会社の本店所在地を管轄する法務局、または、地方法務局に所属する公証人に頼まなければならないため、事前に確認しましょう。
上記のほか、次の事項が自動で記載されます。
内容 | |
---|---|
株式関係 | (1)株券の不発行 (2)相続人等に対する売渡請求 (3)株主名簿記載事項の記載、または、記録の請求 (4)質権の登録および信託財産の表示の請求 (5)上記(3)、(4)の手数料 (6)基準日 (7)株主の氏名等の届出 |
株主総会関係 | (1)株主総会の招集時期、招集権者、議長、決議、議事録 (2)株主総会の決議および報告の省略 |
取締役関係 | (1)取締役の資格、選任 (2)代表取締役の選定等 (3)取締役の報酬および退職慰労金 |
計算関係 | 剰余金の配当、除斥期間 |
1-2.定款作成支援ツールで出力できる書類
このツールを使用して出力できる書類は、下記の通りです。
- 定款案
- 実質的支配者申告書
- 委任状(代理人に委任する場合のみ)
実質的支配者申告書は、定款認証の際、公証人に申告が必要な内容の1つです。
実質的支配者は、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な個人を指します。
2.48時間処理
株式会社を設立するには、設立しようとする法人の定款について、公証人の認証を受ける必要があります。
この認証手続について、定款作成支援ツールを使用する場合、48時間以内に手続を完了させる運用がなされており、これを「48時間処理」といいます。
2-1.48時間処理の要件
48時間処理を利用するには、下記をすべて満たす必要があります。
- 東京都または福岡県に本店を置く株式会社の設立であり、対応する公証役場において、定款認証の嘱託をすること
- 下記の方法で作成した定款であること
(1)定款作成支援ツールで作成した定款
(2)定款作成支援ツールを二次利用した民間サービス(日本公証人連合会が許可したものに限る)で作成した定款 - 発起人3名以下の個人であること
- 定款作成者が定款に、マイナンバーカードの署名用電子証明書を利用して電子署名していること
- 定款認証の嘱託に先立ち、公証人に対し、認証に必要な資料、特別処理(48時間処理)を希望する旨の申請書を提出すること
2-2.48時間の考え方
48時間処理における「48時間」とは、次の考え方に基づくものです。
- 48時間の起算点は、必要な資料がすべて公証役場に到達したとき
- 48時間の算定において、土日祝日は除く
- 平日の業務時間(8:30~17:15)終了後、または、土日祝日にメールが到達した場合、翌営業日の午前8時30分に到達したとして扱う
- 委任状を書面に印刷し、押印する方法で作成した場合、48時間の算定方法が電子委任状の場合と異なる
4.委任状を書面にて作成する場合の算定例は下記の通りです。
電子データにて作成した場合は、下記の通りです。
両者を比較すると、書面のほうがプロセスが多く、時間がかかることが一目瞭然です。お急ぎの場合、早めに準備しましょう。
3.Web会議の原則
定款認証の手続では、公証人の面前審査を受ける必要があります。
面前審査とは、本人確認、法人設立の意思確認等をいいます。
この面前審査について、利用者が希望しない限り、Web会議にて行うことを原則とした「Web会議の原則」です。
3-1.Web会議を利用する際の流れ
Web会議を利用した定款認証手続は、次の流れで行います。
- 定款の作成・事前チェック
- 正式申請
- Web会議での面前審査
- 認証完了
1.定款の作成・事前チェック
定款を作成したら、公証役場にメールにて送信し、公証人による事前チェックを受けましょう。
定款作成支援ツールを作成する場合、48時間処理の対象となり、利用希望者はあらかじめ申出る必要があります。
2.正式申請
事前チェックを終えたら、オンライン申請システムにて正式申請を行います。
このとき、公証役場と面前審査の日程を調整し、当日までに手数料を支払います。
公証役場からWeb会議専用のURLが送られるため、確認しましょう。
3.Web会議での面前審査
予約日時において、専用URLにアクセスして面前審査を受けます。
面前審査では、身分証明書を確認されますので、手元に準備しておきましょう。
Web会議では、FacePeer社のFaceHubを使用し、下記のブラウザから接続できるため、専用アプリ等のインストールは不要です。
【パソコン】Windowsの場合:Google Chrome、Firefox、Microsoft Edge/Macの場合:Google Chrome、Firefox、safari
【スマホ、タブレット】Androidの場合:Google Chrome/iOS、iPadOSの場合:safari
4.認証完了
認証完了後、メール、または、オンライン申請システムのいずれか好きなほうで、認証済の定款データを受領します。
定款作成支援ツールを利用する際の注意点
日本公証人連合会が公開する定款作成支援ツールの対象は、あくまで「小規模でシンプルな形態の株式会社」の設立です。
更に、本ツールを利用して作成できる定款案は一例に過ぎません。
法人は、定款内容に従った事業運営を求められるため、定款に違反した場合、法的な責任を問われることもあります。
会社設立後、定款内容を変更することも可能ですが、この場合、一定の手続と時間、費用がかかります。
このため、本ツールを利用する際は、自身が作成しようとする法人に合った内容かどうか、きちんと確認しましょう。