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本記事では、インターネット上における誹謗中傷コメントへの対処法を解説します。
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誹謗中傷とは
誹謗中傷とは、法律用語ではなく、法律上に定義されているものではありません。
一般的には、他人を傷付ける目的で嘘、または、誇張した情報、悪意を伴う批判を行うことをいいます。
批判と誹謗中傷の違い
批判とは、問題点や欠点を指摘し、発言者の考えや意図を伝えることをいいます。
当該発言の目的は、問題や欠点の改善、議論であるのが一般的で、論理的な根拠に基づいた内容となります。
これに対し、誹謗抽象の目的は相手を傷付けることにあり、虚偽・誇張した情報を主観的に相手にぶつける場合がほとんどです。
批判 | 誹謗中傷 | |
---|---|---|
真実性、信憑性 | あり | なし |
悪意 | なし | あり |
攻撃性 | なし | あり |
人格否定 | なし | あり |
誹謗中傷被害に遭った場合の対処法
誹謗中傷被害に遭った場合、下記の措置をとりましょう。
- ミュート・ブロック機能の活用
- SNS事業者等への削除請求
- 刑事告訴、損害賠償請求
1.ミュート・ブロック機能の活用
誹謗中傷被害に遭った場合、当該プラットフォームに備わっているミュート、ブロック機能を活用しましょう。
各プラットフォームにより対応範囲は異なりますが、不快なコメントを目にしなくて済むうえに、相手は投稿等の閲覧、コメント、DM等の機能を利用することができなくなります。
2.SNS事業者への削除依頼
問題の投稿、コメントなどをスクショなどで記録し、事業者へ通報します。
ミュート・ブロック等で解決しない場合、相手方の投稿等の削除依頼を検討しましょう。
これらの方法でも鎮火しなければ、発言者を特定し、損害賠償請求等の手段に訴え出ることも考えられます。
2.SNS事業者への削除請求
誹謗中傷被害に遭った場合、問題となっている投稿、コメント、DM等をスクショし、事業者へ通報しましょう。
ミュート・ブロックと共に活用し、それでも解決しない場合、該当する投稿等の削除依頼を検討します。
ただし、刑事告訴、損害賠償請求を検討している場合は、これらの投稿が重要な証拠となる場合があります。削除依頼を出す前に慎重に検討しましょう。
3.刑事告訴、損害賠償請求
相手の行為が刑法上の要件に該当する場合、刑事告訴を検討しましょう。
刑事告訴とは別に、誹謗中傷により自分が被った損害について、金銭で賠償するよう損害賠償請求をすることも検討します。
いずれにせよ、相手を特定する手続が必要な点に注意が必要です。
誹謗中傷に対する仮処分手続
仮処分とは、被害者からの申立により、正式な判決が出る前に、裁判に勝訴した場合と同様の効果をもたらす制度です。
インターネット上の誹謗中傷について、次の仮処分を利用することができます。
- 削除の仮処分
- 発信者情報開示の仮処分
- 発信者情報消去禁止の仮処分
1.削除の仮処分
削除の仮処分とは、裁判所からサイト管理者に対し、仮の削除命令を出してもらう制度です。
2.発信者情報開示の仮処分
発信者情報開示の仮処分とは、裁判所からプロバイダ等に対し、発信者情報の開示命令を出してもらう制度です。
3.発信者情報消去禁止の仮処分
発信者情報消去禁止の仮処分とは、裁判所からアクセスプロバイダ等に対し、アクセスログに関する情報の消去を禁止する命令を出してもらう制度です。
アクセスログは、概ね3か月から6か月で消去するプロバイダが多く、裁判の係属中に消去される可能性があるため、保存の必要性があると認められる場合に発出される命令です。
仮処分の要件
仮処分を申立てるには、次の要件を満たす必要があります。
- 被保全権利の有無
- 保全の必要性
1.被保全権利の有無
被保全権利とは、申立てる仮処分に対応する「守るべき権利」の存在を指します。
削除の仮処分 | (1)個人または法人の社会的評価を低下させるおそれのある情報が発信されていること (2)発信された内容が公衆の利益となるものではないこと (3)発信された内容が事実ではないこと |
発信者情報開示の仮処分 発信者情報消去禁止の仮処分 | (1)債務者が開示関係役務提供者に該当すること (2)債務者が発信者情報を保有していること (3)発信者情報の開示を受ける正当な理由があること |
2.保全の必要性
保全の必要性とは、仮処分がなければ、被害者が重大かつ回復困難な損害を被るおそれが相当程度あることを指します。
インターネット上で行われる誹謗中傷は、ただでさえ拡散速度がはやく、迅速な対処をとらなければ被害が拡大するおそれがあります。
被害者はこのような内容を具体的に、裁判所に証明することになります。
誹謗中傷者を特定する手続
誹謗中傷者について、刑事告訴または損害賠償請求を検討する場合、発信者を特定する必要があります。
いずれの手段をとる場合でも、下記の措置をオススメします。
(1)証拠保全
誹謗中傷について争う場合、誹謗中傷となる投稿等を証拠として提出する必要があります。
具体的には、投稿のスクショ、相手とのやり取りの記録等が考えられます。
投稿の年月日、アカウントの名前、プラットフォームがわかるようスクショしましょう。
(2)発信者情報開示請求
裁判所に発信者情報開示請求を申立て、サイト管理者等のプロバイダを相手取り、IPアドレス、タイムスタンプの開示を求めます。
そのうえで、経由プロバイダに利用者の氏名、住所情報等の開示請求を行い、発信者を特定することができます。
犯人特定まで、最低でも2回の手続が必要となります。
誹謗中傷者が問われる可能性がある罪
誹謗中傷行為は、刑法上、下記の罪に該当する可能性があります。
1.名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、下記の要件を満たす場合に成立する罪です。
- 公然と
- 事実を摘示し
- 人の名誉を毀損
1-1.公然と
公然とは、不特定または多数の人が直接認識できる状態をいいます。
原則、SNS等のインターネット上での発言は、この要件に該当する可能性が高いといえます。
ただし、DM等で送信された場合は該当しない点に注意しましょう。
1-2.事実を摘示し
事実を摘示とは、特定の事実について、具体的な内容を示すことをいいます。
ただし、示す事実の真偽までは問われません。
1-3.人の名誉を毀損
人の名誉を毀損とは、相手の社会的地位を低下させることをいいます。
名誉毀損罪の罰則
名誉毀損罪に該当する場合、3年以下の懲役、もしくは、禁錮、または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
2.侮辱罪
侮辱罪とは、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合に問われる罪です。
侮辱罪の罰則
侮辱罪に該当する場合、1年以下の懲役、もしくは、禁錮、もしくは30万円以下の罰金、または、拘留、もしくは科料に処される可能性があります。
3.信用毀損罪及び業務妨害罪
信用毀損罪は、虚偽の風説を流布または偽計を用い、人の信用を毀損するものをいいます。
業務妨害罪は、虚偽の風説を流布し、または、偽計を用いて人の業務を妨害(偽計業務妨害罪といいます)することをいいます。
威力を用いて人の業務を妨害すると「威力業務妨害罪」に該当します。
信用毀損罪
信用毀損罪の要件は、下記の通りです。
- 虚偽の風説を流布または偽計を用いる
- 人の信用を毀損または業務を妨害
3-1.虚偽の風説を流布または偽計を用いる
虚偽の風説とは、事実と異なる内容をいいます。
流布とは、不特定または多数の人に伝えることをいいます。
流布については、必ずしも発信者本人が不特定多数または多数に対して広める必要はなく、他人を介し、広まる可能性があることを認識しながら開示した場合を含みます。
偽計を用いるとは、人を騙し、誘惑し、人の勘違いや無知を利用した違法行為全般を指します。
3-2.人の信用を毀損または業務を妨害
信用とは、経済的な視点における価値、販売される商品の品質等に対する社会的な信用まで含まれます。
毀損とは、人の信用を低下するおそれがある状態を指し、実際に信用が低下したことまでは求められません。
信用毀損罪に該当する場合の罰則
信用毀損罪に該当する場合、3年以下の懲役、または、50万円以下の罰金に処される可能性があります。
業務妨害罪
業務妨害罪は、「偽計業務妨害罪」「威力業務妨害罪」に分けられます。
偽計業務妨害罪の要件は、信用毀損罪とほぼ同じですが、威力業務妨害罪の場合、「威力を用いて」信用を毀損または業務を妨害することが要件となります。
威力とは、人の自由な意思を制圧するレベルの威力を示すことをいいます。
双方の保護対象は、信用毀損罪は人の信用、業務妨害は業務と分けられています。
業務とは、人が社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う事務を指します。この事務が経済的なものかどうか、報酬の有無等は関係なく、業務に該当します。
業務妨害罪に該当する場合の罰則
業務妨害罪に該当する場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
損害賠償請求
誹謗中傷により損害を被った場合、相手に対し、損害賠償請求をする選択肢があります。
損害賠償請求は刑事告訴とは違い、民事上の請求にあたり、刑法に定められる要件を満たす必要はありません。
損害賠償請求を行う場合、相手を特定する必要がある点に注意しましょう。
誹謗中傷の要件、対処法まとめ
当ページでは、誹謗中傷の要件と対処法を解説しました。