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当ページでは、失踪宣告の要件、法的な効果、注意点を解説します。
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失踪宣告とは
失踪宣告とは、行方不明者について、その生死が一定期間明らかでないときに、家庭裁判所に申立てることにより、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
失踪宣告の種類
失踪宣告には、「普通失踪」「特別失踪」の2種類があり、要件等に差異が見られます。
失踪宣告の要件
失踪宣告は、下記の要件を満たす必要があります。
- 対象者について、所在・生死が不明なまま、一定期間(失踪期間)を経過したこと
- 利害関係人から請求すること
このほか、「普通失踪」「特別失踪」について、満たすべき要件が異なります。
(1)普通失踪の場合
普通失踪の場合、失踪期間は「生死が明らかでなくなってから7年間」です。
(2)特別失踪の場合
特別失踪の場合、失踪期間は下記の「危難」が去ってから1年間です。
- 戦争の場合、戦争が止んだ後
- 船舶事故の場合、船舶が沈没した後
戦争が止んだ後とは、事実上の戦争終結時を指します。
船舶が沈んだ後とは、沈没している可能性が極めて高く、船体が長期にわたって発見されない場合を指します。
沈没の可能性が示せない場合、単なる行方不明として扱われ「普通失踪」となります。
利害関係人
利害関係人とは、法律上の利害関係をもつ人をいいます。
不在者財産管理人の場合、申立権者に「検察官」を含みますが、失踪宣告において検察官は含まれません。
なぜなら、親族が失踪者の帰りを待っているのに、赤の他人である検察官が失踪宣告を行うのは”余計なお世話”だからです。
失踪宣告の申立
(1)申立人
失踪宣告の申立人は、下記のような利害関係人です。
- 不在者の配偶者
- 推定相続人
- 財産管理人
- 受遺者など
(2)申立先
失踪宣告の申立先は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所です。
(3)必要な費用
申立の際、下記の費用がかかります。
- 収入印紙800円分
- 連絡用郵便切手
- 官報広告料4,816円(失踪に関する届出の催告3,053円+失踪宣告1,763円の合計)
連絡用の郵便切手、官報広告料については、事前に家庭裁判所に確認しましょう。
(4)必要な書類
失踪宣告の申立は、次の書類を提出します。
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍の附票
- 失踪を証明する資料
- 申立人の利害関係を証明する資料
申立後の手続
失踪宣告の申立があると、家庭裁判所が選任する調査官による調査が行われます。
その後、一定期間内の催告を経てもなお不在者が見つからない場合、裁判官による失踪宣告がなされます。
申立人は、審判確定日から10日以内に「審判書謄本」「確定証明書」を不在者の本籍地、または、申立人の住所地を管轄する市区町村役所に提出し、届出を行います。
確定証明書は、家庭裁判所に対して請求する必要がありますので、確認しましょう。
失踪者が見つかった場合
失踪宣告後、失踪者が生存していることがわかった場合、または、失踪宣告と異なる年月日に死亡したことが明らかになった場合、本人または、利害関係人は家庭裁判所に取消しの手続を行う必要があります。
執行宣告が取消された場合、失踪宣告自体がはじめからなかったものとして扱われます。
といっても、実務上すべての効果を取消すことはできず、一定の制限はかかります。
失踪者と離婚後、再婚した場合
配偶者が失踪宣告が確定した後、再婚している場合です。
この場合、再婚に関する当事者双方が、失踪者の生存を知らなかった場合は、再婚関係を継続することができます。
行方不明の配偶者と離婚を希望する場合、失踪宣告ではなく、行方不明の配偶者を相手取り、離婚訴訟を提起する必要があります。
失踪者に関する相続手続が行われた場合
失踪宣告により相続手続を行った場合、取消しによって権利を失いますが、相続した財産のうち、残っている範囲(現存利益)で返還すれば構いません。
ただし、失踪者が生きていることを知っていた場合、相続財産の全てを返還する義務を負います。
失踪宣告の要件、効果、注意点まとめ
当ページでは、失踪宣告の要件、効果と注意点を解説しました。