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当ページでは、相続放棄の申立手続の流れと、相続放棄によるメリット、注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
相続放棄とは
相続放棄とは、法律で定められた相続人に認められる「遺産を承継する権利(相続権)」を手放す手続をいいます。
相続放棄をした相続人は、はじめから相続人ではなかったものとして扱われ、被相続人の資産・負債ともに承継することはありません。
法定相続人とは
法律上、被相続人(死亡人)に配偶者がいる場合は常に相続人になります。
このほか、下表に定める再先順位の法定相続人がいる場合、配偶者と共に相続することになります。
順位 | 法定相続人 |
---|---|
1 | 子または孫等の直系卑属 |
2 | 父母または祖父母等の直系尊属 |
3 | 兄弟姉妹 |
相続放棄のメリット
相続放棄には、下記のメリットがあります。
1.返済義務を免れる
被相続人に借金、滞納税等の負債があった場合、原則、相続人がこれらを承継することになります。
相続放棄をした場合、負債に関する返済義務を負うことはないため、遺産で返済することが難しい場合は、相続放棄がメリットとなり得ます。
2.相続手続からの解放
一般的な相続手続では、戸籍書類の取得、財産調査、遺産分割協議、協議で決まった内容に伴う手続が必要です。
こうした手続は、手続先の受付時間内に行わなければならず、多忙な相続人には大きな負担となる場合があります。
相続放棄をすると、このような手続は一切不要となるため、遺産に関心がない場合にはメリットとなります。
3.親族間の争いを回避できる
被相続人が遺言書を作成していた場合、その内容に沿って相続手続を進めます。
いっぽう、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
親族関係が複雑な場合や遺産分割協議が調わない場合、家庭裁判所において、遺産分割調停や審判に発展することがあります。
相続放棄を選ぶと、こうしたトラブルに関与する必要がなく、早期解決が期待できます。
ただし、相続放棄を証明する書類の交付が必要な場合等は、協力する必要があります。
4.他の相続人が受け取れる
相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、原則、放棄された相続分を他の相続人が承継します。
特定の相続人に管理運用を任せたい遺産がある場合には、相続放棄が有効となることもあります。
相続放棄の注意点
相続放棄を行う場合、下記に注意しましょう。
1.撤回できない
1度、相続放棄の手続を行うと、撤回することができません。
例えば、後から多額の遺産が判明した場合などが考えられます。
相続放棄の際は、慎重に調査・検討しましょう。
2.期限がある
相続放棄を行う場合、家庭裁判所に「相続放棄の申述」を行う必要があります。
この手続には、相続開始から3か月以内の期限があり、これを過ぎると単純承認をしたものとみなされます。
単純承認の場合、被相続人の遺産をすべて承継することになるため、早めに手続を行いましょう。
3.管理義務は残る
相続放棄をした場合、相続する権利は一切なくなります。
しかし、遺産を管理する人がいない場合には、適切に管理できる人が現れるまでの間、遺産を管理する義務を負います。
相続人全員が相続放棄を行った場合、家庭裁判所に相続財産清算人の選任手続を申立てる必要があることに注意しましょう。
4.遺産に触れると放棄できない
相続人が遺産を消費した場合、法定単純承認とみなされ、相続放棄を行うことができなくなります。
「遺産を消費した場合」とは、被相続人の預貯金口座から金銭を引き出したり、被相続人所有の不動産に存在する動産を処分した場合等がこれにあたります。
相続放棄を検討しているのなら、原則、遺産の消費は避けましょう。
債権者からの督促に対し、「支払う」旨の回答をすることも法定単純承認とみなされる可能性があるため、確答は避けましょう。
相続放棄の判断基準
相続放棄を検討する場合、下記のポイントを抑えましょう。
1.遺産の合計額
相続財産は、現金預貯金等のプラス、借金・ローン等のマイナスを総合して合計額を算出します。
負債額が多く、遺産で支払いきれない部分は、相続人自身が負担する必要があるため、(1)負担額が許容範囲か、(2)負担してもなお手元に残したい財産があるのかを検討しましょう。
相続放棄をすると、何も手元には残りませんし、撤回することもできないため、特に、現物資産がある場合等は慎重に検討しましょう。
2.限定承認の可能性
債務超過による相続放棄を検討する場合、限定承認という選択肢もあります。
限定承認の場合、遺産で返済できる範囲内でのみ負債を承継することになるため、相続人に負担はかかりません。
手元に置いておきたい資産がある場合に有効な手段なので、相続財産を総合的に見て検討しましょう。
相続放棄の申立 流れ
相続放棄を行う場合、下記の手続が必要です。
- 相続人の特定、財産調査
- 必要書類の作成
- 相続放棄の申述
1.相続人の特定、財産調査
被相続人が亡くなった場合、法定相続人を確定し、一切の相続財産を特定する必要があります。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍書類を取得して相続人を確認し、被相続人名義の預貯金通帳や借用書、不動産は全部事項証明等を取得して財産を確定します。
2.必要書類の作成
財産調査を踏まえ、相続放棄を行う場合、下記の書類を揃えましょう。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 申述人の戸籍謄本
- 収入印紙(800円)
- 郵便切手(家庭裁判所に確認)
上記のほかにも、事例により別の書類を求められる場合があります。
被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所まで、事前に確認しましょう。
3.相続放棄の申述
必要な書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄の申立を行います。
万が一、被相続人の死亡から3か月以内の手続が難しい場合、「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」を家庭裁判所に提出することができます。
ただし、期限の延長を認めるかどうかは裁判所の判断に委ねるしかなく、必ず延長されるものではありません。
相続放棄が認められると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
他の相続人が相続する場合、各手続にて必要になるため「相続放棄申述受理証明書」を請求しておくと便利です。
相続放棄の申立、メリット、注意点まとめ
当ページでは、相続放棄の申立手続と、メリット、注意点を解説しました。