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当ページでは、調停の種類、裁判との違い、調停活用のメリットを解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
調停(ADR)とは
調停とは、英語でAlternative Dispute Resolutionといい、略して「ADR」と呼ばれることがあります。
法律上は、下記のように定義されます。
- 訴訟手続によらないこと
- 民事上の紛争を取扱うこと
- 当事者双方と公正な第三者とで解決を図る手段であること
上記は、ADR法第1条をまとめたもので、原文では下記の通りです。
「訴訟手続によらないで民事上の紛争の解決をしようとしている紛争の当事者のために、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」
調停の特徴
調停には、次の特徴があります。
- 話し合いによる解決が期待できる
- 訴訟に比べ、短期間かつ手数料が良心的
- 原則、非公開で行われる
- 調停による合意は確定判決と同じ効力がある
1.話し合いによる解決が期待できる
調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が介入し、話し合いによる紛争解決を目指す制度です。
調停に参加するのは、裁判とほぼ同じメンバーですが、調停の目的となっている事案に精通した専門家が調停委員として参加するため、より専門的な知見を期待できます。
家事調停の場合、原則、相手と同席による調停は行わないので、顔を合わせることなく話し合いを行うことができます。
2.訴訟に比べ、短期間かつ手数料が良心的
訴訟と調停、いずれの手続も請求する金額等により手数料を算定しますが、調停費用は裁判費用の2分の1以下となります。
また、訴訟(裁判)は非常に長い時間を要します。
その理由は、(1)弁護士や裁判官は、日常的に広い分野の事件を取扱い、専門性の高い事件にあたる場合には知識の習得、争点整理等に時間がかかる事、(2)異動の度に多数の事件を引継ぎ、各事件への理解に手間取ることです。
1人の裁判官が広汎な事件を担当する事そのものに無理があるようにも思えますが、制度上、すぐにはどうにもできません。
このような事情から、より簡易的で迅速な手続が叶う調停手続を選ぶ人も増えています。
3.原則、非公開で行われる
原則、訴訟は公開法廷で審理されますが、調停は非公開で行われ、互いのプライバシー保護が期待できます。
調停委員には守秘義務があるため、調停に関わる人による情報漏えいは考えられません。
4.調停による合意は確定判決と同じ効力がある
調停の成立は、確定判決と同等の効力を持ちます。
調停の成立とは、当事者が合意に至ることで紛争が解決することをいい、裁判所書記官により「調停調書」が作成されます。
調停調書には「執行力」があるため、調停で決まった内容を相手が履行しない場合、相手の資産等を差し押さえる「強制執行」を行うことができます。
裁判と調停の違い
裁判と調停は、次の点が異なります。
- 解決方法
- 手続の主体
1.解決方法
調停手続の場合、当事者間の話し合いによって解決(合意)を目指します。
合意に至らず調停不成立になった場合、当事者は訴訟に移行し、引き続き紛争解決を目指すことになります。
訴訟の場合、当事者の主張・立証を踏まえ、裁判所が事実認定を行い、和解または判決のいずれかで解決策が示されます。
要するに、調停は不成立の可能性がありますが、訴訟は必ず何らかの解決案が示される点が異なります。
2.手続の主体
調停手続では、調停委員が主体的に手続を進めます。
いっぽう、訴訟の場合は裁判官が主導権を握る点で異なります。
調停にも裁判官は参加しますが、あくまでも調停成立、不成立の局面のみに現れます。
調停の種類
調停は、下記に大別されます。
1.民事調停
民事調停では、民事に関する紛争を取扱います。
例えば、金銭貸借、物やサービスの売買をめぐる紛争、交通事故、知的財産権、農地の利用関係等をめぐる紛争が挙げられます。
一般の人にとって、特に身近なトラブルを扱う調停です。
2.特定調停
特定調停は、個人・法人を問わず、返済を続けていくのが難しい債務者と債権者とが話し合い、生活や事業の再建を図るための手続として定められたものです。
債務整理に特化した調停ですね。
3.家事調停
家事調停は、(1)別表第2調停、(2)特殊調停、(3)一般調停に分類されます。
3-1.別表第2調停
親権者の変更、養育費の変更、婚姻費用の分担、遺産分割等を取扱います。
家事事件手続法の別表第2に規定される調停なので、このように呼ばれています。
3-2.特殊調停
特殊調停では、協議離婚の無効確認、親子関係の不存在確認、嫡出否認、認知等を扱います。
3-3.一般調停
一般調停は、家庭に関わる紛争等のうち、別表第2調停、特殊調停を除く事件を扱うもので、離婚や夫婦関係に関する円満調整等を扱います。
民間ADR
上記のほか、民間事業者が主体となって紛争解決手続を行う「民間ADR」があります。
民間ADRには、調停のような強制力はありませんが、裁判所が行う調停と比べ、より迅速な手続が可能です。
調停の種類、裁判との違い、メリットを解説
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