当サイトの一部に広告を含みます。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
相続の選択肢
被相続人(死亡人)の遺産は、法律で定められた相続人(「法定相続人」といいます)のうち、先順位の相続人が承継することになります。
この際、相続人には下記の選択肢があります。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
単純承認とは
単純承認は、被相続人の遺産を全て承継する相続方法で、特別な手続は必要ありません。
相続放棄とは
相続放棄は、被相続人の遺産を「相続する権利」を全て放棄する手続をいいます。
相続開始から3か月以内に、裁判所において所定の手続をとる必要があります。
1度手続をすると撤回することはできませんが、はじめから相続人ではなかったものとして扱われます。
限定承認とは
限定承認は、被相続人の遺産の範囲内で負債を承継する相続方法です。
相続放棄同様、相続開始から3か月以内に、裁判所において所定の手続をとる必要があります。
一般的な相続(単純承認)の場合、プラスの遺産に限らず、負債やローン等のマイナスの遺産も全て承継することとなりますが、限定承認の手続をとることで、過剰な負債を背負う必要がなくなります。
相続放棄・限定承認のメリット
相続放棄、限定承認のメリットは下記の通りです。
相続放棄
- 相続人単独で申立ができる
- 負債をいっさい相続しない
相続放棄最大のメリットは、負債をいっさい相続しない点です。
被相続人の遺産に多額の負債がある場合、債権者は、相続人に取立を行いますが、相続放棄の手続を経ることで、債権者に対し「返済義務はない」と主張できるようになります。
また、相続放棄を行うために、他の相続人の同意は必要ありません。
相続放棄をした場合、生命保険金や遺族年金等の受取を心配される人もいますが、要件さえ満たしていれば、受け取ることができます。
限定承認
- 過剰な負債は相続しなくていい
- 承継したい財産は手元に残る
限定承認の場合、プラスとマイナスの遺産を相殺した残りを承継することになるため、相続人にとって負担が少ない方法だといえます。
実務上、限定承認を選択するのは、負債を負ってでも手元に残したい遺産がある場合で、先祖代々の財産が手元に残るメリットがあります。
相続放棄、限定承認、いずれの場合も他の相続人と同意は不要ですが、必要最小限度の接点がある点には注意しましょう。
相続放棄の注意点
相続放棄、限定承認を行う場合、下記の点に注意しましょう。
- 手続に期限がある
- 1度申述すると撤回できない
- 遺産を処分してはいけない
- 相続開始前に申立はできない
- 相続放棄をしても一定の義務は負う
1.手続に期限がある
相続放棄をする場合、原則、相続開始から3か月以内(厳密には、相続開始を知った日から3か月以内)に手続をしなくてはなりません。
この期間を「熟慮期間」と呼び、熟慮期間を過ぎると相続放棄、限定承認ともに手続が認められませんので注意しましょう。
例外として、期間延長が認められる場合もあります。
期間延長が認められるかどうかは裁判所の判断に委ねるしかありませんが、特別な事情がある場合は、早めに期間延長手続をとりましょう。
2.1度申述すると撤回できない
相続放棄の申述を行った場合、撤回することはできません。
手続が完了すると、申述をした相続人は「はじめから相続人ではなかった」と扱われ、他の相続人の順位が変動します。
このため、相続放棄の手続が完了後、他の相続人へ通知する必要があります。
3.遺産を処分してはいけない
相続開始後、被相続人の財産を消費した場合、単純承認とみなされます。
「財産を消費」とは、被相続人の預貯金を引き出して使った、被相続人名義の不動産内にある家財道具や貴金属を売却したような場合のほか、被相続人の債務を返済した(「支払う」旨の回答をした場合を含みます)等が当てはまります。
1度単純承認とみなされると、相続放棄・限定承認ともに認められませんので、いずれかを検討されるのなら、遺産には手をつけないようにしましょう。
4.相続開始前に申立はできない
相続放棄、限定承認に必要な家庭裁判所への申述手続は、相続開始から3か月以内に行う必要があります。
相続人や相続財産の特定には、それなりの時間と手間を要するため、前倒しで行いたくなることもあるでしょう。
しかし、法律上「相続開始から」と定められている以上、被相続人の生前に行うことは許されない点に注意しましょう。
5.相続放棄をしても一定の義務は負う
相続放棄をした場合、相続人がもつ相続権はなくなり、遺産に関する一切の権利・義務を失います。
しかし、相続放棄をしたからといって、遺産に関する管理義務まで放棄できないのが現状です。
相続放棄をした元相続人は、相続財産清算人を選任し、遺産を適切に管理できる状態になるまで、管理義務を負います。
相続放棄、限定承認のメリット、注意点 まとめ
当ページでは、相続放棄・限定承認のメリットと注意点を解説しました。