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当ページでは、婚前契約(夫婦財産契約)の方法、婚前契約を結ぶメリットと注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
婚前契約(夫婦財産契約)とは
婚前契約は「夫婦財産契約」とも呼ばれ、婚前に、婚姻中の財産管理の方法、離婚時の財産分与に関するルールを定める契約です。
prenupと呼ばれることもあります。
婚前契約を交わさない場合
婚前契約を交わさない場合、原則、民法に従って財産を管理することになります。
民法 | 内容 |
---|---|
第760条 婚姻費用の分担 | 夫婦は、その資産、収入等の一切を考慮し、婚姻にかかる費用を分担します |
第761条 日常の家事に関する債務の連帯責任 | 夫婦の一方が日常の家事に関し、第三者と取引した際、これによって生じた債務は夫婦で連帯責任を負います |
第762条 夫婦間における財産の帰属 | 結婚前から所有する財産、婚姻中に自分の名前で得た財産は、当人の単独所有として扱う |
要するに、婚前契約書は、民法の規定と異なる管理、運用、分割方法を希望する人のための契約書だといえます。
契約できる内容
婚前契約は、民法上と異なる取り決めをすることを目的とします。
この際、法律上に規制は敷かれていないものの、他の法律や社会的に見て不適切なものは認められないことに注意しましょう。
一般的には、下記の内容を話し合います。
- 共有財産の管理、処分方法
- 生活費の分担割合
- 離婚時の財産分与に関する方法や割合
- 夫婦共同で負担する債務の割合
契約できない内容
いっぽうで、下記の内容は無効になる可能性が高いため、慎重に検討しましょう。
- 同居・扶助義務を否定するもの
- 姻族(結婚相手の親族)の相続に関する内容
- 一方的な権利濫用を目的とするものなど
民法に定められる「婚姻」の本質を根本から否定する内容、第三者に迷惑をかける内容は認められません。
婚前契約を結ぶメリット
婚前契約を結ぶことにつき、下記のメリットが考えられます。
- 夫婦間の信頼向上
- 特有財産の把握
- 離婚時、検討材料になる
1.夫婦間の信頼向上
婚前契約を結ぶ際、契約書作成のため、互いの意思を確認し、言語化する必要があります。
頭の中だけで描いていたものを言語化するためには、ある程度の具体性を持たせなければならず、夫婦間の認識、価値観の違いが明確になるだけでなく、今まで目に見えなかったリスクが見えるメリットがあります。
2.特有財産の把握
離婚時の財産分与では、原則、婚姻中に築いた財産を2分の1ずつ分割します。
このとき、婚前から所有していた財産、明らかに一方の財産とわかるものは「特有財産」として扱い、分割対象外となります。
特に、夫婦のいずれかが事業を経営している場合、株式も分割対象となる場合があります。
婚姻前から離婚を検討する人は稀少ですが、後のトラブル防止という意味ではメリットだといえます。
3.離婚時、検討材料になる
離婚の際、分割方法・割合でもめる夫婦も少なくありません。
特定の財産に関し、自身の貢献度を高く見積もった場合、他方はこれを否定することとなり、結果的に感情的な反発を生むことが大きな原因ですが、あらかじめ評価方法や分割方法を定めることで、余念を排除することができ、円滑な分割が期待できます。
万が一、訴訟に発展するほどもめた場合、適正な内容の婚前契約書は証拠能力としての価値も高く、早期解決も期待できます。
婚前契約を結ぶ際の注意点
婚前契約を結ぶ場合、下記のポイントを抑えましょう。
- 書面化する
- 場合により登記する
- 婚前でなければ締結できない
1.書面化する
婚前契約に限らず、すべての契約は互いの合意のみで成立します。
いわゆる口約束です。
しかし、合意の内容が重大であるほど、後に確認する可能性は高くなります。
このため、話し合いの内容は言語化し、契約書を作成することをオススメします。
特に、公証役場において作成する「公正証書」にしておくと、書類の紛失、変造、破棄等を防ぐことにも繋がります。
公正証書の場合、公証人という法律のプロに相談できることもメリットですが、一定の費用がかかるため、事前に確認しましょう。
2.場合により登記する
登記とは、不動産や財産、法律上の権利等の情報について、法務局に記録することで公にすることをいいます。
婚前契約の成立に登記は必須ではありませんが、登記をしない場合、配偶者以外の第三者に対し、権利を主張することができません。
公正証書と登記とは別の制度なので、公正証書にすれば安心!というわけではないんですね。
3.婚前でなければ締結できない
婚前契約書は、婚姻届の前にすることを要件とする契約なので、婚姻後に締結することができません。
ただし、夫婦間の取り決め自体はいつでも定めることができます。
婚前契約は婚姻後の変更ができないのに対し、婚姻後に結ぶ契約は、「夫婦の一方からいつでも取消すことができる」とされていることに注意しましょう。
婚前契約の方法、メリット、注意点まとめ
当ページでは、婚前契約の方法とメリット、締結時の注意点を解説しました。