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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
土地の境界「隣地境界線」とは
土地には「筆界」「所有権界」と2つの境界が存在します。
筆界とは
筆界は、法務局に初めてとうきされたときに範囲を区画するものとして定められたものをいいます。
分筆、合筆等の登記手続が行われていない限り、登記された時点の区画線が現在の筆界となります。
筆界は、所有者同士の話し合いで変更することはできません。
所有権界とは
所有権界は、土地所有者の権利がおよぶ範囲を区画するものです。
原則、筆界と所有権界は一致しますが、当事者の合意により一致しないこともあります。
隣地境界線のルール
筆界点を示すには、「境界標」が用いられます。
コンクリートの杭、金属プレートを塀に設置して表示します。
境界業(筆界点)同士を結んだ線を「境界線」と呼び、俗に言う「隣地境界線」はこの境界線に含まれます。
1.建物と隣地境界線
土地に建物を設置する場合、法律に「境界線から50cm以上の距離を保つ義務」が定められています。
これに違反した場合、隣接地の所有者は建築の中止、適正な距離の保持を求めることができますが、建築開始から1年を経過した場合、または、建物の完成後には損害賠償請求をすることになります。
一部、例外規定も設けられていますが、建設時には関連法をきちんと確認しましょう。
2.塀、フェンスとの隣地境界線
隣接地との間に空き地がある場合、各所有者が費用を分担し、境界上にブロック塀等を設けることができます。
自分の敷地内に設置する場合は特に制限はありませんが、万が一、他人の土地に倒れてしまった場合を考えると、設置前にひとこと断っておくといいでしょう。
隣地境界線の確認方法
隣地境界線は、下記の方法で確認することができます。
1.地積測量図
目的地の所在地を管轄する法務局において、地積測量図を取得する方法です。
地積測量図は、土地の面積・形状、隣接する土地との境界・位置関係等が記載される公的な図面を指し、登記の際に添付が求められる書類です。
2.境界標
現地に境界標がある場合、全ての角に境界標があることを確認しましょう。
現地の境界標、地積測量図、登記簿謄本に記載された内容が一致することで境界が特定できます。
3.測量
1、2の方法でわからない場合、土地家屋調査士等の専門家による測量が考えられますが、問題の根本的な解決まで至らない場合がほとんどです。
このため、「筆界特定制度」をオススメします。
筆界特定制度とは
筆界特定制度は、土地の所有者の申請に基づき、筆界特定登記官が調査委員の意見を踏まえ、現地の筆界位置を特定する制度です。
筆界特定は、新たに筆界を決めるのではなく、実地調査・測量等の調査から過去に定められた筆界を明らかにすることをいいます。
隣地境界線でもめた場合、裁判で明らかにする方法もありますが、必要書類の収集は全て原告(所有者)負担となります。
この点、筆界特定制度を使えば、もめ事の根源である筆界が特定するため、より簡素な手続で解決をはかることが期待できます。
筆界特定制度の流れ
筆界特定は、次の流れで行われます。
- 土地所有者等による申請
- 筆界調査委員による調査
- 筆界特定登記官による筆界特定
筆界特定制度のメリット
筆界特定制度には、次のメリットがあります。
- 費用負担が軽い
- 早期解決が期待できる
- 証拠能力としての価値が高い
費用負担が軽い
筆界特定制度では、土地の価額に対応する申請手数料がかかります。
このほか、筆界調査における測量費用も必要ですが、裁判時と比較すると費用負担は軽くなります。
土地の合計価格(円) | 手数料(円) |
---|---|
0~4,000,000 | 800 |
4,000,001~8,000,000 | 1,600 |
8,000,001~12,000,000 | 2,400 |
12,000,001~16,000,000 | 3,200 |
16,000,001~20,000,000 | 4,000 |
20,000,001~24,000,000 | 4,800 |
24,000,001~28,000,000 | 5,600 |
28,000,001~32,000,000 | 6,400 |
32,000,001~36,000,000 | 7,200 |
36,000,001~40,000,000 | 8,000 |
40,000,001~48,000,000 | 8,800 |
48,000,001~56,000,000 | 9,600 |
56,000,001~64,000,000 | 10,400 |
64,000,001~72,000,000 | 11,200 |
72,000,001~80,000,000 | 12,000 |
80,000,001~88,000,000 | 12,800 |
88,000,001~96,000,000 | 13,600 |
96,000,001~104,000,000 | 14,400 |
早期解決が期待できる
一般的な裁判では、訴訟の提起から判決に至るまで1年以上はかかります。
いっぽう、筆界特定制度の場合、半年から1年以内に結論が示される場合が多く、筆界調査員・法務局の職員が主体的に手続を進めてくれる点もメリットです。
裁判の場合、基本的には原告主体で手続を進めなければならないので、専門家の手を借りられるのはとても心強いですよね💪
証拠能力としての価値が高い
筆界特定制度では、公的機関の専門的な意見による判断を示すものなので、万が一訴訟に発展した場合でも有力な証拠となります。
ただし、争点が所有権の場合には、筆界特定制度での直接的な解決は不可能で、筆界特定により何かを強制し、拘束する力はない点には注意しましょう。
調停という選択肢も
筆界特定制度を利用し、筆界が特定できたのに、根本的な解決が図れない場合もあります。
この場合、土地家屋調査士会に相談し、調停手続を行う方法もあります。
土地家屋調査士ADRでは、土地家屋調査士と弁護士が共同して当事者の代理人を務め、境界に係る紛争解決を目指す制度です。
土地の境界でもめた場合の対処法 まとめ
当ページでは、土地の境界でもめた場合の対処法をご紹介しました。