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当ページでは、令和6年(2024年)施行予定の改正景表法から「確約手続の導入」「課徴金制度の見直し」「罰則規定の拡充」「国際化の進展への対応」「適格消費者団体による開示要請規定の導入」に関する概要と、今後事業者が注意すべき点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
景表法(景品表示法)とは
景表法は、正式名を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、令和5年(2023年)5月に改正法が公布されました。
今回の改正のポイントは次の通りです。
- 確約手続の導入
- 課徴金制度における返金措置の弾力化
- 課徴金制度の見直し
- 罰則規定の拡充
- 国際化の進展への対応
- 適格消費者団体による開示要請規定の導入
改正景表法の施行日
公布日(令和5年(2023年)5月17日)から1年半を超えない範囲内の施行が決定されています。
1.確約手続の導入
確約手続とは、消費者庁による景表法違反に関する調査があった場合、調査対象の事業者が一般消費者による一般的かつ合理的な商品、および、サービスの選択を確保するための是正措置等の実施計画を持つとき、この計画を消費者庁長官が行う認定等の手続をいいます。
旧法において、調査の結果、違反行為と認められると「措置命令」「課徴金納付命令」、違反には至らないまでも、違反の恐れがある場合には「行政指導」を行うことが規定されていました。
- 当該行為の差止
- 再発防止に必要な事項の実施
- その他必要な事項
- 課徴金対象期間にした取引または政令で定める方法で算定した売上額に100分の3をかけた金額に相当する課徴金の納付を命じる
- ただし、一定の事由に該当するとき、または、対象額が150万円未満の場合は納付を命じることはできない
確約手続により、認定対象となる景表法違反が疑われる行為に関し、措置命令および課徴金納付命令の対象から外れることになります。
違反が疑われたとしても、適切な対応を計画・実施するのなら、ペナルティは課されないわけですね。
確約手続の流れ
確約手続は次の流れで行います。
- 景表法違反の疑いがある行為の概要、消費者庁から事業者へ違反が疑われる条項を通知
- 事業者が60日以内に確約計画を自主的に作成し、申請
- (1)措置内容が十分であること、(2)措置実施の確実性が見込まれる場合、認定
- 措置命令・課徴金納付命令を行わない
2.課徴金制度における返金措置
課徴金制度における返金措置とは、課徴金納付命令の対象となった商品またはサービスにつき、消費者から申出があった場合、消費者が支払った購入額の3%以上の金銭を返金を行う措置をいいます。
この返金を行った馬合、課徴金額から返金相当額が減額されることとなります。
返金措置を行う際、金銭と同レベルの価値代替性をもつ決済手段(電子マネー含む)も許容されます。
価値代替性をもたない決済手段とは、使用可能な取引が限局的なポイント・クーポン、商品券等を指します。
3.課徴金制度の見直し
旧法では、課徴金の算定基礎となる事実調査の際、対象となる商品に係る売上額等のデータを整理しておらず、適切な売上額を報告できない事業者がいることが問題視されてきました。
このような事態にも迅速に対応し、適切な課徴金納付命令を行えるように、課徴金を計算する際の基礎事実を把握できない期間の売上額を「推計できる」規定が設置されました。
課徴金の金額は、課徴金の対象となる商品・サービスの売上額の3%と定められていたため、売上額がわからず立ち往生…という場面があったそうです。
繰り返す違反は割増し
景表法違反に対し、措置命令・課徴金納付命令を受けた事業者の中には、違反を繰り返す事業者がいました。
これに対応するため、改正法では、基準日から10年以内に果糖金納付命令を受けたことがあり、かつ、命令の日以降に再度違反行為を行った場合、課徴金を通常の1.5%割増して算出する規定が置かれました。
基準日は、事業者が受ける報告徴収等、資料提出請求、弁明の機会の付与の通知のうち、最も早い日を指します。
罰則規定の拡充
これまで、優良誤認表示(商品・サービスについて、現実よりも優れたものであると誤解させる広告表示)、有利誤認表示(現実よりも消費者に著しく有利だと誤認させるもの)を行った事業者に対し、景表法を根拠に罰則対象とすることはできませんでした。
しかし、今回の改正法では、優良誤認表示・有利誤認表示に対し、「100万円以下の罰金」という直罰規定が新設されました。
これにより、一部の要件を満たさないことを理由に罰則を免れてきたアフィリエイターやインフルエンサー、悪質なリサーチ会社等も対象となる可能性があります。
国際化の進展への対応
外国の事業者が日本国内の消費者を誤認させるような表示を行った場合、これらの表示を是正するには、当該事業者の在る国の執行当局に対し、協力を求めることになります。
改正法では、内閣総理大臣が執行当局に対し、協力耐性強化を目指し、職務遂行に資すると認める情報を提供できる旨が規定されました。
適格消費者団体による開示要請規定の導入
適格消費者団体は、不特定かつ多数の消費者の利益保護の目的で組織する「差止請求権を行使するに適した消費者団体」として、内閣総理大臣の認定を受けた法人のことをいいます。
改正法において、(1)適格消費者団体が事業者に対し、当該事業者の行う表示を裏付ける合理的な根拠資料を開示できること、(2)根拠資料が営業秘密に該当する場合を除き、事業者は開示要請に応ずる努力義務を負うことが規定されました。
景表法改正による注意点
改正景表法のうち、事業者が注意したいのは、適格消費者団体による開示要請規定の導入です。
適格消費者団体の活動はホームページ等で公開されることが多く、要請を受けた事業者が根拠資料を開示しなかった場合、このことも公表される可能性があります。
公表しなかった事実、公表しない理由により、一般消費者からの評価が下がる可能性もありますので、誠実かつ適切な対応が求められます。
このほか、現在行っている広告等の表現が適切かの確認を行い、万が一違反事由に該当した場合の対処法も併せて確認しましょう。
【令和6年】改正景表法の概要と注意点まとめ
当ページでは、改正景表法の概要と注意点を解説しました。