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当ページでは、ドラッグストアの開業に必要な手続きの流れ、書類、注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
「薬局」と「ドラッグストア」の違い
ドラッグストアの開業を検討する際、まず知ってほしいのは「薬局」と「ドラッグストア」の違いです。
主な違いは次の通りです。
- 医療対応
- 取扱い商品
- 店舗規模
- 販売スタイルと権限
医療対応
薬局の場合、医療機関と連携している場合が多く、処方箋に基づく調剤・提供、薬に関する相談対応を行います。
ドラッグストアの場合、調剤薬局を併設するところもありますが、主な提供は非処方薬(市販薬)です。
処方箋対応ができる保険薬局には、店舗管理者として薬剤師を配置する必要がありますが、市販薬などの医薬品販売のみで、調剤を行わない店舗の管理者は登録販売者で足ります。
取扱商品
薬局では、医療に特化した薬品や医療機器の提供がメインですが、ドラッグストアでは、化粧品、健康食品、食料品など、幅広い商品を取り扱います。
店舗規模
薬局は比較的小規模なところが多い一方で、ドラッグストアは、店舗により大規模なところもあります。
販売スタイルと権限
薬局の場合、医療従事者による患者対応がメインで、服薬指導、相談業務が行われます。
ドラッグストアの場合、商品は顧客自身が選び、一部商品に限り、薬剤師または登録販売者が指導を行います。
「薬剤師」と「登録販売者」の違い
一般的な医薬品は「要指導医薬品」から「第3類」という5区分のいずれかに分類されます。
このような分類に用いる基準は、薬効と副作用リスクです。
市販の医薬品は第1類から第3類までが大多数を占め、このうち、「要指導医薬品」「第1類医薬品」は薬剤師のみ販売することができます。
いっぽう、「第2類・指定第2類医薬品」「第3類医薬品」は薬剤師および登録販売者も販売可能です。
要するに、開業予定のドラッグストアで取扱い予定の商品により、薬剤師または登録販売者の必要配置数が変動します。
調剤薬局を開業する場合
調剤薬局を開業する場合、代表者が薬剤師の資格を持っていなければならないわけではありません。
しかし、「店舗管理者」に薬剤師を配置する必要があります。
調剤薬局の開業に必要な許可、指定
必要な許可・指定は下記の通りです。
- 薬局開設許可
- 保険薬局指定
- 調剤室の設置
薬局開設許可 取得までの流れ
薬局の開設に必要な「薬局開設許可」を取得するには、次の流れで手続きを進めます。
- 保健所、厚生局へ事前相談
- 申請書類の作成
- 申請書提出
- 現地調査
- 開設許可証交付
- 保険医療機関指定申請書提出
- 保険医療機関認定
1.事前相談
調剤薬局を開業したい場所が決まったら、その地区を管轄する保健所・厚生局を調べます。
所轄の保健所または厚生局(支局)に連絡し、担当者に事前相談を行います。
事前相談では開業予定日を伝え、許可要件、必要書類等を確認しましょう。
2.申請書類の作成・準備
保健所に薬局開設許可申請を行います。
このときに求められる書類は、各自治体により異なるため、事前相談時に受けた教示を参考に揃えます。
今回は、神奈川県の例を紹介します。
- 薬局開設許可申請書 様式1(PDF・Word)
- 薬局の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の一覧表 別紙1(PDF・Word)
※資格確認のため薬剤師免許証(原本)・登録販売者従事登録証(原本)を提示 - 薬局の業務の概要 別紙2(PDF・Word)
- 薬局の構造設備の概要 別紙3(PDF・Word)
- 業務体制の概要 別紙4(PDF・Word)
- 薬局の平面図(別紙3に記載するか、設計図面等の添付)
※ショッピングモール等店舗内に開設する場合は、薬局の位置がわかる施設全体図面を含む - 法人の場合は登記事項証明書
- 薬局の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の雇用契約書の写し等使用関係を証する書類
雇用証明書の例示(PDF・Word) - 健康サポート薬局の基準に適合することを確認できる文章及び書類
※健康サポート薬局である旨の表示を行う場合のみ - 薬剤師不在時間の概要 別紙5(PDF・Word)
※薬剤師不在時間がある場合のみ - 手数料29,100円(令和4年1月時点)
※申請者(法人の場合、薬事に関する業務に責任を有する役員)が精神の機能障害により、業務を適正に行うにあたり、必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができないおそれがある場合には、医師の診断書添付を求められます。診断書の例示(PDF・Word)
今回は、神奈川県を例に挙げていますが、各都道府県保健所により様式は異なります。
必ず、担当区域の保健所HPよりダウンロードまたは担当者から直接受け取りましょう。
3.申請書提出
薬局開設許可申請書の提出期限は、各都道府県保健所により異なります。
目安としては、開業日の前月の20日頃ですが、必ず確認しましょう。
期限に遅れると、全体で1か月から2か月近い遅れが生じる場合もありますので注意しましょう。
4.現地審査
保健所の担当者より事前に通達が入り、現地審査が行われます。
設備等のサイズ・必要数など、各自治体保健所により異なる場合があるため、必ず確認しましょう。
下記に一例を挙げておきます。
4-1.備品類
薬局として備えるべき備品の一例です。
- 液量器
- 温度計(100度)
- 水浴
- 調剤台
- 軟鋼版
- 乳鉢(散財用)および乳棒
- はかり(感量10mgのものおよび感量100㎎のもの)
- ビーカー
- ふるい器
- へら(金属製および角製またはこれに類するもの)
- メスピペット
- メスフラスコまたはメスシリンダー
- 薬匙(金属製および角製またはこれに類するもの)
- ロート
- 調剤に必要な書類(磁気ディスクをもって調剤するものを含む)
秤について、「10mg」「100mg」と2種類を用意する必要はなく、デュアルレンジ型電子天秤のように、切り替え可能なものを1台置いておく事で足ります。
4-2.書籍等
備品のほか、次の書類等を備えておく必要があります。
- 日本薬局法およびその解説に関するもの
- 薬事関連法規に関するもの
- 調剤技術に関するもの
- 当該薬局で取扱う医薬品の添付文書に関するもの
解説書は「日本薬局方解説書」「日本薬局方条文と注釈」などを指し、薬事関係法規に関するものとは「薬事衛生六法」「衛生行政六法」などを指します。
その他、調剤技術に関するものは「調剤指針」、医薬品の添付文書に関するものは、取扱う医薬品の添付文書をファイルすることでも差し支えないとされていますが、実務上は、PDFファイル等で保存し、すぐにアクセスできれば問題ない場合が多いです。
5.開設許可証交付
実地調査で問題がなければ、官僚から1~2週間で許可証が交付されます。
開業予定日から逆算し、1か月前までには交付を受けておきたいところです。
6.「保健医療機関指定申請書」提出
ここからは厚生局への提出書類です。
所轄の厚生局(支局)に、開業予定日のある前月10日頃までに「保険医療機関指定申請書」を提出します。
指定が開業日に間に合わなかった場合、保険が一切使えなくなります。
申請時には下記の書類を提出します(※関東信越厚生局の場合)
- 保健医療機関・保険薬局指定申請書(様式11)(Word・PDF)
- 薬局開設許可証の写し(※保健所の受付印があるもの)
- 保険薬剤師の氏名および保険薬剤師の登録記号番号※管理薬剤師は除く
- 2以外の薬剤師につき、それぞれの数を記載した書類
- その他、指定の適格性等を確認するために必要な書類(指定後に予定している開局日 及び 開局時間について、通常週の状況がわかるように記載すること。)
- 法人登記簿謄本の写し(※法人の場合のみ)
- 土地建物登記簿謄本 又は 賃貸借契約書の写し
- 周辺図(※近隣の医療機関の位置が分かるように記載すること。)
- 平面図
注1)敷地内にある全ての建物が分かるように記載すること。(※薬局の置かれる建物は分かるようにしておくこと。)
注2)敷地内の建物に医療機関が存在する場合(予定を含む。)は、その旨を記載すること。
注3)薬局の出入口が公道又はこれに準ずる道路と面しているか確認できるよう記載すること。 - 同一建物内のテナント名が分かる書類(※雑居ビル等に薬局を開設する場合のみ)
- 保険薬局の新規指定 及び 指定更新に係る確認書類(Word・PDF)
- 社会保険 及び 労働保険への加入状況にかかる確認票(Word・PDF)
あくまで上記は目安に過ぎず、場合により追加書類または異なる書類を求められる場合があります。
できる限り柔軟な対応を心がけましょう。
7.保健医療機関認定
毎月10日頃までに受けた指定申請について、25日頃に審査会にて審議されます。
内容に問題がなければ、翌月1日付で保険薬局の指定を受けられます。
ドラッグストア開業に必要な申請
調剤薬局ではなく、ドラッグストアとして開業する場合、販売する商品等により取得する許可・免許は異なります。
下記に一例を示します。
- 店舗販売許可
- 一般酒類小売業免許
- たばこ小売販売業
- 食品等販売業
1.店舗営業許可
ドラッグストアの開設には、店舗販売業許可を取得する必要があります。
提出先はドラッグストアを開設する場所を管轄する保健所ですので、あらかじめ確認しましょう。
保健所の管轄区域案内はこちらから。(神奈川県の場合、こちらから。)
店舗営業許可申請に必要な書類
必要な書類は下記の通りです。
- 店舗販売業許可申請書 様式76(PDF・Word)
- 店舗の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の一覧表 別紙1(PDF・Word)
※資格確認のため薬剤師免許証(原本)・登録販売者従事登録証(原本)を提示 - 店舗の業務の概要 別紙2(PDF・Word)
- 店舗の構造設備の概要 別紙3(PDF・Word)
- 業務体制の概要 別紙4(PDF・Word)
- 店舗の平面図(別紙3に記載するか、設計図面等の添付)
※ショッピングモール等店舗内に開設する場合は、店舗の位置がわかる施設全体図面を含む - 法人の場合は登記事項証明書
- 店舗管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の雇用契約書写し等使用関係を証する書類
- 雇用証明書の例示(PDF・Word)
管理者の設置が必要な管理医療機器(「特定管理医療機器」という。)を取り扱う場合は管理者が施行規則第175条第1項各号の要件を満たすことを証する書類 ⇒(注)※Dへ
この場合、申請書の備考欄に管理者の氏名、住所を記載してください。
※店舗管理者を薬剤師以外の者とする場合に必要です。
※管理医療機器の販売等を行わない場合又は管理者の設置が不要な管理医療機器のみを取り扱う場合、この書類は不要です。 - 業務経験証明書の例示(PDF・Word)
第一類医薬品を販売授与する店舗において登録販売者を管理者とする場合は、その者の業務経験の証明に関する書類 - 申請手数料29100円(令和4年1月時点)
店舗管理者になれる人
ドラッグストアの開業において、店舗管理者を置かなくてはなりません。
店舗管理者として認められるには、次の要件を満たす必要があります。
- 過去5年間のうち、薬局・店舗販売業 又は 配置販売業(以下「店舗販売業等」という。)において、一般従事者として薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した期間並びに登録販売者として業務(店舗管理者等としての業務を含む。)に従事した期間(以下「従事期間」という。)の合計が2年以上である者
- 従事期間が通算して2年以上あり、かつ、過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある者
- 全てに該当する登録販売者であって、店舗販売業者等が店舗管理者等と同等の知識、経験等がある者として適当と認める者
要は、店舗管理者として指定できる登録販売者は、過去5年以内に通算2年以上の実務経験がなければなりません。
実務経験を証明する書類の例として、下記のものがあります。
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- 業務従事証明書の例示(登録販売者用)
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- 実務従事証明書の例示(一般従事者用)
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- 勤務状況報告書の例示
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2.一般酒類小売業免許
免許の申請先は、店舗設置場所を管轄する「税務署」です。
登録免許税は1申請につき、30,000円×販売場の数です。
3.たばこ小売り販売業
たばこの小売り販売には「特定小売販売業」と「一般小売販売業」の2種類があり、営業所ごとに取得しなくてはなりません。
申請先は「財務局」で、登録免許税15,000円がかかります。
4.食料品等販売業
食料品等販売業は、お弁当や惣菜類、乳製品、その他調理済みの食品を販売する営業のことを指します。
調理が必要な飲食店は「食品衛生法」という法律に基づき、一定の営業許可が必要です。
しかし、食料品等販売業の営業許可は、都道府県条例が根拠規定とされているため、許可自体不要な都道府県もあります。
例として、「東京都食品製造業等取締条例」にて営業許可を要する東京都を挙げると、一定の審査と手数料13,200円が必要です。
ドラッグストアの開業に必要な書類、手続き、注意点 まとめ
当ページでは、ドラッグストアの開業申請に必要な書類、手続き、注意点を解説しました。