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当ページでは、実家を相続する際に必要な手続、流れ、注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
実家を相続したときの流れ
実家の土地・建物を相続した場合、相続税がかかる場合があります。
次のような流れにそって、相続手続をしましょう。
遺言書の確認
人が亡くなると、相続が発生します。
残された遺族は、はじめに遺言書の有無・内容を確認してください。
相続人と相続財産の特定
遺言書の確認と同時に、法定相続人と相続財産の特定を進めます。
遺言書が見つかれば、その内容に従った相続手続を進めますが、遺言書がない場合は法定相続人全員で、分割方法と割合を話し合うことになります。
次のものは相続財産に含まれます。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株式など有価証券
- 信託財産
- 自動車
- 宝石や貴金属
- 骨董品
- 知的財産権(著作権・商標権など)
- ローンなど残債務
- 未払い金 など
相続財産に含まれるのは、プラスの財産ばかりではありません。
相続放棄・限定承認の手続きには期限があるので、正確かつ迅速な調査が必要です。
相続放棄または限定承認の手続
実家を相続する気がない場合、他の財産も含めて全て手放す相続放棄、または、実家以外の財産を承継する限定承認という選択肢があります。
いずれを選んでも、手続の期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内。
家庭裁判所へ「申述」の手続を要するため、早めの決断・手続が必要です。
被相続人の準確定申告
被相続人に一定の収入があった場合、本人がするべき確定申告を相続人が行います。
この手続を「準確定申告」といい、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に行わなければなりません。
被相続人が高齢な場合、亡くなった年の年金収入が400万円以下、または、給与所得以外で所得に該当する収入が20万円以下なら申告不要です。
遺産分割協議
被相続人が遺言書を用意していない場合、法定相続人全員で、遺産の分割方法、割合、取得する人を決める話し合い(遺産分割協議)を行う必要があります。
この際、同意が得られない人が1人でもいると、遺産分割協議書は作成できず、相続手続が進められません。
無理に進めると、遺産分割協議が無効になるだけでなく、罪に問われる場合も。
遺産分割協議がまとまると、その内容を書面に落とし込みます。これを「遺産分割協議書」といい、相続手続の際に提出することになります。
遺産分割協議書の作成は義務ではありませんし、作成期限はありませんが、提出先における手続に期限があるため、分割すべき遺産の内容により期限が異なる点に注意しましょう。
相続税の申告・納付
相続税の申告・納税が必要な場合、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
期限を過ぎたり、申告した財産に漏れがあると、延滞税や加算税が発生します。
万が一、期限内に遺産分割協議がまとまらない場合、いったん申告・納税を済ませ、きちんと調った後に修正または更生手続を行うことになります。
実家不動産の相続登記
実家を相続する人が決まったら、実家のある住所地を管轄する法務局において、相続登記を行う必要があります。
令和6年(2024年)3月までは相続登記に期限はありません。
しかし、同年4月1日以降は新しい法律が適用されるため、一定の期限が設けられます。
これを過ぎるとペナルティもありますし、登記をしないことによるリスクもありますので、早めに相続登記の手続を行いましょう。
実家の相続 注意点
実家を相続する際、下記の点に注意しましょう。
- 相続放棄、限定承認は3ヶ月以内
- 準確定申告は4ヶ月以内
- 相続税の申告・納税は10ヶ月以内
- 共有で相続する際はリスクを確認
- 実家放置は最もNG
相続放棄、限定承認は3ヶ月以内
実家に限らず、「遺産」の相続放棄・限定承認の手続には、相続開始を知ってから3ヶ月以内という期限があります。
相続放棄は、全ての権利を受け取らない(放棄)すること。
限定承認は、プラスとマイナスの遺産を相殺し、残ったプラスのみ相続することをいいます。
遺産の中に、どうしても相続したいものがある場合は限定承認を検討することになるでしょう。
準確定申告は4ヶ月以内
準確定申告は、死亡人が申告・納税すべきだったその年の所得税を、相続人全員が共同して申告することをいいます。
この手続の期限は、相続開始を知ったときから4ヶ月以内です。
具体的には、次のような場合に申告が必要となります。
- 自分で事業を営んでいた場合、事業収入(売上)から経費を差し引いた金額が48万円以上
- 不動産所得・有価証券による収入があり、所得額が48万円以上
- 副業収入などにより、2つ以上の事業者からの給与収入がある
- 給与所得が2,000万円以上
- 年金が400万円以上
- 医療費控除・寄附控除などの控除枠を利用したい
税金に関する手続きは複雑で、わかりづらいことも多いので、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署または税理士までご相談ください。
相続税の申告・納税は10ヶ月以内
相続税の申告・納税にも期限が設けられています。
相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内で、相続税の基礎控除額を上回った場合のみ必要な手続であることに注意しましょう。
相続税の基礎控除枠は、次の通りです。
例えば、相続人が配偶者と子が3人いる場合。
この場合、配偶者+子3人は法定相続人なので4人で、基礎控除額は5,400万円となります。
共有で相続する場合はリスクを確認
実家を相続する際、目先の手続を優先するあまり、法定相続人全員で共有状態にすることがあります。
あくまで筆者の意見ですが、共有状態にすると、その後の管理・運営で手間がかかりますのでオススメしません。
土地・建物について、共有以外の相続方法は次の通りです。
- 現物分割…特定の相続人が1人で実家を相続し、他の相続人は実家と同額の別の財産を相続する
- 代償分割…特定の相続人が1人で実家を相続し、他の相続人に対し、各相続人の相続分相当をお金で支払う
- 換価分割…実家を売却した金額を相続人同士で分割する
不動産はその価値が高額となる場合が多く、維持管理にも手間やコストがかかります。
これらのことを踏まえ、どのような相続方法を選ぶのか、慎重に検討しましょう。
実家放置は最もNG
実家を相続したものの、相続人が他県に住んでいる場合や管理が儘ならない場合、放置状態になることがあります。
このように放置された不動産は、空き家に指定されます。
空き家に指定された場合、次の点が問題となります。
- 経年劣化等による倒壊のおそれ
- 景観の悪化による近隣からのクレーム
- 放火・住み着きによる被害
- 固定資産税、都市計画税などの軽減措置が受けられなくなる
- 不動産のある場所を管轄する自治体が強制的に取り壊し、これにかかる費用を請求される
所有者が大切に扱っていない不動産は、他人も大切にしてくれません。
管理不足により倒壊した場合、近所の人や財産に損害を与えれば、損害賠償請求をされる可能性もありますし、保存を希望しているのに行政から強制的に壊されることもあります(しかも、費用はこちらに請求される泣きっ面に蜂状態…!)
十分に管理ができない、難しい場合は、無理に所有し続けるのではなく、別の方法を検討することをオススメします。
実家を相続した場合の活用法
相続した実家を活用する方法は、大きく4つあります。
- 住む
- 売る
- 賃す
- 土地活用
1.住む
最も理想的な活用法は、実家を相続した人が住むことです。
死亡人と実家にて同居していた相続人がいれば、色々な手間や手続が削減できます。
また、父が亡くなり配偶者である母が相続した場合、リフォームして子ども夫婦と住み続ける選択肢もあります。
この場合、母が亡くなった場合の相続手続が楽なだけでなく、高齢化により生じる問題解決にも役立つことから、この手段を選ぶ方も少なくありません。
2.売る
実家を相続し、売却する方法もあります。
不動産を売るには、1度相続登記を済ませなくてはなりません。
売却を考える前に、きちんと登記は済ませておきましょう。
相続後、3年10ヶ月以内に売却した場合、譲渡時の取得費特例(取得費加算の特例)を利用できます。
3.貸す
実家を相続しても、自分が住むつもりがない場合、賃貸物件として運営する選択肢もあります。
築年数や立地などの条件にもよりますが、家賃収入が得られるため、放置しておくより断然オススメな方法です。
自分自身で運営する自信がない場合には、不動産等に仲介してもらうことも検討しましょう。
4.土地活用
相続した実家は、そのまま建物を保存しておかなければならないわけではありません。
思い切って更地にし、別の用途で活用する方法もあります。
例えば、駐車場やコンテナを設置してトランクルームを運営したり、アパート・マンション等を建築して収益物件とする方法です。
実家の相続にかかる相続税
実家が戸建の場合、土地と家屋は別で計算します。
家屋の場合、毎年送られてくる固定資産税課税評価額と、証明書の価格は同額です。
いっぽう、土地の評価は下記の方式により計算します。
- 路線価方式…市街地に定められる1㎡あたりの評価額を使った評価方法
- 倍率方式…路線価の定められていない土地に用いる評価方法
国税庁HP「路線数・評価倍率表」から目的の土地を検索すると、路線価・倍率を知る事ができます。
実家の相続で活用できるかもしれない特例
実家を相続、または、売却する場合、次の特例や控除枠を利用できるかも知れません。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者控除
- 空き家の譲渡所得の特例
小規模宅地の特例
一定の要件を満たした場合、実家の土地に関わる相続税評価額を減額できる可能性があります。
配偶者控除
死亡人の配偶者が相続した場合、相続財産の1億6,000万円以下、または、配偶者の法定相続分以下まで控除対象です。
空き家の譲渡所得の特例
相続から譲渡までの間、空き家だった場合には、一定要件を満たすことで、譲渡益から3,000万円まで控除を受けられる可能性があります。
この特例は、令和5年12月31日までの譲渡にのみ適用されるため、今年に入ってからの譲渡は対象外です。
実家の相続 まとめ
当ページでは、実家を相続する際の手続や注意点を解説しました。