無人区 Vol.3 | 残響のある街

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 閉じられたシャッター。屋根のついた電話ボックス。錆びついたガスメーターや朽ちた標識。人の姿はなくても、「いた」気配は濃厚に残っている。

 通り過ぎる風が、乾いた空気に何かの名残をかすかに運ぶ。それは、日常の終わりか、始まりか。答えは風の中。

 たぶんここには、つい最近まで「営み」があった。

 ラーメン屋の空き店舗。気配の抜けきらない扉。なぜか綺麗に咲いているツツジ。時の流れが急に止まったような場所で、シャッター越しの記憶と出会う。

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裏口の気配

 この家の裏に回ると、何か秘密が隠れていそうな気がして、つい足が止まる。物語の入り口のような一角。

錆びたシャッターと物置の並ぶ裏手の通路。草が静かに侵食を始めている。人の出入りはもうないのに、どこか生活の温度が残っている。

終業のまま

 手書きの看板文字がじんわり沁みる。こういう店が閉まっていると、なぜか少し切なくなる。

閉じられた店舗のシャッターに、薄れかけた看板文字。時を止めたような静けさが、かえってここにあった営みの濃さを語っている。

声なき通話

 屋根がついてるってだけで、この電話ボックスがちょっと特別に思える。誰かのために、まだここにある。

小さな瓦屋根の電話ボックス。公衆電話がまだ機能しているのかもわからないまま、ただそこにある。外からは誰の声も聞こえない。

配管の記憶

 ただの配管なのに、妙に生き物っぽく見えてくる。動かないのに、生々しい。

無数の管が絡み合い、壁に張りつくように伸びている。その中心にあるメーターは、今も回っているのだろうか。目盛りが刻んだのは、使われた時間の量か、それとも…。

暖簾の前の静けさ

 準備中の静けさには、なんとも言えない美しさがある。始まりの空気が好きだ。

開店前のひととき。まだ静かな店内に、準備の手がかりがそっと置かれている。扇風機の向き、整えられたカウンター、掛けられた暖簾。はじまりの空気には、どこか特別な緊張と期待が満ちている。

赤錆の証明

 この錆び方、まるで時を飲み込んだよう。誰にも注目されないけど、ずっとそこにいたんだろうな。

かつての緊急用設備は、今や錆びついた街の一部になっている。いざというときに備えられたこの箱も、時の流れには抗えなかった。

山を背にして

 人工物と自然の境界線。線の向こうとこちらで、時間の流れが違って見える。

静かな団地と、その奥に立つ白い通信塔。背後には深い森が広がる。ここが都市と自然の境界であることを、電線が丁寧に描いている。

指示を忘れた標識

 役目を終えた標識って、なんだか哀愁がある。誰にも従われなくなった指示が、森に溶け込んでいく。

朽ち果てた道路標識が、木々に飲まれていく。「通行可」の指示も今では意味を失い、ただ風化と共にあるのみ。

おわりに

 人の姿が消えても、気配はどこかに残っている。風化した金属、歪んだ文字、妙に整ったままの配置——こういう「なんでもないもの」ほど、何かを語っている気がして、私はつい立ち止まってしまう。

 今回の写真は、PIXTAにも一部掲載しています。ご興味のある方は、下記リンクからぜひご覧ください。

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平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

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