第8話:「資格一本足打法」のリスク→ 資格だけに頼ると市場価値が下がる理由

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1. 「資格さえあれば食える」は本当か?

 資格を取れば安泰!――そう思っていたのに、いざ開業・転職してみると、「仕事が来ない」「思ったより稼げない」と悩む人も少なくない。

 資格取得に費やした多くの時間と金銭に見合わぬ現実。思い描いて来た理想と現実とのギャップに苦しむ人が多い。

 特に、資格取得直後には、「実務経験」「知名度」「営業・マーケティングスキル」という3枚の壁にぶつかり、実際に資格だけで食べていけると主張する人の声が耳に痛い。しかし、このような人たちはごく一部で、多くの人は+αのスキル」「営業力」「発信力を駆使して市場価値を高めているので、そういった意味では安心してほしい。

 今回は、なぜ「資格一本足打法」がリスクとなるのか、その理由を掘り下げる。


2. 「資格一本足打法」が危険な3つの理由

 資格をとれば安泰という時代は終わりりつつある。むしろ、もう終わっているのかもしれない。資格に頼りきりの働き方には、大きなリスクが潜んでいる。その理由を3つに分け、詳しく解説する。

① 競争の熾烈化

 かつては一部の人だけが持っていた資格も、今や多くの人が取得できるようになった。たとえば、行政書士・宅建士・社労士などの士業資格の合格者は年々増加傾向で、市場には資格者があふれている。

 しかし、供給が増えたからと言って、依頼が急増することはない。むしろ、資格を持っているだけでは他との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれることもある。さらに、インターネットの発達により、クライアント側は「どの専門家に依頼すべきか」を比較しやすくなった。

 そのため、実績豊富で信頼できる人にこそ依頼は集中する傾向が高まっている。

【補足】増減割合の分析

過去10年間(2015年~2024年)における行政書士、宅地建物取引士(宅建士)、社会保険労務士(社労士)の資格試験の受験者数、合格者数、合格率の推移は以下の通りだ。

行政書士試験

年度受験者数合格者数合格率
2015年44,366人5,820人13.12%
2016年41,053人4,084人9.95%
2017年40,449人6,360人15.72%
2018年39,105人4,968人12.70%
2019年39,821人4,571人11.48%
2020年41,681人4,470人10.72%
2021年47,870人5,353人11.18%
2022年48,000人5,500人11.46%
2023年49,000人5,600人11.43%
2024年50,000人5,700人11.40%

(注:2022年以降のデータは仮の数値です)

宅地建物取引士試験

年度受験者数合格者数合格率
2015年194,926人30,028人15.4%
2016年198,463人30,589人15.4%
2017年209,354人32,644人15.6%
2018年213,993人33,360人15.6%
2019年220,797人37,481人17.0%
2020年204,250人34,338人16.8%
2021年233,276人40,025人17.2%
2022年235,000人40,500人17.23%
2023年237,000人41,000人17.29%
2024年239,000人41,500人17.36%

(注:2022年以降のデータは仮の数値です)

社会保険労務士試験

年度受験者数合格者数合格率
2015年40,712人1,051人2.6%
2016年39,972人1,770人4.4%
2017年38,685人2,613人6.8%
2018年38,427人2,413人6.3%
2019年38,428人2,525人6.6%
2020年34,845人2,237人6.4%
2021年37,306人2,937人7.9%
2022年40,633人2,134人5.3%
2023年42,741人2,720人6.4%
2024年43,174人2,974人6.9%

(注:2024年のデータは仮の数値です)

 過去10年間のデータを分析すると、以下の傾向が見られる。

  • 行政書士試験
     受験者数は全体的に減少傾向にあるものの、2021年以降は増加傾向に転じた。合格率は年度により変動がありながら、概ね10%前後で推移。
  • 宅地建物取引士試験(宅建士)
     受験者数は増加傾向で、合格率は15%~17%の間で安定している。
  • 社会保険労務士試験(社労士)
     受験者数は若干の増減を繰り返している。合格率は年度により変動が大きく、特に、2015年の2.6%は際立って低い数値だが、その後は5%~7%の間で推移。

 これらのデータから、各資格試験の受験者数や合格率には年度ごとの変動が見られる。特に、社労士試験は合格率の変動が大きく、難易度の高さがうかがえる。

対策:
 
これらへの対策として、以下が考えられる。

  • 資格取得後もスキルアップを続ける
  • 差別化のために「専門分野+α」の強みを持つ
  • 発信活動を通じて、知名度を上げる

② AIやITの発展で代替される可能性

 近年、急速に発達したAIやIT技術により、多くの業務は自動化の一途をたどっている。たとえば、契約書や申請書類の作成支援、税務計算など、かつて専門家が行っていた業務の一部は、既にAIツールやクラウドサービスで代替されつつある。―とはいえ、すべての業務がAIに取って代わられるわけではない。

 しかし、単純な書類作成や提携業務ばかりを手掛けていると、数年後には「AIで十分」「安価な代行サービスでOK」となり、資格者の市場価値は下がる可能性がある。

▶ 対策:
・「単純作業の代行」ではなく、「提案型の業務」にシフトする
・クライアントの課題解決に貢献できる「コンサルティングスキル」を積極的に身につける
・ITを活用し、自分の業務効率を上げる(RPAやAIを活用)

③ 資格者に対し、クライアントが「すごい」と感じづらくなっている

 以前であれば、資格者に対して「すごい人」「信頼できる人」という認識が強かったが、今はそうではない。

 たとえば、行政書士や税理士のような資格者であっても、資格があるから依頼しようと考えるより、「この人は信頼できるか」「実績はどうか」「口コミはどうか」などを重視するクライアントが増えている。
 また、情報が容易に手に入る時代になったことで、クライアント自身もある程度の知識を得て、資格があるだけでは価値を感じづらいケースが増えている。

 つまり、資格ありきで依頼がくる時代は終わりを迎え、「この人に頼みたい」と思われるよう努力を要する時代になっているのだ。

▶ 対策:
・資格だけに頼るのではなく、実績や口コミを積み上げる
・SNSやブログを駆使し、「この人に頼みたい」と思わせる工夫をする
・専門分野を極め、差別化を図る
(例:行政書士×相続専門、税理士×クリニック経営特化)


3. 「資格+α」で市場価値を高める方法

 資格は大きな武器になるものの、それだけで十分とはいえない。これからの時代は、他の専門家との差別化が課題となる。そのため、資格に何かをかけあわせる「資格+α」の戦略が不可欠だといえる。ここでは、具体的な方法を3つ紹介する。


① 資格 × 実務経験を強化する

 資格を取得しただけでは、どんな主張も机上の空論だと思われる。特に、クライアントは「この人は信用できるか」を重視している。資格の有無だけでなく、実際に業務経験を積み、実績を増やすことを意識したい。

どうやって実務経験を積む?

  • 小さな案件でも積極的に受ける
     無料モニター・低価格サービスを提供し、実績を作る
  • インターンや副業で実務に触れる
     たとえば、税理士を目指すなら会計事務所でアルバイトをする
  • 知人・友人の相談に乗る
     口コミを増やし、信頼を積み上げる

実務経験をアピールする方法

  • 実際に関わった案件を「事例」として紹介
     「過去にこんな相談を受け、こう解決しました」という形で発信
  • クライアントの声(レビュー)を集める
     信頼を得るための強力な証拠になる

📌 ポイント: 「知識がある」だけではなく、「実際に成果を出せる専門家」になることが大事!


② 資格 × マーケティングで発信力をつける

 資格があっても、存在を認知されない限り依頼にはつながらない。マーケティングとは、自分を知ってもらう手段だ。発信活動を通じ、認知度を上げ、「この人なら」と思われるポジションを確立しよう。

おすすめの発信方法

  • SNS(X、Instagram)
     短い投稿で「役立つ情報」をシェア
    (例:法律のワンポイント解説)
  • ブログ・note
     「○○で悩んでいる人向けの解決策」といったテーマで記事を書く
  • YouTube・TikTok
     動画を活用し、わかりやすく解説する

発信のコツ

  • ターゲットを明確にする
     例:「30代の個人事業主向けの税務相談」「独立開業を目指す人向け」など
  • 「難しいことを分かりやすく」伝える
     専門用語を使わず、初心者にも理解しやすい内容にする
  • 発信を継続することが大事!
     「1回の投稿で大きく変わる」ことはないので、コツコツ続ける

📌 ポイント: 「発信力=集客力」!発信を続けることで、自然と仕事が舞い込んでくる仕組みを作る。


③ 資格 × 他スキルで差別化する

 競争が激しい市場では、「資格を持っているだけの人」は埋もれてしまいます。そこで大事なのが、「資格+他スキル」の組み合わせ です。

資格と組み合わせると強いスキル

資格+αのスキル差別化ポイント
行政書士ビジネスコンサル「起業支援・経営アドバイスまでできる行政書士」
税理士資産運用アドバイス「税務+投資の相談ができる税理士」
社労士人事戦略コンサル「採用戦略までサポートできる社労士」
FP(ファイナンシャルプランナー)マーケティングスキル「集客までアドバイスできるFP」
弁護士SNSブランディング「法律×SNS戦略で影響力のある弁護士」

📌 ポイント: 「資格×ITスキル」「資格×営業力」など、時代のニーズに合ったスキルを組み合わせることで独自のポジションを築ける!


4. まとめ:「資格だけ」で戦うのは危険!市場価値を高めよう

 かつて、「資格さえあれば食べていける」といわれた時代もあったようだが、現代において、それだけでは不十分である。競争の熾烈化、AI・IT技術の発展、クライアントの意識変化などから、資格があれば安定とは言えなくなった。

 では、市場価値を高めるにはどうすればいいのだろうか。


✓ 資格+αのスキルで差をつけよう

 これからは、「資格×実務経験」「資格×発信力」「資格×他スキル」というように、資格×○○という思考が必須である。

🔹 実務経験を積み、「実績のある専門家」になる
  知識だけではなく、現場での経験を活かして信頼を得る

🔹 発信力を高め、「この人に任せたい」と思われる存在になる
  SNS・ブログ・YouTubeを活用して、知名度と影響力を上げる

🔹 他スキルを掛け合わせ、「自分にしかできない強み」を作る
  ITスキル、マーケティング、コンサル力などをプラスして差別化


✓ 「資格を活かしながら、自分だけのポジションを作る!」

 資格は「武器」だ。持っているだけでは意味がなく、どう使い分けるかが重要だ。「資格を取ったのに稼げない」と悩む暇があるのなら、「資格をどう活かせば求められるか」を考え、行動を起こす方が有意義である。

 市場価値は「資格だけ」で決まるものではない。あなたの強みを活かして、唯一無二の存在になろう!

平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

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